1998年10月末に、スペースシャトルでバラの香りの実験が行われた。この実験はアメリカの香料会社とNASAが一緒に行ったもので、「オーバーナイト・センセーション」という品種のミニバラを飛行中に栽培装置内で咲かせ、特殊な針を使って香り成分を取り出し、地球にもどってきてからその成分を地上で咲かせたバラと比較するというものだったんだ。

スペースシャトルの中での実験を担当したのは、NASAのジョン・H・グレン飛行士と日本人の向井千秋飛行士だったんだよ。

この実験の目的は、スペースシャトルなどの「長時間の狭い空間での生活」で生まれるストレスをいやす香りの効き目を調べることだったんだ。この「宇宙バラ」は、地上でつぼみをつけていた苗を宇宙に運んだもので、宇宙で花は咲き、香りの成分を取り出すこともできた。

スペースシャトルが地球に戻ってきてからの分析で、「宇宙バラ」の香りの化学成分は地上で咲かせたバラとはちがっていることがわかり、より繊細な香りだったそうだよ。香料会社のブラジャ・ムクハジー博士は「地上ではできないまったく新しい香りが生まれた」と評価しているんだ。ストレスをいやすこの香りの成分は地上で再現され、「スペースローズ」と名付けられて、実際の化粧品にも使われているんだよ。

さて、地上でつぼみとなったバラを宇宙で咲かせることはできたが、宇宙でバラの種子や挿し木から苗を育てた実験はまだ行われていないんだ。本当の「宇宙バラ」は、種子や挿し木から育て、花を咲かせ、その種子からまた次世代のバラが育っていくことのできるバラなのかもしれないなあ。宇宙でそんな「宇宙バラ」が咲くのか、種子ができるのか、種子からまた「宇宙バラ」ができるのか、については今後の実験に期待したいところだね。