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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第493号

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ISASメールマガジン   第493号       【 発行日− 14.03.04 】
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★こんにちは、山本です。

 雪がとけて通勤路で「河津桜」が咲いているのに気がつきました。
梅の花も咲き出しました。

 相模原キャンパスの「ソメイヨシノ」もつぼみが膨らんできました。
もうすぐ春ですねぇ〜

なんて 浮かれていると、解け残った雪や 雨で濡れたタイルに足をとられて転んだりして……

 今週は、太陽系科学研究系の渡邉恭子(わたなべ・きょうこ)さんです。

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★01:太陽さん、お元気ですか?
☆02:まちだ・さがみはら 絆・創・光(ばん・そう・こう)
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★01:太陽さん、お元気ですか?

 私は宇宙研で太陽観測衛星「ひので」を使って太陽の研究をしています。「ひので」は最後のM-Vロケット7号機で2006年9月に内之浦から打ち上げられた衛星で、もう7年半程も運用しています。

前太陽観測ミッションの「ようこう」は10年以上太陽の観測を行いましたので、ぜひ「ひので」にも長生きしてもらって、11年の太陽活動周期より長く観測を続けてもらいたいと思っています。


 ところで、上にも書きましたが、太陽には約11年の活動周期があり、この間に太陽は活動的になったり穏やかになったりします。

太陽が活動的な時には、太陽の表面にたくさんの黒点が見られるようになり、「太陽フレア」という突発的な爆発現象が数多く発生します。

穏やかな時には、この黒点が見られなくなり、のっぺらぼうみたいになります。

私の研究は太陽の現象のなかでも「太陽フレア」を対象にしているので、私の研究活動期も太陽活動期と同期していたりします…太陽活動極小期に研究をしないということではありませんが。


 実は現在、太陽は活動の極大期にあります。さぞかしたくさんのフレアが発生して、「ひので」も数多くのフレアを観測できているかと思いきや…残念ながらそうでもありません。

今回の太陽活動期はそんなに活発でないのです。「太陽に元気がない」、「太陽に異変が!」などといったセンセーショナルな報道もありましたので、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?

こちらの詳しい内容やその原因についてはいろいろな雑誌での特集や報道などもありますので、詳しくはそちらをご参照ください。
例えば、現宇宙研所長・常田先生の記事:
http://www.isas.jaxa.jp/j/forefront/2010/tsuneta/index.shtml


 太陽フレアの規模は軟X線の強度でクラス分けされており、Xクラスが最大規模で、その強度が1桁下がる毎にM・C・B・Aとなっています。

前回(11年程前)の太陽活動極大期の頃は、私は名古屋大学の大学院生で、太陽中性子(太陽フレア現象中で加速されたイオンが起源で、地上の検出器で観測されるもの)の研究を行っていたのですが、Xクラスのフレ アが数多く発生し、その度に世界中のフレアデータを集めては、地上で中性子の信号が見えただの、衛星データもうまく取れていただのと言って騒いでいました。

それも、大きなフレアは連続して起こるものですから、解析が間に合わない程だったのを覚えています。それに比べると、今太陽活動期は黒点の数もフレアの数も少なく、フレアが起こっても規模が小さい傾向があります。

実際のところ、前太陽活動期には(約11年間で)100例以上観測されたXクラスフレアが、今太陽活動期では、まだ(6〜7年程の間に)30例も観測されておらず、また前太陽活動期には6例あった太陽中性子イベントも、今太陽活動期にはまだ一度も地上で観測されていません。


 太陽活動はこのような寂しい状態ではありますが、「ひので」はその数少ない太陽フレアを観測するために、いろいろと工夫して観測を行っています。まずは「ひので」がどのように運用を行っているかについては、坂尾さんの記事をご参照頂ければと思います。
http://www.isas.jaxa.jp/j/mailmaga/backnumber/2009/back242.shtml


 「ひので」に搭載されている観測機器の中で一番視野が小さいのは「可視光・磁場望遠鏡(SOT)」で、一番大きな観測視野でも大きめの黒点が1つ入る程度の視野しかありません。たくさんの黒点が発生する極大期においては、全ての黒点の観測はできませんので、どの黒点が一番フレアを起こしそうか見極めなくてはなりません。

これは「ひので」各機器の観測当番の仕事です。そして、その黒点観測中にフレアが発生した場合は、「ひので」は観測モードを自動的にフレア観測モードに移行し、短時間に大量のデータを取得します。


 しかし、このような工夫をしていても、「ひので」で観測できない太陽フレアもあり、観測できているフレアは全発生フレアの約半数、大きなフレアでも6〜7割といったところです。

今太陽活動期は発生フレア数自体が少ないので、せっかく大きなフレアが発生したのに「ひので」で観測できなかった時は本当にがっかりします。

一方、観測できただけでなく、「ひので」全搭載機器で良いフレアデータが取れた時は、大喜びですぐに解析をします。「ひので」のデータはすぐに世界中に公開されるので、早い者勝ちなのです。


 太陽フレアはなかなかあがらないけれど、私自身は家で子供に対して何度もフレアをあげてしまっています。こちらはあまり喜ばしいことではないですけどね…。
(お母さんはいつもおだやかな太陽でいたいのですよ…本当は。)

(渡邉恭子、わたなべ・きょうこ)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※