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PLAINセンターニュース第116号 |
田村 隆幸 XSA は、衛星の観測データを保存し、観測提案者および一般の利用者へ web を通して公開するもので、Newton データの一般公開 (2002年4月) に合わせてサービスを開始しました。予想される全データの容量は、2T Bytes だそうです。XSA は、Java をベースにしており、赤外天文衛星 ISO のシステムを XMM-Newton 用に応用して作られました。Java の売りの一つはその拡張性にあるので、短時間で ISO のシステムから移植・開発できたようです。また、ユーザーインターフェースとデータベースのやりとりの部分で、XML (eXetened Markup Language) を使っているので、別のインターフェースやデータベースへの移植も難しくないようです。以下では、利用者がデータを取得するまでの流れにそって、XSA の特徴を紹介します。 1. XSA の起動2. 検索 3. Quick Look (QL) 4. データの取得 1. XSA の起動 xmm.vilspa.esa.es/xsa からスタートします。Java-applet がプラグインされたブラウザであれば簡単に起動できます (図1)。そうでない場合には、プログラムをダウンロードして Java applet としてブラウザなしでも全く同じものが起動できます。Java のもう一つの売りは、OS/プラットホームに依らないコード化が可能な点です。XSA は、Solaris、Digital Unix、Linux、Windows、および Mac OS で走らせることができるようです。私は、Solaris (Java利用)、Linux (Mozilla)、Windows (IE) で動作を確認しました。起動が終れば、アカウントを作って、ログインすることもできます。アカウントによって、そのデータの観測提案者かどうかの判断や一般利用者が取得できるデータの制限を管理しています。 2. 検索 自分が解析したい天体の名前や座標がわかっている時には検索は簡単ですが、そうでない場合もあります。例えば、XMM-Newton で公開されている銀河のうち銀緯が 20度以上でかつ観測時間が 20 ks 以上のものを全て解析したい人がいるかもしれません。銀緯によって我々の銀河のガスによる吸収やバックグランドが違うからです。XSA はこのような複雑な検索条件にも対応しています。他にも、観測された日時、衛星の軌道周期、検出器の観測モードなどによって検索することができます。銀河団に興味のある私としては、距離やガス温度といった天体の性質でも検索できると嬉しいのですが、そこまではサービスしていない (あるいはできない) ようです。図2に検索結果の例を示します。
3. Quick Look (QL) 検索して見つかったデータを自分のサイトに持ってくる前に QL することができます。簡単な解析による X線イメージ (図3)、時には X線スペクトルやライトカーブを見ることができます。Java を使っている効果でしょうか、これらをイメージファイルや FITS 形式で保存することができます。実際に、これらの QL 結果だけからどんな新しいことができるか判断するのは難しいですが、役に立たないデータを削除して、時間の節約にはなると思います。このあたりの何を QL として提供するのかは、幅広い要求があるので難しいところです。ちなみに宇宙研の「あすか」衛星の場合には、受信局にいる担当研究者がその日に観測されたデータに合わせた QL をおこない、「あすか」チームあるいは観測者に FAX 送信していました。XMM-Newtonの オンライン上の自動 QL (容易な検索、低コスト) と「あすか」のような手工業 QL (柔軟性など) の良い点を合わせたようなシステムがあると便利ですね。 QL に加え、各観測のプロポーザルのアブストラクトがあり、その観測による論文 (NASA/ADS) へのリンクも貼られています。これらはなかなか便利だと思います。 4. データの取得 そして最後 (解析のはじまり) はデータを持ってくることです。XSA の場合は、希望する観測、検出器の種類、あるいはデータの種類 (元データか一次処理済み) を「買いものかご」に入れ、「リクエスト」ボタンをクリックします。そうして、しばらく (私の経験では数分) すると自動的にデータが anonymous FTP directory に置かれ、その旨が email で連絡されます。文献[1]には、FTP 以外にも CD-ROM 発送も要求できると書いてあります。たしかに「要求」はできたのですが、少なくとも私は CD-ROM を受けとったことがありません。 各種の FAQ や「ガイドツアー」などの文書が web 上に揃っています。また、email で質問ができるヘルプデスクもあります。以上のように XSA はなかなか立派なユーザーインターフェースを持っています。実は、我々 DARTS のチームも、このような Java/XML ベースのシステムを構築しようと検討しているところです(例えば太陽観測のデータベース/SODA; PLAIN ニュース 2002/11)。XSA からはいろいろと学ぶところがあると思います。 文献[1] Arviset et al. 2002, "The XMM-Newton Science Archive"
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