No.219
1999.6

ISASニュース 1999.6 No.219

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「スピンオフのフィットネス」

名古屋大学大学院工学研究科  藤原俊隆  

 早いもので,宇宙研運営協議員に任じられて8年間が過ぎ,その間宇宙研の諸先生方や事務の方に親切にして頂いて,宇宙研訪問を大変楽しく過し,且つ宇宙研の運営が少し分る様になった。8年前には僕も52才で随分若く体力も有ったのだが,その後の体重増加とスタミナ減少問題に対処する為に,3年半前から始めたのがフィットネスである。

 宇宙飛行士が数日間も宇宙の無重量状態に晒されている間,特別のマシンで筋肉やカルシウムの脱落や筋力低下を防いでいる事は,既に良く知られている事実だが,この筋肉トレーニングがスピンオフして,現在日本でも運動不足の都会人間の間に大流行しているフィットネスになった事が,一般人には意外に知られていないのでは無かろうか。宇宙研の方々はそれを知識として御存知でも,時間が無くて仲々プレー出来ない,と言うのが現状だろう。そんな訳で,フィットネスについて,ここで僕の多少の経験を披露させて頂く。

 フィットネスクラブに入ると,西も東も分らない新入会員に対して,担当インストラクターが,まるでホームドクターの様に各会員に対して割当てられる。この担当インストラクターは会員の目的,体力,年齢,性別等に応じて,フィットネスメニューの作成を手伝って呉れるのだが,ここでも熱心に自分の考えを述べたり,絶えざるコミュニケーションに勤めれば,紆余曲折の後に自分に合った良いメニューが出来上がる。最大筋力値を色々なマシンについて測定し,その8割程度の荷重で10回繰返すのを1セットとし,1日3セット位繰返すのが良いと教えられたにもかかわらず,これは相当厳しく,1日1〜2セットに減らす事も頻繁に有るが,その日の体調によって増減するのはむしろ望ましいとの事だった。クラブで貰えるカルテ上に毎回のプレー内容を詳細に記録すると,徐々に体力が向上し,体重や体脂肪率が減少して行くのが見えて仲々楽しく,プレー中の辛さを忘れさせて呉れる。余り激しく辛いレベルの運動は無酸素運動になってしまい,長期的に見るとむしろ有害なので,避けるべきとの事だった。その点エアロビクスは理想的だ。

 僕のクラブでは,各種器具を用いるマシンジム,60分間体を動かし続ける各種エアロビクス,水泳と水中エアロと水中歩行のプール種目,バスケットやスカッシュ等の球技,ジャクージやサウナでの発汗と,多種多様の運動が準備されて居り,至れり尽せりのサービス競争を感じる。サウナでも温度が正確に92〜98℃に維持され,街のサウナよりも清潔低温で,僕は7分間と決めている。僕が推奨したいジム種目はステップマシンで,走行よりも激しくてカロリー消費と発汗が多いにも拘わらず,膝を痛めずに脚や腹筋を鍛え,呼吸器や循環器の鍛錬になる運動で,僕はレベル6〜830分以上費している。

 ストレッチの重要性を知ったのも,このクラブが最初であった。始めに何回かストレッチを省略して帰宅した事が有ったが,翌日の筋肉痛がひどかった。どんなに厳しいプレーをしても,クールダウン・ストレッチをきちんと行えば,体に疲労感が残っても決して筋肉痛は残らず,筋肉に柔軟性が残っている。翌日のテニスにも準備運動は全く要らない。

 行きつけのトンカツ屋の主人が,僕に会う度にする質問は「何時になったら宇宙旅行に連れてって貰えるかね,私はその為に1千万円以上使っても全然惜しく無いんだよ。死ぬ前に一度軌道から地球を見てみたいものだ」なのだ。「宇宙旅行へは近い中に行けるだろうけど,今の宇宙技術レベルでは,体力の弱い人には無理だろうから,せめてフィットネスにでも行って,五体を丈夫にして置くんだね」としか返事出来ない。そんな事よりも,フィットネスで体力と智力(怪しい)を鍛えて置けば,高年齢者の宇宙飛行士に,僕自身がなれるかも知れないではないか。こんな夢を持ちながら,週3回はフィットネスに行く。

(ふじわら・としたか)



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