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特集

HOP搭載・超広視野カメラ

 宇宙,銀河とその大規模構造,星,そして惑星系。これらの形成と進化を余すところなく調べ上げるには,宇宙の広い領域を観測する必要があります。銀河の形成と進化を知るには,宇宙の大規模構造を一望に収めることのできる大きな視野が必要であり,ダークエネルギー ※1 の解明のためには遠方の超新星を効率よく発見できる広視野が必須です。また,弱い重力レンズ効果を利用してのダークマター ※2 の観測や,トランジット法による地球型惑星の探査でも,広視野観測の重要性は広く認識されています。

 これを実現するのが,米国で検討中のハッブル宇宙望遠鏡の後継機Hubble Origins Probe(HOP)に搭載される超広視野カメラ(Very Wide Field Imager;VWFI)です(図1,図2)。このカメラはハッブル望遠鏡と同じ0.1秒角の高解像力で,焦点面に59個のCCDを敷き詰めることにより,宇宙望遠鏡始まって以来の超広視野(ハッブルの約18倍に相当する198平方分角の広視野で,月の約3分の1の大きさをカバー)で観測を行います。



図1
図1 HOP衛星外観


図2
図2 HOP衛星の焦点面検出器部


 超広視野カメラは,日本の独自技術により開発されます。視野の中心以外で画質を悪くする収差を補正し回折限界に近い結像性能を実現するプリズム補正光学系,赤方偏移 ※3 した銀河の観測に最適な赤波長でハッブルの約6倍高い感度を実現する完全空乏型CCD,「すばる」望遠鏡で実績のある超広視野モザイクCCDカメラの技術です。超広視野カメラにより,これまでにない「広視野・高解像度・高感度」観測を実現し,現在ハッブル望遠鏡で得られている最も深いHubble Ultra Deep Field観測(人類の見た最も遠い宇宙)を超えるフロンティアで,前人未踏の広域観測を遂行することができます。HOP超広視野カメラが天文学に画期的なブレークスルーをもたらすことは,間違いありません。


(常田佐久[国立天文台],HOP検討グループ)


※1  ダークエネルギー:斥力となる負の重力源で,宇宙のエネルギー密度の70%を占める。
※2  ダークマター:銀河や銀河間物質など通常の物質でない質量で,宇宙の全質量の90%を占める。
※3  赤方偏移:ドップラー効果により光のスペクトルが赤い方へずれること。宇宙が膨張していることは,遠い銀河が赤方偏移していることから発見された。


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