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特集

月面望遠鏡による月の回転変動の観測計画ILOM

 月の内部構造を通して起源と進化を理解する上で,コアの主成分が鉄か岩石か,融けているか否かは,本質的な情報です。これらの情報は,数ミリ秒角程度の月の回転のわずかな変動に現れます。これを観測するためには,従来の地球からのレーザを用いた月面までの距離測定(月レーザ測距;LLR)によって得られる月の回転の情報(約10ミリ秒角)より1桁以上精度を高める必要があります。

 月面から星の方向を望遠鏡で観測することによって,月の自転軸の方向が分かります。口径20cm,焦点距離2mの望遠鏡で星の位置を観測し,焦点面で10nm(CCDの1ピクセルの約1/1000)以下の精度で星像中心位置を読み取ると,1ミリ秒角が達成できます。これをLLRと組み合わせることによって,月までの距離の変化と月の回転の両方の影響が分離され,それぞれの精度が向上します。

 口径20cmの望遠鏡で観測できる星の等級はmV=14.3以下となり,1°×1°の視野内に約440個あります。観測限界等級は口径,積分時間などによるので,同じ限界等級を保ちながら口径をさらに小さくできる可能性があり,小型化を検討中です。月面に小型望遠鏡を設置することにより,月回転に関する未解決の重要な問題を解決することができるとともに,銀河系の構造を明らかにする画期的な高精度の位置天文観測にも道を開くことができます。



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図 月面望遠鏡の想像図


(ILOMグループ)
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