概要:  私はこれまで、宇宙科学データの可視化・可聴化に取り組んで参りました。そ の一つにはアウトリーチの観点があります。  宇宙科学研究所が取得し、保存している宇宙科学データは、関係するコミュニ ティや研究者にとっては宝の山であり、世界中で広く利用されているところです。 一方で、一般の方々の視点で考えますと、殆ど目に触れることの無いデータが沢 山眠っているのが現状です。  プラネタリウム番組等で様々な波長の星空を投影する機会があるのだけど、日 本のデータが手に入らないんです、と言われたことがあります。外国のX線天文 の写真はとても奇麗なのに、日本のは……、と言われたことがあります。特別公開 の景品に、宇宙科学データのグラフを渡して、がっかりされたことがあります。 研究者にとってはとても価値のある科学データが一般の方には認識されていない という惨劇が、あちらこちらで起きているようです。  このような宇宙科学データを、一般の方々にとってもお宝に変えるためには、 どうすれば良いかと申しますと、研究者向けとは異なるアプローチで付加価値を 付けることが肝要ではないかと考えられます。私は映像や音で表現することが、 そのアプローチの一つとして有効であろうと考えまして、これまで科学データの 可視化・可聴化に取り組んで参りました。  データをそのまま可視化・可聴化できるものも多いのですが、一方で、どう見 せたら良いか難儀するデータもあります。「はやぶさ」の最初のタッチダウンの 可視化は、その一例です。制作当初は公開データに基づいて淡々と「はやぶさ」 の軌跡を可視化していたのですが、「はやぶさ」がイトカワに接近すればするほ ど、どのように表現すれば良いのかと、試行錯誤の連続となりました。そのよう な観点で、「はやぶさ」が行き着いた先を追い求める、聖地巡礼のお話をさせて 頂きます。  さて「はやぶさ」の軌跡の可視化は、アウトリーチの他にも、実は記録映像と しての役割や、今後のミッションへの寄与等も想定して始めたものでした。間も なく亀の背中に乗ろうとしている「はやぶさ2」関連でも、これまでのノウハウ を生かして、可視化の面でお手伝いさせて頂こうと画策しているところです。  その他に、「れいめい」のハイライト画像ピックアップ等、冒頭にご紹介しま した惨劇への私なりの回答、間近に迫りました「はやぶさ2」の地球スィングバ イ、「あかつき」の金星軌道投入の映像等、時間の許す範囲でご紹介して参ります。  とは言え、私が一人で探検できる範囲は限られています。お手元の科学データ に付加価値を付けてみようかと、そのような事にご興味をお持ちの方がいらっ しゃいましたら、お声がけ頂ければ幸いです。