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特集

宇宙天気予報から見た「ひので」

坂尾太郎・清水敏文 JAXA宇宙科学研究本部 宇宙科学共通基礎研究系 准教授

 先進的な宇宙科学技術の開発と広範な国際協力などにより実現した「ひので」が観測を開始してから1年数ヶ月がたった。初期定常観測から新たな発見や知見が次から次に得られ、2007年度だけで約87編の査読付き学術論文が刊行された。中でも、宇宙科学分野にとどまらない大きなインパクトをもつ、世界的に定評のある学術雑誌『Science』が2007年12月8日号で「ひので」特集を組み、9編の論文を掲載した。表紙も「ひので」が撮影した軟X線太陽像で、「はやぶさ」特集以来の快挙である。「ひので」は世界に開かれた軌道上太陽天文台として科学運用を実施し、得られる画像・動画は世界中の研究者から、さらには一般からも、極めて高く注目されている。打上げからほどなく急逝された前プロジェクトマネージャー小杉健郎先生も天国から「ひので」の大活躍を喜んでいると思う。今回『ISASニュース』で特集号を組み、初期成果のごく一部を紹介したが、紹介した研究内容にとどまらず、太陽物理学の幅広い研究対象においてさまざまな研究が行われており、新たな進展が期待されている。また、従来の研究の枠を超えた広範な研究分野との新しいつながりも、「ひので」の動画がもつインパクトによって生まれつつある。
 現在、太陽は最も活動度が低い時期にあり、“静かな”太陽の観測に時間を割いている。2008年1月初旬には次の太陽活動サイクルの始まりを告げる活動領域(黒点)が出現し、「ひので」は今後、上昇を始める太陽活動に注目した観測を行うフェーズに入る。昨年末以降、観測データ伝送に使用しているXバンド信号が不安定となる現象が発生しているが、今後とも優れた観測を可能とする科学観測運用が行えるように、現在、受信や科学運用方法の効率化などの対策を進めている。今後とも「ひので」による科学成果に期待していただければと思う。また、「ひので」にかかわったすべての皆さんに感謝するとともに、今後も一層のご支援をお願いしたい。 

(さかお・たろう、しみず・としふみ)