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「かぐや」地形カメラによる新たなプロダクトを公開

 月周回衛星「かぐや(SELENE)」によって得られた貴重な月のデータを研究・教育利用のために公開している「かぐや(SELENE)データアーカイブ」ウェブサイトにて、新しいプロダクト(生データを処理して活用可能な形にしたもの)を公開しました。
 このたび新たに追加したのは、地形カメラ(TC: Terrain Camera)のデータから得られたプロダクトです。これで地形カメラのデータによる公開プロダクトは、「かぐや」公開プロダクト全体の80%以上ものデータ量を占めるに至りました。「かぐや」のデータはこれまで以上に多くの研究・教育に役立っていくことになるでしょう。

 「かぐや」は2007年9月14日に地球を飛び立ち、2年近くにわたって月の科学探査を行ない、2009年6月11日の主衛星の月面落下をもって観測運用をすべて完了した衛星ですが、こうして新たなプロダクトの公開ができるようになるまでには、機器開発、観測運用・地上処理ソフト開発、観測運用、データ校正・補正作業、プロダクト作成・公開、と多くのプロセスを経ています。今回の公開には大学・他機関の研究者を含む、かぐや搭載LISM機器チームが深く関わってきています。LISMとは、月面撮像・分光観測をする3機器(地形カメラ、マルチバンドイメージャ、スペクトルプロファイラ)の総称です。LISMのプロダクトは、「かぐや(SELENE)データアーカイブ」の機器の一覧から「LISM(月面撮像/分光機器)」を選択することで利用することができます。

 「かぐや(SELENE)データアーカイブ」ではこれまでにも、高精度の月全球標高モデルプロダクト「SLDEM2013」などを公開してきています。これは地形カメラによって得られた立体視データをもとに作られた地形モデルを、SELENE搭載高度計LALTデータや米国月探査機LRO搭載高度計LOLAデータを使って校正・補間して完成させたものです。これらとあわせ、今後さらに多くの方のデータアーカイブ利用が進み、月惑星科学が発展することが期待されます。

かぐや(SELENE)データアーカイブサイト

  • 新たに公開したプロダクト

    LISM/
     標準/
      TCステレオ視観測輝度データ
      TC単眼視観測輝度データ
      TCSP支援観測輝度データ
      DEM/TCオルソ

  • データ利用にあたって

    ダウンロードしたデータは圧縮されています(拡張子.sl2)。これはtar形式のファイルですので、拡張子.sl2を.tarに書き換えるなどして解凍してご利用ください。


追加したプロダクトの概要

 TCステレオ視観測輝度データ、TC単眼視観測輝度データ、TCSP支援観測輝度データは、観測生データに、打ち上げ前ならびに打ち上げ後に得られた校正データを利用し、輝度トレンドを利用して輝度校正をかけたものです。


  • TCステレオ視観測輝度データ

    ステレオ視観測輝度データの同じ箇所を見ているふたつの画像のペアデータからは、標高データを抽出できます。これまでLISMの標準プロダクトとして月全球標高のプロダクトを公開してきていますが、これらデータを使って、さらに高速・高精度の地形標高データ作成を試みることができるでしょう。

  • TC単眼視観測輝度データ

    単眼視輝度データは、単体ではステレオ視ができませんが、別軌道のデータを使ってステレオ視を試みることも可能です。これらデータを使って、新たに地形標高データ作成を試みることもできるでしょう。

  • TCSP支援観測輝度データ

    TCSP支援観測輝度データは、スペクトルプロファイラ(SP: Spectral Profiler)のデータと同時に取得されており、SPの観測位置再同定を試みたい方に利用いただけます。

  • DEM/TCオルソ

    これまで、地形カメラのステレオ視により作成した数値地形モデル(DTM: Digital Terrain Model)と、そのDTMを使って正射化した画像(オルソ)データを一緒にした「DTM/TCオルソ」プロダクトを公開してきています。
    一方、今回作成公開した「DEM/TCオルソ」(DEM:Digital Elevation Model)は、公開済みの全球の標高データ「SLDEM2013」を使って、単眼視のデータも含めて画像を正射化したオルソデータと、その際に利用されたDEMの組からなるものです。「DEM/TCオルソ」プロダクトは、単眼視データも含むため、「DTM/TCオルソ」プロダクトのおおよそ3倍増となります。
    「DEM/TCオルソ」は、クレーターカウンティングにそのままで使える非常に有用なプロダクトです。単眼視データは、東西それぞれ太陽高度が低い時期に取得された画像ですが、それらを正射化した「DEM/TCオルソ」は、詳細なクレーター計測などの調査に利用できるものです。
    さらに、これまでの「DTM/TCオルソ」は、陰領域の地形(標高)は陰領域の多くが正しく表されていませんでしたが、このたび公開した「DEM/TCオルソ」では、「SLDEM2013」を使っています。永久陰の内側でも周りからの反射光で微かに明るくなっている場所について解析できる可能性が飛躍的に増大し、水氷の探査を含めた将来の月極域探査に向けて大いに活用できると期待できます。

「かぐや(SELENE)」の成果については下記もご覧ください。


LISM(月面撮像/分光機器)PIs
 春山純一(JAXA)
 大竹真紀子(JAXA)
 松永恒男(国立環境研究所)

2015年4月8日

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