No.190
1997.1


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図23. 計画初期の実験装置の概念図
 「材料実験」を直訳したMEX( Materials Experiment )のグリーンブック(実験計画書)には,図23のような装置の概念図を載せていた。可視化実験を手がけておられる方にはすぐお分かりのように,これはレーザーホログラフィーである。MEXでは当初三つの実験(水溶液からの結晶成長,電析,樹脂状晶凝固の可視化)を計画していたため,懐の大きい干渉計としてレーザーホログラフィーを考えたが,これはあまり評判が良くなかった。成長した結晶の細かい観察には,解像度が足りないことに加えてシャトル実験で既に計画されていたことが不評の理由であった。
図24. マッハツェンダー型の干渉計の概念図
それではと,ケスタープリズムを使った図24のようなマッハツェンダー型の干渉計を考えた(1987年9月にニューオリンズで開かれた宇宙ステーションに関する国際会議ではこの図で説明した)が,これは特許の関係と,打上げ振動に耐えない,という強い抵抗によりあっさり頓挫した。ようやく出てきたのが共通光路型干渉計である。原理は,光源から出た光を偏光分割により試料光と参照光に分け,同一の光路で干渉させるというものであり,光路が共通となることにより,装置の小型軽量化に加えて,原理的に振動にも強いという特徴を持ったユニークな光学装置である。しかしながらこの干渉計は元々レンズ干渉計とし考案されたもので,顕微干渉計としての実績は世界的にも皆無であった。そこでやむなく試作品を作った。試作品のためノイズが多く干渉縞のコントラストも低い等の問題はあったが,顕微干渉計としての目処は立った。開発の見通しは得られたが外観はいかにも顕微鏡,であり,搭載するには,未だ道のりが長いという感じであった。
図25. SFUに搭載された顕微干渉計
実際,PFM(図25)にいたる迄,レンズ,プリズムなど光学部品はもとより,M8の取り付けボルトの破損も経験することとなった。ともかくできあがったものは約9Lと極めて軽く,片手でぶらぶら運んで机の上にドンとおいても光軸が狂わない傑作であった。後に宇宙開発事業団の小型ロケットに搭載された顕微干渉計は,本装置と同じ原理にもとずくものであり,SFU/MEXに負うところが極めて大きい代物である。なおシリアルナンバーが3か4のものは,北海道の落下塔で元気に活躍している。

 本番の実験では本体システムにつながる通信ラインが,予定とは異なる動作をしたため,ダウンリンク像の画質は地上実験よりも数段劣るものとなってしまった。しかしながら無重力下における融解・凝固の挙動を垣間見ることは出来た,と痩せ我慢をしながら,次なる機会で圏土重来を期すことを考えている。

(栗林一彦)



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