![]() |
PLAINセンターニュース第123号 |
長瀬 文昭 明けましておめでとうございます。 昨年の PLAIN センターは、科学衛星運用支援データ処理システム、スーパーコンピュータシステム、および所内ネットワーク(以降 ISAS-LAN と略称)の維持・管理、科学衛星データベース DARTS システムの開発・構築とその管理・運営・データ公開、工学データベースの開発・構築、国立情報学研究所のスーパー SINET のノードとして高速ネットワークの維持管理、ネットワークセキュリティーの監視等に努めて参りました。科学衛星運用支援データ処理システム、スーパーコンピュータシステムについては機器更新の年度にあたっており、リプレース作業にも取り組みました。加えて昨年は宇宙科学研究所、宇宙開発事業団、航空宇宙技術研究所の宇宙3機関の統合と新機構、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の発足に向けて統合情報化システムの立ち上げに参画してきました。 新機関発足にあたっては当センターも宇宙科学情報解析センター(英文呼称及びその愛称;PLAIN センターは従前通り)として再出発する事になりました。新 PLAIN センターは新機構の宇宙科学研究本部の中で本来果たすべき科学衛星データベースを用いた解析研究および高速計算機を用いた計算科学における研究の中枢となると共に、従来の職務を引き継ぎ(1)計算機の維持・管理、(2)ネットワークの維持・管理、(3)データベースの開発・管理を担当していくことになっております。 今年はこの新機構発足の実質的な元年に当たり、上記の業務の中でも特に、(1)スーパー SINET の宇宙科学研究への利用、(2)機種更新した科学衛星運用支援データ処理システムおよびスーパーコンピュータシステムの整備、(3)新機構移行に伴う統合情報化システムの構築に付随した ISAS-LAN の整備、を重点的に進めなければなりません。宇宙研は平成 13 年度より国立情報学研究所の基幹ネットワーク(スーパー SINET)のノード機関の1つとして、ネットワークの対外接続容量も大幅に改善(10 ギガビット毎秒)されました。また、これに伴い、宇宙研との共同研究を強力に進めている特定の大学とは1 ギガビット毎秒の専用回線(または専用バンド)接続を行っております。従来研究支援システムとして充実を図ってきた ISAS-LAN バックボーンは、現在より高度なセキュリティ管理を要求される業務 LAN にも併用して JAXA 統合ネットワークに接続されており、その管理・運営は複雑になっております。スーパーコンピュータの更新においても、従来機より性能の高い機種が導入されることが決まり、ますます宇宙科学研究のための全国大学・研究機関の共同利用計算機としての役割に期待が高まっております。数少ない PLAIN センタースタッフですが一同全力を尽くして、この新しい機構の中で職務を全うしていきたいと思っています。私どもがこれらの課題に取り組み、さらに円滑にその業務を遂行できるよう、関係各位の一層の御協力を心よりお願いする次第です。 新年のセンター長挨拶としてはやや型破りかとは思いますが、この機会に多くの課題、業務を抱えて新機構で再出発する PLAIN センターの現状と課題を少し具体的に報告させて頂き、皆様のご理解に供したいと思います。 ●新機構における情報化システムの組織と運営 ●新機構における情報化システムの組織と運営 いくつかのキャンパスに分散する新機構各部門を一体の組織として運用するためには、その情報基盤としての統合ネットワークシステムの構築は重要であります。この統合ネットは新機構発足と同時に機能する必要があり、情報化移行チームは昨年の始めから旧3機関の関係者が頻繁に会合し、統合ネットワークシステムの設計や既存システムの有効利用を検討し、昨年上半期より実務的な活動を進めてきました。おかげで旧3機関の情報部門関係者が話し合いながら今後の情報インフラを維持・整備していくための体制は円滑に組織化されました。現在の情報化推進体制は階層順に
となっており、宇宙科学研究本部の計算機運営委員会および PLAIN センターの守備範囲は1、2、3、4-aであり、2に長瀬、藤井(1委員を兼ねる)、3に藤井、笠羽、三浦、篠原、4-aに三浦、笠羽、篠原、松崎、高木が参加しております。上位階層が意思決定組織ですが、実際の企画検討や実務管理は「3 情報化委員会」で行われ、ここでは旧3機関の情報部門関係者が一同に会して各キャンパスや各旧機関の実情を踏まえて討議を行い、現有資源を有効に活用しながら今後の情報インフラの整備に向けた活動をはじめています。 ●宇宙科学本部 ISAS-LAN の運営 ISAS-LAN は本来は宇宙研内および共同研究大学・研究機関の研究者の利用する研究用ネットワークとして開発され、PLAIN センターが管理運営してきました。このシステムは現宇宙科学研究本部の各建物、各階まで1 Gbps の光回線バックボーンを設置した高速 LAN で、外部には国立情報学研究所のスーパー SINET 10 Gbps ポートで接続されております。従来 ISAS-LAN は研究用 LAN として本部内外利用者の要望に答え、高速性と利便性を重視したシステムでした。一方統合後は経費節減等の観点からこの ISAS-LAN を論理的に分割して一部統合ネットワークとも結合し、高度のセキュリティ管理を要求される機構内業務 LAN の一翼を担う事となりました。本部内研究系の方々には多重認証システムの適用等不便をかける面があり、また他大学等からのアクセスが不便になるなどの問題がありますが、大容量高速転送という研究者の要請と高度のセキュリティ保持という業務からの要請を物理的には1本のネットワークで実現するためには致し方ない事で皆様のご理解をいただきたいと思います。 ●科学衛星運用支援・データ処理システムの更新 科学衛星運用支援データ処理システムの更新に係わる調達手続きは平成 14 年9月の資料提供招請官報公示に始まり、政府特定調達契約手続き基準に従って進めて参りました。数社のメーカーが関心を示しましたが、最終的には科学衛星運用に係わる長年のノウハウをもつ富士通株式会社が落札しました。計算機・ネットワーク群はリプレース後ただちに稼働をはじめておりますが、本宇宙科学研究本部が長年蓄積した科学衛星データベースの新システムへの移行には数カ月を要し、昨年12月にようやく全データベースの移行を完了しました。 ●スーパーコンピュータシステムの更新 スーパーコンピュータシステムの更新に係わる調達手続きは平成 14 年 10 月の資料提供招請官報公示に始まり、昨年10月に落札業者が決定したところです。導入の決まったスパコンは NEC 社の128プロセッサ、16ノードのベクトル型計算機(NEC SX-6 128M16)です。これは当本部が現在所有するスパコンの10倍以上のピーク性能(1152 G Flops)と主記憶容量(1024 G Bytes)を有するマシンです。この新スパコンは3月中に導入設置を完了し新年度早々には稼働開始の予定です。現行機の演算速度にご不満のあった大学関係者にも次期スパコンは十分活用して頂けるものと期待しております。また、総合技術研究本部の流体シミュレータがスカラー並列計算機である事に照らし、当機構が所有するスパコンとして今後両者を相補的に運用出来る時期がくるものと期待しております。当宇宙科学研究本部の計算機の外部研究者による共同利用規定については、新機構移行に伴い大幅に改訂する所存です。しかし、宇宙科学研究分野における理工学研究者の計算科学研究に供する理念においては従来となんら変更はありません。利用規定についてはスパコンの共同利用公募の際併わせてご案内いたします。関係者の積極的なご利用をお待ちしています。 ●科学衛星データベース、工学データベースの開発 科学衛星で取得された全テレメトリデータは一次編集をした後 SIRIUS データベースに蓄積されます。これまで宇宙科学本部の前身である宇宙科学研究所が観測運用を行った全衛星の全データがこの SIRIUS データベースに蓄積されており、SIRIUS はいわば日本の科学衛星データの原本であります。各衛星プロジェクトチームはこの SIRIUS データベースを基にして、データの再編集、較正等を行い2次プロダクションデータベース、3次科学データベースを作成し、研究解析を行います。各衛星プロジェクトチームの占有使用期限が終了したデータは PLAIN センターに引き渡され、PLAIN センターではそのデータベースの検索システムの構築、解析支援ソフトウェアーの整備等を行った上で、DARTS システムを介して国内、海外の宇宙科学研究者の利用に供します。DARTS システムは平成10年から平成13年にわたり日本科学技術振興事業団(JST)のプロジェクトとして内容の充実を図ってきました。現在はX線天文衛星「ぎんが」、「あすか」、電波望遠鏡「はるか」、赤外線望遠鏡 SFU/IRTS、太陽物理衛星「ようこう」、磁気圏観測衛星「あけぼの」、GEOTAILのアーカイブデータを公開中です。今後数年の間に Astro-E2、Astro-F、Solar-B で取得される大規模な観測データの処理と公開が予定されております。さらに衛星プロジェクトチームの協力の下で科学観測データ解析支援システムの開発を引き続き進めていく予定であります。 ●スーパーSINET 宇宙科学研究ノード 旧宇宙科学研究所のネットワークは旧学術情報センター/現国立情報学研究所による学術研究ネットワーク網の整備発展に連動して拡充発展してきました。現在は 10 Gbps バックボーンのノード機関としての機能を果たすと共に、宇宙研との共同研究を強力に進めている特定の大学とは 1 Gbps の専用回線(または専用バンド)接続を行い、宇宙科学・天文学研究部会内の宇宙科学研究班を構成しております(参考:他には高エネルギー・核融合研究部会、遺伝子情報解析部会、ナノテクノロジー研究部会、グリッド研究部会がある)。現在宇宙科学研究班には国立天文台、東大、京大、名大、東北大、阪大、東工大、九大、北大、広島大、統計数理研、慶応義塾大、金沢大が参加しております。ご存じのように国立情報学研究所も平成 16 年度には独立行政法人への移行が予定されており、スーパー SINET を取り巻く情勢も厳しいものがあるようです。今後スーパー SINET が学術研究の基盤を支える学術ネットワークのバックボーンとして存続していくためには、これを利用している宇宙科学研究班も相応の研究成果を挙げていかなければなりません。 以上、PLAIN センターがかかえる主な研究開発業務とその課題を紹介して参りました。計算機・ネットワーク・データベースは研究開発組織の運営と研究活動を効率良く行うための基本的な設備であります。また、巨額の資金を投じ、多くの研究者・技術者の努力により取得された科学衛星データ資源の公開と有効利用の促進は、宇宙科学研究本部の使命でもあります。PLAIN センターのスタッフ一同、今年はこれまで以上に多様な課題を抱え精一杯頑張る所存でありますので、皆様のご支援をお願い致します。
|
|
|||||||||||||||||||||||
![]() |