No.228
2000.3

<送る言葉>   ISASニュース 2000.3 No.228

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小川原先生を送る

井 上 一  

 小川原先生とは,長い間,ここ数年は特に,お近くで仕事をさせていただいてきたが,正直,いまだに,謎ばかりの先生である。

 まず,先生は,いつお休みになるのか,よくわからない。メイルを頂いて,発信の時間をみると,とんでもない早朝であったり,海外出張中の先生から電話を頂いて,ふと考えみると,現地では,とんでもない時間であることが,しばしばであった。たぶん,それと無関係ではないのだろうが,会議中の居眠りは,実におじょうずである。先生と二人で相手をするような会議では,先に居眠りに入ったほうが勝ちである。私が,勝てたためしはない。

 先生は,実に旅行通でもいらっしゃる。いろいろな空港でどのように乗り換えたほうが良いか等を実に良く知っておられる。そして,空港のカウンターに顔見知りの係員がいて,よく,話などしておられる。そのためかどうかは知らぬが,ふしぎなことに,こちらと同じ,安いアニマルクラスの切符であったはずなのに,先生だけは,しばしば,ビジネスクラスにアップグレイドされるのである。私などには,とても及びのつかない裏技をご存知のようである。

 住まいが同じ方向にあるので,朝の通勤の途中に,たまたま,先生の車と私の車が相前後するような時がある。しかし,なぜか,先生より先に宇宙研につけたことがない。先生は,決してスピード狂などではない。ただ,二車線の道などで,うまみに車を抜いて行かれるのである。また,黄色では決して止まられない点も,大きいかもしれない。いつも,どこかで間の抜けてしまう,私の負けである。

 そして,何よりも,私が及びもつかなかったことは,衛星を作り上げてきたこの間の,先生の妥協を許さないきびしさと問題に対する判断の適切さである。ついつい,全体のバランスを気にして安易に流れてしまったり,表面的な現象だけで大騒ぎをしてしまったりする私などには,学ばせていただくことがひじょうに多いこの数年間であった。たいへん残念なことに,共に作り上げたASTRO-E衛星は,何も残らないことになってしまったけれども,先生が私どもに教えてくださったものは,決して消えることはない。

 実験物理の神様のような小川原先生が,ご退官することになられ,後に残る私どもは,不安でいっぱいである。小川原先生,どうか,宇宙研をご退官になられましても,私達を末永くご指導下さいますよう,お願い申し上げます。

(いのうえ・はじめ)


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