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第48号 1997年10月14日発行

目次


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サイエンス・データベースの現状と将来への課題

 宇宙科学企画情報解析センター( PLAIN センター)では、近年の情報化ネットワーク社会に対応すべくサイエンス・データベース・システム「DARTS」を構築し、科学衛星データの一般公開を始めている(現在は「ようこう」衛星と「あすか」衛星のデータを公開)。これは単なるデータの整備・管理を目的としたものではなく、科学衛星データ解析研究を通して多様化する宇宙科学研究の調和ある発展を推進することが目的である。DARTS では、衛星プロジェクト側でデータ較正が終わり一般公開が許されたデータを引き取り、ユーザフレンドリーなデータベース解析システムと併せてサイエンス・データを一般科学者に提供している。これまで一般公開用のデータベースはかなりの部分を米国に依存してきたが、漸く日本でも独自のデータベースを提供できるようになってきた。現在全国の各大学・研究機関からの DARTS の利用があり、次期計画である「あけぼの」、「ジオテイル」衛星のデータが公開されると更に利用者は増えると予想される。

 このように DARTS では、衛星プロジェクトと協力してデータベースを構築しているが、今後更に進む科学衛星の高機能化による研究の高度化に対応するのは難しい。たとえば ASTRO-F 計画や SELENE 計画で必要となるカタログ作りや画像処理は、生データから物理データに変換する作業量が莫大であり、将来へのデータベース構築へ向けて体制の見直しが必要である。科学衛星計画の成否を左右するデータ解析研究をどのように捉えればよいのだろうか。この問題について、これまで多くの人と議論を行った内容のいくつかを紹介する。ご意見を頂ければ幸いである。

(中核となる組織・機関)
 生データを物理量に変換するデータ較正からデータベースの構築、そしてデータのユーザへの提供に至る一連の流れには、分野やデータの内容・規模によってもかなり違う。データベース構築では、観測機器に対する知識も要求されるのでその分野の専門家がデータベース制作に加わる必要があり、同時にシステム工学的な専門性も必要とされる。しかし現状では、データベース構築の組織化・機能分担が不十分である。中核となる組織・機関が中心となって理学・工学の協力の下にデータベース製作を促進する必要があると思われる。

(学際化の進むデータ利用)
 科学衛星データ解析研究においても、近年の多様化に伴い観測データのニーズも多様化している。既存の分野や専門性にとらわれない学際化という動きもある。たとえば天文学で、電波、光学、赤外、X線、ガンマ線などの異なる波長領域でそれぞれ独自に展開されてきた研究だけでなく、この幅広い波長の情報を統一的に解析する研究が活発になってきている。このように細分化した分野の枠組みを超えて総合的にデータ解析研究をすることが必要であろう。幅広い分野の統一的視点に立ったデータベース構築・解析研究を行うことが重要になるだろう。

(データベース構築と解析研究の一体化)
 データ利用者である研究者は、データの較正やデータ解析ソフトなどで、生産者としての側面も有すべきだがその認識は低く、データベース構築に携わる研究者に多くの負担がかかっている。そのためデータベース作成を行いながらそのデータを用いて研究成果をあげるのが難しいのが現状である。データ利用者からデータベース構築活動に対する支援を生かす体制作りが必要であろう。データベース構築に携わるものが最新のデータを自由に利用でき、そして最先端の研究ができる体制を作ることは出来ないだろうか。

(現業的サービスと研究との切り分け)
 利用者からの一般的な問い合わせ、オフライン・データ配信サービスなどの事務的な仕事は出来るだけ外注などの方法を考える。しかし、事務的なサービスは、データベース構築と密接に関連しており、互いの連携も必要である。そのため事務的業務にも、その役務を果たせるような人材確保・養成も必要となる。

(セキュリティーの確保など)
 国内外を問わずアクセスされるデータベースシステムでは、セキュリティーを含む利用者管理を疎かに出来ない。また、日進月歩の情報化時代では、ハード・ソフトの維持管理は、常にかなりの作業量を必要とする。

 以上はこれまで多くの人と議論したり考えてきた内容であるが、将来のサイエンス・データベースを用いたデータ解析研究を推進できる組織を考える際に解決しなければならない問題点だと思っている。将来のデータベースでは、静的なデータの「保管庫」のようなイメージではなく、データ解析研究を主体とし、データ解析研究の一環としてデータベース作成を捉えるシステムが理想だと思われる。今後ともこのような議論に多くの人に参加していただきたく、ご協力をお願いします。
(星野 真弘)


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ATM LAN の運用方針

 現在宇宙研において ATM を基幹とした新規 LAN が導入されているところですが、この ATM LAN の運用方針について検討が進められています。基本的には従来の運用形態に準じたものとする予定ですが、併せて以下のような検討が行なわれています。下記の件について御意見、御要望、お問い合わせ等ございましたら、三浦もしくは長木までお早めにお知らせ下さい。(11月辺りから試験稼働を予定していますが、それ以降に頂いた御要望に関しては、運用に反映させるのが困難となる恐れがあります。あしからず御了承下さい)

(1)サブネット分割
 今回導入されるネットワーク機器は、各階に複数のサブネットを構築するに十分な機材が整っています。目下利用者の方々から接続予定数等を伺いながら効率の良いサブネットの分割方法を検討しているところですが、各階の利用状況如何では、同一階で 20〜30 以上の IP アドレスが占有されるような大口の利用者の方にはサブネット単位で IP アドレスを提供することも検討しています。この場合、個々のサブネットのホストアドレスやドメインの管理は利用者の方にお任せすることとなります。

(2)セキュリティ
 最近は不正にネットワークに侵入を試みる者が少なくなく、セキュリティの弱いホスト等は、容易に部外者の侵入を許してしまうおそれがあります。 (その侵入者が十分な悪意を持っていれば、システム全体を壊されてしまう可能性もあります。)

 目下、研究用 LAN (今回新規に各部屋に引かれた支線 LAN )とそれ以外のサブネット(現在稼働中のサブネットが含まれます)との間に壁を設けて、その間を流れるデータを制限してはどうかとの検討がなされています。どの程度のセキュリティを確保するか等の具体策については、今後の課題となっています。

 このような現状に鑑み、新規に導入される ATM LAN にどのようなセキュリティ対策を施すべきか、皆様の御意見をお伺いできれば幸いです。例えば、

[例1] ATM LAN と外部のネットワークとの間には強固な壁を作り、外からは簡単には侵入できないようにすべきである。(中から外部のサービスを利用する場合にも相応の制限を設けるべきである)

[例2] 多少の危険性は許すとして、ATM LAN から外部のネットワークのサービスを直接利用出来る程度の利便性は確保したい。

[例3] ネットワーク自体のセキュリティよりも、むしろ個々のホストに対して(そのホストの管理者が)十分なセキュリティ対策を施すべきである。


などのおおまかな御意見でも結構ですし、もっと具体的な御意見その他関連するお問い合わせでも結構です。
(三浦 昭、長木 明成)


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大型計算機に関するお知らせ

1.大型計算機の10、11月の保守作業の予定

  10月の保守作業は
10月20日(月)8:00 から24日(金)20:00 の間、VX / 2 の OS のバージョンアップと定期保守を行います。尚、VX / 2 は OS のバージョンアップのため、システム内のジョブは全て KILL されます。
  11月の保守作業は
11月17日(月)8:00 から13:00 に GS8400 / 20 と DEC Alpha の定期保守が行われますのでご協力お願いします。


2.VX / 2 へのジョブ凍結機能とデファークラスの導入及び定期保守作業について

 ジョブ凍結機能、デファージョブ機能、VX / 2 定期保守作業を行うため1週間の作業日が必要です。下記の日程で作業を行います。詳細内容は9月号でお知らせしてありますので参照願います。

 10月20日(月)8:00〜24日(金)20:00  導入作業

 10月27日(月)〜31日(金)  一般試験運用  SEチェック  

 11月1日(土)  デファークラス一般利用開始

(関口 豊)


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編集発行:文部省宇宙科学研究所
宇宙科学企画情報解析センター
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