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1983年に宇宙研に「小型宇宙プラットフォーム(SFU)ワーキンググループ」が設置され設計が始まった。初期の設計全重量は3トン(H-打上げ時は3,850L)で,「3トンでも小型なの?」とよく聞かれた。当時は,米国スペースインダストリー社,フランスCNES/マトラ社のSOLARISなど5〜10トン級のプラットフォーム構想がひしめいていたので,多少気がひけて「小型」を付けたような気がする。また,初期構想ではスペースシャトルで打ち上げて放出した後,約一週間シャトル周辺で実験を行い,同じシャトルで回収して地上に戻る方式であった。その後1986年に打上げにはH-を使用すること,89年には気象衛星ひまわり5号との二重打上げが決まった。そのためSFUは投入高度約300Hから運用高度約500Hに自力で達することになった。この軌道上昇とスペースシャトルとのランデブ(下降)のため,軌道変換用推進系(OCT)が装備され,650Lのヒドラジンが搭載された。
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太陽電池パドル(SAP)に関しては初期には屏風型アレイも候補であったが,側面に付けるとアクセスパネルを塞ぐ,図1の上面に乗せると厚みを増やす,などの理由から選ばれなかった。薄膜型アレイにすれば,厚さをとらぬばかりか,20L/kW(駆動部を除く)という軽量化の最先端を行くという魅力があった。開発初期に提唱したプラットフォーム開発心得に,「コアシステム(バス系)にハイテクは用いない.ハイテクは実験として」という一条があった。言い訳はともかく抗し難いものがあり,SAPはSFUコアシステムで唯一の新規開発の項目となった。一翼の長さは約10m,幅2.4m,全出力は3.0kWで,実験用として850Wが供給された。
表1. SFUの性能実績概要
軌道高度 | 打上げ分離時 | 330H |
---|---|---|
実験運用開始時 | 486H | |
回収時 | 472H | |
軌道傾斜角 | 28.5度 | |
形状寸法 | 本体 | .46m(直径)×2.80m(高さ) |
太陽電池パドル | 24.4m(展開時)×2.40m(幅) | |
重量 | 打上げ時 | 3850L |
回収時 | 3500L | |
電力 | 発生電力 | 3.0kW |
実験用 | 850W | |
姿勢制御 | 太陽指向,三軸姿勢制御 | |
通信 | Sバンド | |
対地上 | 1kbps,16kbps,128kbps | |
対シャトル | 1kbps | |
レコーダー容量 | 4Mビット+80Mビット | |
微小重力環境 | 地上の10,000分の1以下 |
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図3. NASA安全性対応の例 タイマーによるRFコマンド受信阻止
地上局ネットワークを図4に示す。鹿児島宇宙空間観測所(KSC)/相模原運用センター(SOC)を主局とし,NASDAの沖縄追跡管制局(OTDS)/中央追跡管制所(TACC)のバックアップ,打上げと回収時並びに宇宙赤外線望遠鏡(IRTS)運用時にはNASAの深宇宙探査ネットワーク(DSN)とチリ大学サンチャゴ局の支援を得た。シャトルがSFUに接近する近接運用時には,SFU運用管制権をNASAに渡し,すべてのコマンドはシャトルから発行されるという了解のもとにSOCの初期設計が進められた。ところがかなりあとの段階で,SOCでのコマンド発行機能を追加することになった。そのお陰で,相模原発行のコマンドがシャトル経由で実行される様子が,NASAが配信する映像で放送され,サガミハラの名が一躍日本,アメリカ中に知れ渡った。
図4. SFU運用管制地上局網
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図6. コンテナに納まり,曳き船により霞ヶ浦を進む
SFUフライトモデル(USEF提供)
種子島搬入後の電気性能試験は坦々と進んだが,年末から1995年の年始にかけて推進系不具合が相次ぎ,現場も後方支援も緊張に明け暮れ,筆舌に尽くし難い苦労を味わった。いずれ改めて筆をとるとして,ここでは触れずにおこう。我が国初の回収型衛星SFUの打上げは,ひまわり5号(GMS-5)との初のH-二重打上げ,初の3月打上げと,初ものづくしとなった。平成7年3月18日17時01分,図7の如くH--3号機はSFUとGMS-5を乗せ,曇天をついて飛び立ち,またたく間に雲の中に消えた。打上げ管制センタ内は両衛星の軌道投入まではしんと静まりかえっていたが,正しく軌道に(SFUは高度330Hに)投入されたと報ぜられるや歓声で湧いた。記者発表を終えて,打上げ慰労会に出席した折り,太陽捕捉,太陽電池パドルの展開ともに成功の報を聞き安堵した。
図7. H-試験3号機によるSFU打上げ(NASDA提供)
帰京後1日置いて,3月20日には地下鉄サリン事件が発生。H-/SFU/GMS-5関連のニュースは報道から消えた。5日後にはSFUは運用高度486Hに達し,3月29日までにはコアシステム,実験システムの点検を終え,全て正常と確認された。図8はSFUに搭載された小型テレビカメラ(TV)による展開完了後の太陽電池パドルの姿である。簡易テレビではあったが,意外に解像度は高く,手前の太陽電池セルの見分けもつく。TVは展開モニタ接点スイッチの冗長程度に考えていたが,百聞は一見にしかずの感を深めた。
図8. SFU搭載テレビカメラで撮影した太陽電池パドルの展開
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図9. 軌道上で産卵されたイモリの卵
実験が終った後,シャトルによる回収が一カ月以上延びたので,1995年11月初めまで太陽電池アレイのような柔軟構造をもつ宇宙機の動特性取得等を行い,11月からは回収にかかわる機能点検を行った。点検の一つに待機している冗長系の機能確認があった。冗長系を確認したいとNASAに伝えると,拒みはしなかったが,「我々だったらやらない」と薄笑いしながら云う。あからさまに云わないが,「何かあったときに灯を入れるのが冗長系。仮に不調と知れたらどうするつもりか」と云いたいのだろう。日本側の考えは,「その場に至って慌てるのでなく,予め策を練っておく」にあるのだが,まさしく文化の差を見る思いがした。彼ら(NASA)もそのことは承知しており,話は,ロシアはこうだ,イタリーはああだと文化論に花が咲いて終った。とにかく日本流は実行され,冗長機能は正常と確認された。
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図11. シャトルに回収されるSFU(NASA提供)
1月20日午前10時頃(ヒューストン時間)には飛行士一行がJSC近くのエリントン飛行場に戻ると聞き,CSR一同,ジョーダン氏(SFUペイロード主任),バイサート氏,オースチン氏(STS-72フライト主任)らと一緒に飛行場に向かう。丁度この日,ヒューストンで女性議員の葬儀があり,これに列席したクリントン大統領は宇宙飛行士達と飛行場で会見した。冷たい雨の降る中だったが華やかな歓迎会となった。若田宇宙飛行士と抱き合って帰還を祝った筆者の顔は雨とも涙ともつかず,ぐしゃぐしゃに濡れた。
(くりき・きょういち)
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