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小惑星探査機「はやぶさ」イオンエンジン−Cへの切り替えに成功

「はやぶさ」は、2005年11月に小惑星イトカワから離陸後、化学エンジン燃料漏洩と、同エンジンの機能が復旧できない状態から、2007年4月にイオンエンジンとリアクションホイール1基(姿勢制御用リアクションホイール3基のうち2基に不具合が生じている状態)を用いた巡航運転のための姿勢制御方式を確立し、地球帰還に向けた本格的巡航運転段階に移行しました。

2006年の復旧オペレーション(2006年3月7日付トピックス参照)では、エンジン−BとDはイオン加速できたものの、エンジン−Cは起動できないままでした。帰還オペレーションでは、軌道変換ノルマを残存機器に分散して、リスクを低く押さえることが至上命題であり、そのために駆動できるイオンエンジン数を増やすことが課題になっていました。
一連の再起動作業の結果、7月28日にエンジン−Cのプラズマ点火に成功し、現在「はやぶさ」は同エンジンを用いて2010年の地球帰還をめざして動力航行を継続しています。

当初は、近日点通過時の探査機の温度が高い時期に合わせて、エンジン−Cの点火および起動を試みる予定でした。しかし、逆に温度が高過ぎて、事前に脱ガスを行った際の温度を超えて危険な状態に入る可能性が出てきたために、これを延期し、むしろ姿勢を傾けて太陽光の入射を避け、低温化を図ってきました。幸い6月7日無事に近日点(太陽距離0.95天文単位)を通過させることができました。なお、この間もエンジン−Dによる軌道変換を計画通りに継続しました。

探査機の温度が十分に降下した7月下旬になって、数日間をかけてエンジン−Cの電源をヒータで昇温させ、新たな立上げ手順によって同エンジンの再起動を試みたところ、7月28日にイオン加速に成功しました。これにともない、これまで連続運転してきたエンジン−Dを停止させ、エンジン−C単独運転に移行させました。エンジン−Cの累積運転時間は短く余力十分のため、これに切り替えたものです。同エンジンについては、2005年8月以来の運転であり、制御手順や調整および姿勢制御装置との連動運転の調整にしばしの時間を要しましたが、現在のところ安定な運転状態を維持しています。

「はやぶさ」は、ホイールなど各機器の残存寿命になお大きな課題を抱えていますが、利用できるエンジンが増えたことはとりあえず帰還オペレーションとって好材料といえます。搭載されている各イオンエンジンのこれまでの運転状況は以下のとおりです。

 スラスタA: 待機
 スラスタB: 約9,500時間
 スラスタC: 約7,000時間
 スラスタD: 約13,500時間
 合計:   約30,000時間

「はやぶさ」は、軌道変換に効率のよい時期に対応する本年11月まで、イオンエンジン−Cによる動力航行を継続し、それ以降はしばらく冬眠モードで弾道飛行させる計画です。
また新たな情報が得られ次第、逐次報告をいたします。

2007年8月16日

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