No.199 |
<研究紹介> ISASニュース 1997.10 No.199 |
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ところが,複合材料はその名が示すとおり,それ自体が既に複数の基材の集まりであり,サイズ的には微小ですが,ある材料中に別の材料を配置するという点で,一種の構造物であると見なすこともできます。つまり複合材料は目的に応じて内部の形状諸元の「設計」が可能な構造物だと考えられます。ここでは,このような視点に立って,複合材料を構造力学の対象とする研究分野の,そのまた限られた一分野を紹介します。
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この積層板は,特定方向の特性のみに注目すると,その方向にのみ繊維が並んだ一方向材料と較べて,材料としての効率はもちろん落ちます。それでも軽量かつ高強度,高剛性を必要とする航空宇宙分野では,ジュラルミンなど既存の金属材料より優れているとして利用範囲が拡大しています。最近では,最終製品にするまでの総合的なコストの点でも,製造工程の簡素化等により,従来材料に対抗できるようになってきたことで,利用される例も増えているようです。
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もう一つ重要なことですが,積層板自体が前述のように繊維方向などを変えることで自由に設計できるため,たとえ形状が同じでも性質の異なる無数の部材を作ることが可能です。これらの部材では,荷重を加えた際の損傷の種類や蓄積程度などが変わり,結果的に最終的な強度までもが変わってくる可能性があります。金属材料では素材の強度を調べれば,部材としての強度も極めて正確に予測できますが,複合材料で作られた部材の場合は,たとえ形状が単純でも簡単ではありません。設計者にとっては,厄介な材料だと思います。つまり設計の自由度が大きいことが強みでもあり,この点が強調されがちですが,見方を変えると強度の予測を難しくする点で弱点にもなっています。
構造力学的な面からも多くの研究が行われています。その一つが繊維を積層板の厚さ方向に積極的に配置して層間を強化する手法です。その代表的な方法が裁縫で使われるボタン穴をかがる手法に似た方法で,スティッチング( Stitching )と呼ばれるものです。これは,層間剥離が生じ易そうな部位,或いは生じては困る部位を,予め繊維で縫って補強する方法です。この補強によって厚さ方向の強度は増しますが,同時に本来必要な板の面内方向の強度低下をもたらす可能性があります。これを数値的に評価しようとすると,解析上は繊維束単位のレベルでのモデル化などが必要で,簡単ではありません。
この考えの延長上には強化繊維を織って配置することが当然出てくると思います。いわゆる織物複合材料として実用化されているものです。繊維の織り方で二次元織や三次元織等が考えられますが,これらはいずれも板の面内方向の強度や剛性を多少なりとも犠牲にしているため,織物にすることの長所と短所を秤にかけて使うことになります。ただし解析でこれらを評価することはやはり多大の労力を必要とします。
また,出来上がった積層板部材の強度の予測が困難な点を述べましたが,もちろんこの強度予測への理論的な取り組みは無数にあります。しかし,残念ながら未だ幅広く適用し得る一般性のある理論は出来上がっていません。複合材料の構造力学関係の研究ではこの分野は極めて基礎的な領域ですが,内容的には塑性力学,破壊力学,界面の力学,確率論など複数の分野にまたがった横断的な取り組みが必要で,今後いろいろな取り組みからの成果が必ず出てくるものと思います。
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(あおき・たかひら)
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