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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第503号

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ISASメールマガジン   第503号       【 発行日− 14.05.13 】
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★こんにちは、山本です。

 GWも過ぎて、アメリカハナミズキがあっという間に終わってしまい、今はアチコチでツツジ(サツキも?)が満開です。相模原キャンパスのサツキは、まだなのか? それとも今年はあまり咲かないのか、目立ちません。

 先週までは休暇を取る人が多かったのか静かだった廊下も、今週はいつもの様相に戻っています。

 気候も良くなった事ですし、仕事に励みましょう。

 今週は、宇宙機応用工学研究系の坂東信尚(ばんどう・のぶたか)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:今年もGWの季節になりました。
☆02:相模原キャンパス特別公開2014
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★01:今年もGWの季節になりました。

 宇宙研で気球実験を担当する者にとっては、5月の実験のためにどうやりくりして全ての試験を終わらせるか、カレンダーとにらめっこする日々もまた始まりました。


 宇宙研での気球実験活動については過去のISASメールマガジンや下記の関連記事にまとめられていますのでここでは詳細は割愛しますが、宇宙研では5月と8月の年に2回、ジェット気流よりもさらに上空の風が気球実験に適した時期に高高度気球を用いて様々な科学観測や実証実験が行われています。
http://www.isas.jaxa.jp/j/enterp/ball/relate.shtml


 宇宙研に入所してから数年間、この気球を使った無重力実験装置を作ってきました。今年はさらに大型の無重力実験を行うための改良を加えて気球実験にのぞみます。


 そもそも無重力とはなんなのでしょうか?
ウィキペディアを見ると、
無重量状態とは、万有引力および遠心力などの慣性力が互いに打ち消しあい、それらの合力が0ないしは0とみなしうる程度に小さくなっている状態。
とあります。

なんだか慣性力という馴染みのない言葉で煙に巻かれたような気がするのは私だけでしょうか。


 無重力実験をしている私にとって、無重力の定義は、物体間で垂直抗力が発生しない状態という方がしっくりきます。私のイメージでは、物体を構成する粒々が何かの力で引っ張られていたとしても、それぞれが同じように加速されているのでお互いにはぶつかり合わないようなもん。と思うのですが、文章で表現してみるとなんだかよく伝わらないですね。スミマセン。


 嫌な例えですが、エレベータに乗っていてロープが切れてエレベータと一緒に落ちてしまう時には、同じ重力の力で下向きに引っ張られているので、垂直抗力がなく無重力状態になっている、と考えるのは理解しやすいかなと思います。

話がだいぶ逸れてしまいました。


 私たちが作っている実験装置の話をしましょう。エレベータの話をしましたが、私たちの無重力実験装置も基本的には同じ原理で高いところから落として無重力状態を作ります。

一つだけ違うのは、実験装置が2重構造になっていて、外側を内側と当たらないようにスラスタで(空気を噴射して)制御するということです。


 実際に物を高いところから落とすと、はじめは速度が小さいのですが、速度が大きくなるにつれて空気の抵抗が大きくなります。この空気抵抗により物体は重力以外の力を受けてしまうので、空気抵抗を受ける場所と受けない場所で力の差が出来てしまい、垂直抗力が発生して無重力でなくなってしまいます。


 この影響を無くすために、先ほどお話したように容器を2重構造にして内側の容器に空気抵抗の影響が出ないように外側の容器に付けたスラスタを制御して、下向きの力を増やしてあげます。

これによって、内側の容器は理想的に自由落下することができ、無重力状態を作ることができるのです。車の中では空気抵抗を感じないのと同じですね。


 無重力実験の原理を紹介しようと思ったのが、思ったより長文駄文になってしまい失礼しました。それでは皆さんに良い報告ができるよう、事前試験にいそしもうと思います。

(坂東信尚、ばんどう・のぶたか)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※