★ダミーロケット全機振動試験
振動試験というと搭載機器が振動環境に耐えられるかを調べる試験のイメージが強いと思いますが,この全機振動試験とはロケット全体を振動させてロケットの動的な性質(固有振動モードと固有振動数)を調べる試験です。M-V型ロケットに搭載されている姿勢を制御するシステムがロケットに生じた振動を姿勢変化と勘違いしないように,また,姿勢制御によって大きな振動がロケットに発生しないように,あらかじめどのような振動が生じるか(固有振動モードと固有振動数)をシステムに教えておく必要があります。これらの情報は計算によって推定されていますが,より精度を上げるために実際のロケットを振動させてデータをとる目的でこの試験が計画されました。とはいっても,いきなり本物のロケットを振るのはいささか臆するので,予行演習として本物のM-Vとほとんど同じ大きさと重さを持つダミーロケットで今回試験を行いました。
ロケットは140ォもの重さにも関わらず組立台上にあるときは手で振動させることができます。相模原での予備試験では電磁加振機の低周波での能力に一抹の不安があり人間加振機の登場も考えたのですが,幸いなことに整備塔の5階と7階に設置された電磁加振機で試験を行うことができました。ロケットはこの加振機に棒で繋がれ,生じた振動をロケットの各部に貼り付けたセンサで測定しました。
J一郎助教授からの依頼でJ次郎教授が請け負ったこの試験は予想以上に(予想通りに?)大規模なものになり,改修したばかりの整備塔の床や天井に穴開けや溶接をすることは心苦しかったのですが,その甲斐あって,組立オペーレション後に予定されている実機振動試験に向け貴重な経験を積むことができました。
(峯杉賢治)