- Home page
- No.216 目次
- 研究紹介
- お知らせ
- ISAS事情
- 送る言葉
- 宇宙を探る
- いも焼酎
- 追悼

- BackNumber
「のぞみ」火星投入延期と外国の反応

 既にご承知のとおり,去る12月末の地球軌道離脱時,推進系バルブの不調により「のぞみ」の火星軌道投入は当初計画から4年遅れの2004年1月とせざるをえなくなった。「のぞみ」はわれわれにとって初めての惑星探査機でありこの躓きは大きな衝撃であった。「のぞみ」には外国の研究者も数多く参加しており外国の火星探査機との共同研究も計画されていたため,延期の事情説明と今後の協力の継続をお願いする目的で1月28日から約2週間かけて共同研究を行っている外国の諸機関を歴訪してきた。協力の度合い,影響の度合いによって「延期」に対処する方法はさまざまであることは当然であったが,私が驚いたことは,訪れた機関全てで「おまえたちは良く危機を乗り越えた」という誉め言葉で迎えられたことだった。いささか憂鬱な旅立ちで出発した今回のいわば釈明の旅行は結果的に「これで「のぞみ」の価値が下がるわけではないのだから火星投入を是非成功させてくれ」とかえって元気付けられる結果となった。しかし,これは暮れから新年にかけての軌道グループの壮絶ともいえる奮闘の賜物である。もし,現在の代替え軌道が見つかっていなければ世間は決してこのように優しく理解に満ちた対応をしてはくれなかったはずである。海外の理解の根拠は我が軌道設計グループの偉業に対する賞賛と信頼の表われである。あらためて,危機回避に尽力された諸兄に感謝を込めて出張の報告にかえます。今後の長丁場を無事乗り越えて本当の成功の喜びを分かち合えることを楽しみにしております。

(鶴田浩一郎)

Return
Next

- Home page
- No.216 目次
- 研究紹介
- お知らせ
- ISAS事情
- 送る言葉
- 宇宙を探る
- いも焼酎
- 追悼

- BackNumber
宇宙学校・相模原開催される

 さる2月7日(日),相模原市立産業会館において,恒例の宇宙学校が開かれた。構成は,1時限(宇宙の謎を探る)が,「大きいブラックホールと小さいブラックホール(藤本龍一)」と「天体の距離をはかる(村田泰宏)」,2時限(惑星と生命)が,「小惑星へ行こう(藤原顯)」と「地球の生き物と重力」(惑星と生命)で,3時限(ロケットと人工衛星)は「ロケットの世界(竹前俊昭)」と「ロケットとの交信(橋本正之)」ということで,それぞれの時限の初めに各講師が導入的な話を10〜15分行い,つづいて一時間くらいQ&A,そしてビデオが上映された。面白い質問としては,

・超新星爆発によって,すべての物質が飛び去らないのか?
・ブラックホールが他の星のガスを吸い込んでマンタンになることはないのか?
・地球の元素以外のものが宇宙で見つかるか?
・地球の無重量でも,卵は宇宙の無重量と同じになるか?
・スペースシャトルの帰還が不可能になった時,不時着の危険はないか?
S-310ロケットのパーツの数はどれくらいか?

というものが挙げられる。参加者は延べ542人だった。

(的川泰宣)


Return
Next

- Home page
- No.216 目次
- 研究紹介
- お知らせ
- ISAS事情
- 送る言葉
- 宇宙を探る
- いも焼酎
- 追悼

- BackNumber
「はるか」成果報告会

 「はるか」の打ち上げから2年が過ぎた2月18日,報道関係者を対象として,「はるか」の成果報告会が開かれました。場所は霞ヶ関ビル東海大学校友会館で,20名を越す報道関係者が集まりました。西田所長,国立天文台の小平台長の挨拶があり,続いて,「はるか」チームから,まず工学的成果と観測成果についてそれぞれ要約した報告を行い,次いで,二つの観測成果に関する詳しい発表を行いました。

 一つは,M87という巨大な銀河の中心から噴き出るジェットについてで,その付け根の部分に不可解な螺旋状の模様を見出したというものです。説明者は平林さんでした。もう一つは,1921-293という名前のクエーサーが,10兆度という,これまでに観測されたことのない明るさで輝いているのを発見した,というものでした。この現象は相対論的効果によるもので,観測された輝度は逆コンプトン効果の理論限界を10倍以上超えています。2月1日に宇宙研の助手になられたフィル・エドワーズさんが,日本語で説明されました。質疑も活発で,新しい成果を少しでも正確に伝えたいという報道の方々の熱意が現れているように感じられました。会には,ジェット推進研究所,オーストラリア国立天文台,アメリカ国立天文台などの,「はるか」国際チームの主要メンバーも参加しました。

 報告会後の懇親会では,初めに小田稔先生が「はるか」の意義を改めて強調して下さり,和やかな中,参加者の間で実のある意見交換が行われました。

(廣澤春任)

Return
Next


- Home page
- No.216 目次
- 研究紹介
- お知らせ
- ISAS事情
- 送る言葉
- 宇宙を探る
- いも焼酎
- 追悼

- BackNumber
ASCAが見つけた宇宙で一番強い磁場

 星が持っている磁場はどの程度の強さだろうか。地球が表面でほぼ1ガウスの磁場を持っていることは皆が知っている。 太陽で一番強い磁場がおよそ1000ガウスであると知っている人も多いだろう。では宇宙において最も強い磁場はどこにあり,どの程度の強さだろうか? いままでは半径がたった10キロメートルなのに,太陽と同じ重さをもった中性子星にあり,その強さは1兆ガウス程度と知られていた。 ところが最近になって,ASCA衛星がその1000倍も強い磁場を中性子星から発見した。磁場の強さの世界記録となる。

 ASCAは軟ガンマ線バースト活動を行なう天体を観測中に,それがX線パルサーでもあることを発見しました。アメリカの衛星との協同観測による複数回の観測結果から,そのパルサーのパルス周期が短時間に長くなっていくことも見つけた。磁石が回転すると発電機となり,エネルギーや角運動量を外に失う。こんなに回転周期が速く変化することは,強い磁場を持っている証拠と解釈された。その磁場の強さからマグネター(magnet-ar)と呼ばれ始めている。一つ見つかると,なぜか次は簡単に見つかるもので,ASCA衛星2番目も見つけた。

 この異常に強い磁場で教科書を塗り変えることになったマグネターだが,もう一つ我々を驚かす現象を起こした。1998年8月27日に,普通は静かな夜側の電離層が突然電離をし,無線通信が乱れたり,複数の人工衛星が何かを感じて安全モードに移行する事件があった。この原因が,この軟ガンマ線バースト源だったのである。我々の銀河の中心に位置する遠い天体の,一発のガンマ線バースト活動が地球の人間の活動に影響を与えたことで,NASAからも特別の発表があった。

 宇宙には,まだまだ奇妙な天体がいる。この天体は磁場のエネルギーで輝いているらしい。

(村上敏夫)

Return
Next

- Home page
- No.216 目次
- 研究紹介
- お知らせ
- ISAS事情
- 送る言葉
- 宇宙を探る
- いも焼酎
- 追悼

- BackNumber
西田所長他(編)の宇宙科学書が米国で受賞



 米国出版社協会の専門書・学術書部門が選ぶ優秀図書と言えば,大変権威ある賞として有名だが,このたび宇宙科学研究所の西田篤弘所長他が編集し,米国地球物理学会から刊行した“New Perspectives on the Earth's Magnetotail”(磁気圏尾部研究の新たな展望)が,その1998年の物理学・天体物理学における最優秀図書に選ばれた。GEOTAIL衛星の成果を中心とし て磁気圏尾部研究の最先端の研究が集大成してある。

(的川泰宣)

Return


#
目次
#
送る言葉
#
Home page

ISASニュース No.216 (無断転載不可)