将来の月・惑星探査においては、探査船の着陸、探査ローバの走行、穿孔・掘削など、 表層土を対象としたオペレーションが見込まれます。 このようなオペレーションの技術的ネックポイントの一つに、 機械−土系の接触・摩擦・変形現象の把握が挙げられます。 これは、「レゴリスの特性」、「軟弱表層」、「低重力」、「高真空」などに代表されるよう、 月・惑星表面は地上とは異なる環境下に置かれており、これらの影響をどのように予測・評価するのかが、 機器の作業性能に大きく係るためです。 他方、接触・摩擦・変形現象に代表される大地と機械の相互作用を取り扱う学術分野を テラメカニクス(terramechanics)と称します。テラメカニクスは1960年代にその基礎が確立され、 数値解析技術や実験解析技術の発展とともに、軍事車両、農業機械、建設機械、 極限環境用ロボットなどの幅広い分野に応用され、現在では月・惑星探査機器の開発/運用においても 欠かせない基盤技術となっています。例えば、JPLでは、Curiosityの火星風紋の走破性に関して、 今現在も検討が進められています。 以上の背景の下、本談話会では、テラメカニクスに係る解析技術について話題提供を行います。 特に、Empirical methods、Computational methods (FEA, DEM)、Parametric methods (Bekker-Wong-Reece理論)について、 その理論的背景と解析事例について説明します。