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MUSES-C構造モデル試験

 今年1月初めから始まったMUSES-C構造モデル試験(MTM試験)は,2月末をもって終了した。構造モデル試験といえども,探査機構体はそのままフライトに使えることを念頭においていること,搭載機器のいくつかはフライト品を載せていること,後述するミッション特徴のために新しい構造様式としたこと,構体軽量化のために限界的に肉を削っていることなどのため,慎重に試験を進めたため2カ月間をかけることとなった。MUSES-Cミッションの特徴は,小惑星表面にてサンプルを採取する技術を獲得すること,遠距離での自律航法に頼ること,電気推進を主推力機関としていること,惑星軌道からの再突入回収技術を獲得すること,などである。そのためにイオンエンジンスラスタを探査機外面に保持し,大面積の太陽電池パネルを持ち,大きな放熱面積を確保し,サンプラーと呼ばれる岩石破片採取機構と再突入カプセルを探査機外面に持ち,多くの光学機器の視野を確保し,小惑星ローバー放出用の大開口部を持ち,且つ極限的軽量化など構造に対しさまざまな要求がある。これらを実現するために,パネル組立構造様式とし,重量搭載物であるタンク類を2枚の鉛直バルクヘッドで保持し,この2枚のバルクヘッドと側面パネルの4枚で囲まれる構造で打ち上げ時荷重の多くを負担する構造とした。パネル上に多くの搭載機器を配置することもできた。この新たな試みである構造様式を検証するために,動荷重試験は重要な意味を持つ。

 分離機構,展開機構,搬送機構など可動部が多いこともMUSES-C探査機の特徴である。これらは駆動バネと解除機構としての火工品とで構成されており,他の搭載機器に及ぼす火工品衝撃もまた重要な測定項目である。火工品衝撃測定だけでも5日間を費やすほどの点火項目数であった。

 以上,一連の構造モデル試験で,構体強度確認のほか,搭載機器の機械的環境条件設定およびシステム総合試験方法の検討などに向けて多くの貴重なデータを取得した。時期的にはASTRO-E衛星搭載のM-V-4号機の打上げやDASHカプセル試験などと重なり,人員的に工夫が必要なところもあったが,他プロジェクトからも好意的に対処して頂けたため,最終的にはスケジュールを守りつつ実施できたことを多くの関係者に感謝している。

(樋口 健)

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宇宙機関運用諮問会議(IOAG)の発足

 現在の宇宙科学あるいは宇宙開発においては国際協力のプロジェクトが増えつつあるが,国際協力プロジェクトをさらに円滑に進めるために,宇宙機又は衛星運用の分野において世界の宇宙機関が共通に抱える問題点について討議し,世界の宇宙機関の間で統一的な方針をまとめるための場が必要であるという指摘が以前よりなされていた。この考えに賛同した世界の7つの宇宙機関(NASA , ESA , CNES , DLR . ASI , ISAS , NASDA)によって宇宙機関運用諮問会議(Interagency Operations Advisory Group,略称:IOAG)が発足し,その第回目の会合が2月9〜10日JPLにおいて開かれた。宇宙研からは山田隆弘助教授が参加した。以下は,同助教授からの報告である。今回は初めての会合であるため,この会議の基本方針についての議論がなされたが,将来のプロジェクトにおいては世界の宇宙機関が歩調を合わせて運用に関わる新技術を採用することが重要であるという指摘が各機関の代表者よりなされ,この会議の重要性が確認された。また,この会議では,宇宙データシステム諮問委員会(CCSDS)等のような団体が作成した国際標準規格を各機関で導入する際の問題点やスケジュール等の調整も行われることになろう。さらに,この会議の最初の具体的なテーマとして,追跡支援のための情報管理の電子化に関して統一的な方針を作成することになった。宇宙研も,「のぞみ」以降の探査機で使用している運用システムなどを背景として,この会議のために貢献ができるものと思われる。また,宇宙研の将来のプロジェクトにおいても,この会議で討議された方針を採用することによって他機関との間のデータ伝送システムの構築等をより円滑に進めることが可能になるであろう

(二宮敬虔)

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「GEOTAIL」4時間半の日陰を乗り越える

 日本時間の本年2月22日未明,GEOTAIL衛星は遂に4時間半という日陰(蝕)に入りました。電源,熱などのシステム設計上からの日陰時間の制約は2時間でしたので,実に設計の2倍以上です。しかも,打ち上げから既に7年7ヶ月,こちらの方も設計上のミッション期間3年半2倍以上。遠地点が徐々に低緯度側にシフトし,遂に黄道面内になってしまいました。臼田の大型アンテナも建設から15年以上,地上局の方もくたびれています。人間の方も多少くたびれてきていますが,バブル景気の前に作られた衛星は今も元気に活躍し,GEOTAIL衛星は磁気圏物理学の国際的な共同研究の中で中心的な役割を果たしています。今回の日陰がこの衛星にとって生涯最長の日陰です。衛星上の電源・熱対策で可能な限りのことをOPに組み込み,地上の体制も内之浦の20mアンテナをバックアップに立てる万全の布陣で臨んだとはいえ,何が起こっても不思議はないという状況でした。実際,軌道・姿勢制御用のバルブの1つがヒドラジンの凍結温度にまで下がりましたし,日陰終了後も温度が下がり続ける機器のヒーター制御のコマンドを可視時間終了間際に送信するなどクリティカルなオペレーションがありましたが,無事乗り越えることができたのは幸運という他ありません。今回の日陰を乗り越えたことで,GEOTAIL衛星への期待は今後も続くものと思われます。関係者の方々の御協力に御礼を申し上げます。

(向井利典)

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西田前所長に2つの栄誉

 AGU(アメリカ地球物理学連合)は,栄えある2000年Van Allen Lecturerに,西田篤弘宇宙科学研究所前所長を選びました。これは,AGUの会長の名を冠したBowie Lecturersの一つで,宇宙物理学・大気物理学部門の最も名誉ある賞であり,磁気圏物理学において長年にわたり傑出した貢献をなした研究者に贈られるものである。

 またロシア共和国の宇宙航行学における最も栄誉ある賞である「ガガーリン・メダル」が,西田前所長の太陽地球系物理学への貢献に対して授与されることになった。心からお祝い申し上げます。

(的川泰宣)

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