No.190
1997.1


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- No.190 目次
- 新年のご挨拶
- SFU特集にあたって
- SFUプロジェクトを終えて
- SFUシステム
- SFU実験
- SFU運用
- 編集後記

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 SFUは基本要求に見られるように最初に「SFU」があって次に「複数の実験・観測ミッション」がある。SFUは再使用の容易さを重視した「宇宙に長期滞在可能な再使用型宇宙輸送システム」である。このため推進系の設計方針も「ユニット化された取扱い易さ」が特徴になっている。SFUには姿勢制御用推進システム(RCS)と軌道変更用推進システム(OCT)がある。これらはそれぞれ独立したヒドラジン・モノプロペラント・システムである。ヒドラジン・システムは「致命的な危険要因」としてのNASA安全対応が要求される。NASA安全審査のガイドラインとなる適用文書は推進系関連だけでも約30種類もあり,推進系がNASA安全対応のために作成した文書は90種類以上になった。SFU推進系はいかなる二重故障や二重誤操作が起こっても致命的な危険要因となってはならない。このためのタンクからスラスタまでの推薬供給配管系に三重の機械的に独立な遮断装置(弁)を設け,そのうちの最低2つがモニタ可能でなければならない。また弁作動に対しては三重の電気的インヒビットが必要である。SFU推進系はこのようなシャトル・ペイロードの安全基準を全て満たしている。一方,SFUには「シャトルとの電気的インタフェースを無くする」と言う設計方針があった。シャトル回収後にヒータで保温しないと,カーゴベイ内でヒドラジンが部分的に凍結して(凝固点は約2℃),地上へ帰還した後で解凍する。このヒドラジン凍結・解凍サイクルは密度変化を伴うため配管系を壊す危険性があると考えられている。このためヒドラジンの凍結・解凍を許容する楕円配管(図14)

図14. 楕円配管  
を考案してNASA安全審査に臨んだ。交渉の結果,一連の凍結・解凍モデル実験と実際の温度環境を模擬した熱解析を行って安全性を検証すること,更に,ROEU(遠隔操作電気アンビリカル,図15)を経由したヒドラジン系ヒータ・システムを並行して開発することになった。この結果,一号機ではROEU経由でシャトル電源を利用するヒータ保温方式を採用し,同時にフェールセーフ設計の立場から楕円配管方式はそのまま使用することになった。シャトルへのSFU回収に際して最も重視されることは,タンク内のヒドラジンを絶対に漏洩させないこと,及びスラスタの不意な噴射が起こらないことである。このため回収に先だって段階的な安全化とその確認を行った。推進系ではRCSおよびOCTのリークチェック,推薬弁と遮断弁および電気的インヒビットのアンサー確認を行った。回収後のROEU経由での電気的インタフェースは推進系の温度制御関係のみである。このため回収運用では推進班を中心に24時間体勢の温度モニターを行った。回収2日目にはしきい値である10℃以下に温度が低下して冗長系のヒータもオンにした。その後,10℃から60℃の温度範囲を外れた場合にはクルーがシャトルの姿勢を変えて対応することになり,無事帰還することができた。回収運用に参加した後で,シャトルとの電気的インタフェースを無くするための凍結・解凍許容設計の着想が非常に魅力的なものに思えた。次号機ではこの凍結・解凍許容設計に更に磨きをかけて,ROEU系が故障した場合の「切札」になればよい。

(橋本保成,都木恭一郎)

図15. 遠隔操作電気アンビリカル(ROEU)

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