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観測ロケットS-310-38号機:実験概要

1.ロケットの概要

(1)ロケット名  : S-310-38
(2)ロケット全長 : 7.6m
(3)ロケット全重量: 0.8t
(4)搭載機器重量 : 22.5kg
(5)到達高度   : 160km
(6)水平距離   : 218km

2.実験場所

宇宙航空研究開発機構 内之浦宇宙空間観測所

3.実験予定日

2008年1月28日(月)18時07分
(実験を延期する場合の期間は、1月29日〜2月28日)

4.実験観測の内容『高度150kmまでの三次元プラズマ分布の観測』

(1)実験の目的

高度70〜150kmの電離圏DおよびE領域におけるプラズマ密度構造は一様ではなく,スポラディックE層(Es層)と呼ばれ局所的に高密度になっている領域に代表されるように様々な空間スケールの疎密が存在し、それが無線通信電波の伝搬を不安定にする要因にもなっています。

本実験においては、電波受信機、光学観測機器、プラズマ測定器を観測ロケットに搭載して、未だ良く理解されていない電離圏E領域プラズマ密度の三次元空間構造を明らかにすることを目的にしています。

(2)実験の概要

本ロケット実験の目的は上に述べた高度150kmまでの三次元プラズマ密度分布の観測にありますが、これを達成するためにロケットの上昇時と下降時を通じて搭載された機器による観測を実施します。ロケット下降時には高度110km付近でアルミの薄片を放出し風の風速・風向を推定します。

また、本実験ではロケットからプラズマによる散乱光の観測を行いますが、そのために太陽光が電離圏E領域を横から照射していることが条件となります。

電波を利用した観測により地上から電離圏状態のモニターが可能なので、ロケット軌道付近に電子密度の高い領域が存在する事を確認した上で、ロケットの打上げを実施します。

実験方法

(3)実験の意義と社会生活との関連

  • ■プラズマの濃淡分布:電離圏下部の密度の濃淡分布は観測手段に乏しく我々の知識は断片的で解明が進んでいません。電波と光による遠隔測定と、ロケットによる直接測定を組み合わせた観測は、世界でもあまり行われていません。
  • ■“プラズマの塊(密度の濃い部分)”は電波障害の原因としても良く知られています。プラズマの濃淡分布を明らかにすることによって、そのような現象の発生原因を解明すれば、発生の予測に役立てる事が出来ます。
  • ■ロケット実験はJAXAが東北大学、東京大学、富山県立大学、東海大学、名古屋大学、首都大学東京、情報通信研究機構と協力して推進する共同ミッションです。

観測ロケットS-310-38号機に搭載する観測機器は以下のとおりです。

搭載機器名 測定項目 主担当
VMR(超長波・中波帯電波受信機) 電子密度分布 富山県立大学
MII(マグネシウムイオンイメージャ) マグネシウムイオン密度分布 名古屋大学太陽地球環境研究所、東京大学
NEI(インピーダンスプローブ) 電子密度 東北大学
FLP(高速ラングミューアプローブ) 電子温度・電子密度 宇宙航空研究開発機構
CHAF(チャフ放出器) 中性大気の風向風速 名古屋大学太陽地球環境研究所
QFG(水晶摩擦真空計) 中性大気密度 名古屋大学太陽地球環境研究所
DFG(デジタルフラックスゲート磁力計) 磁場 宇宙航空研究開発機構
IAF(星撮像姿勢計) ロケット姿勢 東京大学

また、ロケット打上げ条件判断のため、地上では以下の観測を行います。

機器名 場所 観測項目 担当
イオノグラム 山川(鹿児島県) 電子密度分布 情報通信研究機構
Naライダー 山川(鹿児島県) Na+イオン密度分布 首都大学東京、情報通信研究機構

参考 ロケット全体図

2008年1月24日

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