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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第483号

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ISASメールマガジン   第483号       【 発行日− 13.12.24 】
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★こんにちは、山本です。

 今年も後1週間になりました。

そういえば今日は、クリスマスイブです。
毎年 通勤の帰り道にイルミネーションを頑張っている家を見かけていたのですが、今年は気がつきませんでした。

 今週は、宇宙飛翔工学研究系・イプシロンロケットプロジェクトチームの羽生宏人(はぶ・ひろと)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:研究者のグラフィックデザイン
☆02:惑星分光観測衛星「ひさき」搭載の次世代電源系要素技術実証システム
   (NESSIE)の状況について
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★01:研究者のグラフィックデザイン

 師走となり忘年会シーズンに突入すると、今年は何をしたかなとか去年の今頃は何をしていただろうなどと皆さんも1年を振り返っていらっしゃるのではないかと思います。


 ちょうど去年の今頃(2012年12月初旬)は、イプシロンロケットのマーキングデザイン依頼を安請け合いしてしまったことに後悔しながらも、引き受けた以上は前向きに考えようとせっせとイメージ作りを進めていました。


 ロケットのグラッフィックデザインを考えるにあたっては、正直なところ何か参考になるものはないものかとすがる思いもありました。

何しろ考え方となる基礎が世の中に全くありません。世界中のロケットを調べたところで何かヒントになるわけでもなく、むしろ引きずられて独自色が失せる恐れもあったので、最初から何も見ない姿勢を貫きました。

とにかくまず手始めにいろいろと絵を描いてみました。しかしそう簡単に満足するものが描けるわけではありません。そのうち絵を描くことに疲れてしまい、瞑想の世界に入っていきました。こうなってくると、頭の中でイメージを作るしかなかったのです。


 内之浦のM台地はこんな雰囲気、とか、整備塔から機体が出てくるイメージはこんな感じ、などと自分が持っている内之浦のイメージをあれこれ引っ張り出して射点イメージを作り上げていきました。

実際、M台地に立つと、遠くに見える山の緑は深く、ランチャの若干サーモンピンクに近い赤は背後が緑で補色になるため際立ちます。このような周辺イメージに加え、青空の下に白い機体がランチャに寄り添って立った感じになるはずです。

デザイン作りではこんな様子を頭の中に日々描いていました。デザインを決める上で制約になっていたのは、色を入れる範囲が第1段ロケットの部分のみということだけでした。


 当初は色とか形だけにとらわれていたのですが、デザインにメッセージ性がないと面白くないなと思い始めました。ただ線が書いてあっても意味がないというわけです。そこで、このロケットはどんなロケットなのか、ということを考えてみました。


固体燃料ロケットは半世紀以上の開発の歴史がある。
大勢の人が関わってここまで来たはずだ。
しかし、単なる積み上げで出来上がったものじゃない。
改良や進歩があって今の姿になったはず。
将来はどうか。
宇宙研の研究者が面白いミッションを計画して、将来きっと何かやらかすはずだ。
それを実現する基盤として存在するのがイプシロンだ。


 そんなことを考えながらイメージを固めていきました。

1月下旬、最初のデザインを関係者に内々に公開。いろんな意見をいただきましたが、当初からあまり変わることなく内部では了解が得られました。やはりデザインが示すメッセージ性を理解してもらえたことが大きかったと思います。

デザインも固まり、ロケットのイメージが定着してきたころ、今年のグッドデザイン賞選考に応募するとの話が飛び込んできました。

その頃はイプシロンの前に予定されていた観測ロケット2機(S-310-42号機とS-520-27号機)の打上げ準備でてんてこ舞いでして、関係した皆様には申し訳なかったのですが、応募についてはお任せ状態でした。

そしてイプシロンロケットの打上げが成功裏に終わり、少し慌ただしさが少し落ち着いてきた9月末日に「グッドデザイン賞ベスト100」に入ったとのお知らせが内々に届きました。

その後特別賞の金賞にも選ばれました。グラフィックデザインが評価されたわけではありませんが、大変うれしく思っています。


 12月8日に執り行われました2013年度のグッドデザイン特別賞受賞式では、他のどの製品よりも目立った「くまモン」が会場の注目を集めていたことは出席者しか知らない事実です。

(羽生宏人、はぶ・ひろと)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※