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PLAINセンターニュース第125号 |
西山 和孝 MUSES-C「はやぶさ」はイオンエンジンを主推進器として搭載した小惑星探査機で、昨年の5月9日に M-V ロケット5号機で打ち上げられました。打ち上げ後、1年間は地球の後を追うように太陽の周りを回り、その間にイオンエンジンにより軌道の離心率を大きくしながらエネルギーを蓄積します。今年の5月下旬には地球スウィングバイを行い、それまでに蓄積したエネルギーを小惑星 1998SF36 に向かう軌道方向へと振り向ける作業をします。その後も小惑星到着と地球帰還までほぼ休みなくイオンエンジンを運転しなければなりません。このように 4 年間にわたるミッション期間のほとんどが、イオンエンジンによる巡航フェーズであり、探査機の運用計画はすなわちイオンエンジンの噴射計画そのものと言っても過言ではありません。この点がサイエンス観測中心の他の科学衛星と大きく異なる点で、各搭載機器の専門技術者がつきっきりでなくても、コマンド計画立案、探査機ハウスキーピング (HK) を運用担当者が容易に行えるように、運用を極力定型化し、支援ソフトウェアを多数活用しています。今回から2回にわたって「はやぶさ」の運用についてデータ処理の観点から、今回は運用パターンとデータの流れについて、次回はソフトウェア群について紹介します。 1. 定常運用パターン 「はやぶさ」は1日1回7.5時間の運用時間を確保して臼田の 64m アンテナを用いて相模原から運用しています。巡航時定常運用は、1 週間に 1度の通称「コマンド運用」とそれ以外の「レンジ運用」の規則正しい繰り返しにより実施されています。イオンエンジンの推力ベクトルを所定の方向に向けるための姿勢 (IES 噴射姿勢)と、地球となるべく高速な通信回線を確立するための姿勢(リンク姿勢)との間を必要に応じて、リアクションホイールによる姿勢マヌーバーで往復します。 2. 運用に関するデータの流れ 「はやぶさ」の運用に必要な情報・データは図 1に示すような経路で1週間周期で流れます。
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