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特集

「すざく」特集号を迎えて

満田和久 JAXA宇宙科学研究本部 高エネルギー天文学研究系「すざく」プロジェクトマネージャー

 X線天文衛星「すざく」は、M-Vロケット6号機により、2005年7月10日に打ち上げられました。大変残念なことに打上げ後の初期運用中に観測装置の一つが機能停止する問題が発生しましたが、残る二つの観測装置は予定通り、あるいはそれ以上の性能を発揮しており、平均1日1天体の割合で現在も観測を続けています。これらの観測は、厳しい審査を勝ち抜いた世界の科学者からの観測提案に基づいて行われます。観測提案者には1年間データを占有して解析する権利がありますが、これを過ぎた観測データは世界の誰もが利用できるように順次公開されています。「すざく」は、太陽系内のX線放射から100億光年遠方の大質量ブラックホールに至るまで、いろいろな階層の天体の観測を行っており、さまざまな宇宙の姿を明らかにしつつあります。
「すざく」による科学的成果としては、2年連続で出版された『日本天文学会欧文研究報告(PASJ)』の「すざく」特集号掲載の論文など、すでに100を超える学術論文が発表されています。また、2006年12月に京都、2007年12月に米国サンディエゴで開かれた「すざく」の国際会議では、それぞれ300人および200人を超える参加者があり、どちらも日本からと海外からの参加がほぼ同数でした。  今回の『ISASニュース』特集号では、科学的成果の一部を紹介します。特集の後半では、観測を実現するためのユニークな技術も併せて紹介しています。「すざく」には、ほかの衛星では見られないアイデア、研究者自身の手づくりの部分がいくつもあります。この特集号では前半も後半も、実際にその現場で手を動かした若手研究者を中心に執筆を依頼しました。宇宙の謎を探るために研究開発の最前線で活躍する、研究者の息吹も感じていただけるのではないでしょうか。
「すざく」は、その前身のASTRO-E衛星以来の長年の積み重ねの結果、実現され、今、大きな観測成果が得られようとしています。この場をお借りして、あらためて宇宙航空研究開発機構(JAXA)内外の関係者の皆さまのご尽力、ご協力、ご支援に深く感謝致します。

(みつだ・かずひさ)