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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第492号

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ISASメールマガジン   第492号       【 発行日− 14.02.25 】
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★こんにちは、山本です。

 2月になってから 毎週【雪の話題】になっていますが、相模原キャンパスの駐車場は、まだ雪が残っていて多くの駐車スペースの駐車ラインが隠れてしまっています。

 見学を予定されている方は、公共交通機関をご利用ください。

 今週は、前ISASニュース編集委員長の村上 浩(むらかみ・ひろし)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:トトロと去年の事ども、宇宙のあれこれ
☆02:宇宙科学講演と映画の会【新宿区四谷区民ホール】4月12日(土)
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★01:トトロと去年の事ども、宇宙のあれこれ

 もう去年(2013年)のことになってしまいましたが、宮崎駿監督が長編アニメ映画からの卒業を宣言されましたね。私も1年半前にJAXAを退職させてもらった身として、宮崎監督は何を感じ、何を考えたのかな、など勝手に想像させてもらったりしました。

まあそれはさておき、JAXAで働いている人たちの中にも宮崎アニメファンは大変多いと思います。宮崎監督の飛行機械への思い入れは、航空機はもちろん、ロケット・人工衛星の開発をやっている人たちの心情と共通します。いくつかのアニメに見られる少年・少女の成長潭も、夢を描いていた自身の子供時代、青年時代と重ねてみて、皆さん好きなのではないでしょうか。

宮崎作品ににじみ出ている自然との共生への思いも、共感できる部分が多いですね。王蟲やトトロ、シシ神のような、もののけ、あるいは原始宗教的な神々も、地球の自然への畏敬、愛しさを表すものとして、私も大好きです。

脳の中で、科学研究や開発に使うのとは別の場所で、このような存在を受け入れている気がします。ただしこのようなあまりに人間的な物の怪たちは、地球の環境以外にも住めるのでしょうか?

人類で初めて宇宙を飛んだユーリ・ガガーリンは、宇宙に神はいなかったと言ったそうですが、まあこれは宗教を否定していた旧ソ連での話ですので、ちょっと脇においておくことにしましょう。


 さてこれも去年のことになりますが、日本からも程近い太平洋の底にある山塊が実は単一の火山で、太陽系最大といわれる火星のオリンポス山にも匹敵する規模である事がわかった、という報告がありました。

深い海の底や荒涼とした火星にそびえる、数百kmにもわたる山体を持つ火山にも物の怪や神様が住んでいると思いますか?

トトロはいないような気がしますね。でも、ちょっと恐ろしげな神様や物の怪なら住んでいるかも。そういえば、オリンポス山という名前は、ギリシャ神話の神々が住んでいた山の名前ですね。

太陽系には地球・火星の他にも多くの惑星や衛星がありますが、そこにも物の怪や神々が住んでいるでしょうか。最近では太陽以外の星の周りにも、何千もの惑星が見つかってきています。このような惑星にもし知的生命が誕生していたとしたら、その生命体にとっての神様や物の怪がいるのでしょうか。


 またまた去年のことになりますが、スイスにある欧州原子核研究機構から、万物に質 量を与えるもとになったヒッグス粒子の発見が確定的になった、との発表がありました。これで素粒子の世界を記述する標準モデルの役者がでそろいました。

「真空の相転移」による力(核力や電磁相互作用など)の分化や急激な宇宙膨張、それに続く火の玉宇宙(ビッグバン)の出現というストーリーが、ますますもっともらしくなってきました。

137億年前に起きたこんな激しい現象の後、宇宙が冷えていくのに従って星が生まれ、銀河も生まれました。私たちの太陽、そして地球も46億年前に天の川銀河系の中で生まれたわけですが、今後60億年ほどすると太陽は膨らんで赤色巨星に進化し、地球も飲み込まれて消滅します。

天の川銀河系にも、数十億年後にアンドロメダ銀河との衝突・合体という、なんとも激烈な経験をするとの予想もあります。

今から100億年くらい後に、私たちの宇宙はどのような変貌を遂げているのでしょうか。このようなある意味冷酷な宇宙の大きな流れは、時間や空間のスケールが人間の感覚からかけ離れたものであることもあって、私たちの物の怪や神々が支配する世界からは完全にはみ出してしまっているように感じられます。

西洋の一神教の神様なら、こんな宇宙ともしっくりくるのでしょうか。
あるいはお釈迦様なら微笑みながら見守ってくれるでしょうか。


もっとも私たちがこんなことを気にする必要はないのでしょう。100億年とはいわず、たった100万年後を思ってみても、人類の跡を継ぐ生物がどのような姿で、どのような精神性を持っているのか、そしてどんな物の怪や神々がいるのかすら想像もつかないのですから。

私たちはとにかく、この美しい地球を守って生きていく事に専念することにいたしましょう。

(村上 浩、むらかみ・ひろし)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※