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第11号 1994年8月17日発行

目次


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スーパーコンピュータとベクトル並列計算
第6回 並列(パラレル)計算機の特徴

 なぜ、話はそう簡単にいかないのでしょう。それは、メモリー分散にあります。科学技術計算の中には画像処理のように、各PE(Processing Element: 各プロセッサ)で処理するデータが限られた範囲に納まり、しかも他PEで処理されるデータと独立であるものもありますが、大概の場合、必要なデータがそのPEにある小さなメモリー内だけで済むことはありません。従って、他のPEのメモリー上にあるデータに頻繁にアクセスする状態が起こります。PE間は計算機内のネットワークによって接続されていますが、どのような接続方式にしても自分の所にあるメモリーにアクセスする速度とは比較にならない程時間がかかります。従って、実際の問題では、宣伝に書かれているような性能を出すのは容易ではありません。

 このように超並列計算機(MPP)では個々のメモリーが小さいので、計算機内のネットワークが重要で、各社それぞれ工夫をこらしたネットワークを利用しています。格子状のもの、トーラス状のもの、階層型のものなど種々さまざまで、アプリケーションにもよりますが、一長一短と考えていいでしょう。

 宇宙研にあるVPPはこのような超並列の計算機の1つ1つのPEをスーパーコンピュータにしたものです。前回TCMPと呼ばれる、メモリーを共有するタイプの密結合スーパーコンピュータをご紹介しました。VPPはそれを分散型のメモリーにしたものと考えるほうがわかりやすいかも知れません。いずれにしても新しいタイプのスーパーコンピュータとして分散型ベクトルーパラレル計算機という概念を作ったものです。計算機内ネットワークとしてはクロスバーといわれている方式を採用してます。この方式は「がさ」は喰いますが、大量のデータを高速に転送できるためVPPには適したものです。宇宙研の計算機システムでは予算の都合もあり、残念ながら7つのPEしかありませんが、最大で220個のPEをつなぐことが出来ます。その場合、最大性能は300GFLOPS以上となります。現在までには220PEのものは出荷されていませんのでその最高性能は実測されてはいませんが、出荷前の100PE程度による測定によれば、著名なベンチマークテストにおいてダントツの性能を出しています。

 今後はこのようなベクトルーパラレル型の計算機と超並列タイプの計算機が主流となっていくでしょう。超並列の方もスカラー演算器が高速化し(Power603, R8000/TSPなど)、メモリーもPEに1GBなどというメモリーが登場してきていますから、競争はしばらく続きそうです。

 横道にそれるのはこの位にして、次回は一般的な並列化技術について述べてみましょう。
(藤井 孝藏)


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ネットワークよもやま話(氈j

 今ごろ昨年の話をするのは、多少気が引けるが、昨年は、ネットワークに関しては画期的な年であった。何年かかっても終わらないといわれていた大学のキャンパスネットワークの整備が、新社会資本整備の一環として一気に行われることになったのである。一方、キャンパスネットワーク間を接続する役割を担うSINETの方も回線速度を大幅に向上するためにノード設備の強化が行われた。今年度からは、主要ノードへの6Mbpsの回線等の予算がつき、SINETの大幅な増強が実現することになった。目下移行作業たけなわのようで、9月まで完了することになっている。

 宇宙研もその例外ではなく、補正予算による情報ネットワークの整備を行うことになった。これにより、高速ネットワークの整備、ISDN回線による地区間接続、学術情報ネットワークとの接続強化などが行われる。また、これにあわせて従来からの懸案であったネットワークニュースサーバ、ターミナルサーバの設置を準備中である。また、宇宙研内の情報を外部に発信するためのwwwサーバの運用も検討されている。

 インターネットをはじめとする外部との接続は、現在、宇宙研・学術情報センター間を結ぶ384kbpsの回線によって行っている。この回線の64kbpsの帯域は学術情報ネットワークのパケット交換サービス(X.25準拠)との接続に、残り320kbpsがTCP/IPおよびDECNETの両プロトコルによるインターネットとの接続に使われている。インターネットは、学術情報センターにおいて、学術情報ネットワークのIPバックボーンであるSINETと接続しているほかに、学術情報センターからさらに東京大学を結ぶ192kbpsの回線によりTISNと接続している。

 インターネットに対するトラフィックの増加は宇宙研においても著しいものがある。昨年の春から夏にかけて回線速度を2倍以上に増したのにもかかわらず、すでに回線は満杯に近づいている。今年度はSINETの大幅な増強にあわせて、SINETとの間の回線を大幅に強化する。早ければ10月中にSINETとの間の回線が3Mbpsになる予定である。
(松方 純)


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富士通 コンピューター用マニュアル購入についてのご案内

 富士通のコンピューター用マニュアルは、スーパー・コンピューターVPP500用のを含めほとんどのマニュアルが丸善株式会社「富士通マニュアル受注センター」より購入することができます。

丸善マニュアル受注センター、
電話(03)5450ー2315

までお問い合わせください。

 尚、VPP用のマニュアルは、一部改訂作業中のもあるようです。
(星野 真弘)


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大型計算機に関するお知らせ

I.ネットワークプリンタについて

 A棟4階・7階サブステーションに設置されているネットワークプリンタ の一部に不具合がありましたが、7月16日に完全に修復されて、正常に動作するようになりまし た。

II.8月の定期保守

 8月の定期保守は第3回目の月曜日、19日 8:00〜13:00にGS8400/20, Alphaの保守作業を予定しております。

III.VPP500 OS 緊急修正について

 PEのソフトファイルに関する緊急修正を9月16日(月)9時より行います。又17日(火)は定期保守のため、朝から13時まで運用停止になります。
(関口 豊)


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