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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第460号

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ISASメールマガジン   第460号       【 発行日− 13.07.16 】
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★こんにちは、山本です。

相模原キャンパス特別公開では、今年も【手話案内ツアー】の参加者を募集しています。(対象は、聴覚障がいを持っている方です。)

締め切りは、本日16日(火)です。
希望者は 忘れず申込みをお願いします。

「はやぶさ2」のキャンペーンは8月9日(金)が締め切りです。(編注:期間延長につき修正しました)
まだの方は、やっぱり慌てず急いで応募しましょう。

 今週は、観測ロケット実験室・イプシロンプロジェクトチーム・鹿児島宇宙センター内之浦宇宙空間観測所の荒川 聡(あらかわ・さとし)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:内之浦は大変なことになっている
☆02:2013年度第一次観測ロケット実験(7月20日予定)
☆03:相模原キャンパス特別公開(7月26日〜27日)
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★01:内之浦は大変なことになっている

 表題の「内之浦は大変なことになっている。」というのは、もちろんイプシロンロケットや惑星分光観測衛星:SPRINT-Aがついに打上げ現場である内之浦宇宙空間観測所(USC)に搬入され各種の作業が始まっているからです。しかもただ始まったというだけではなく、いくつかの要因によってこれまでになく「大変なことになっている」ので、その要因を探ってみます。


1.7年ぶりの衛星打上げである。

 久しぶりの打上げということで設備の老朽化などいろいろな影響はありますが、最も大きいと思われるのは7年の間に多くのベテランが引退をしてしまったことではないでしょうか。

「ロケット打上げ」というものをよくご存じのベテランの知識や現場力は若手のそれとはやはり格が違います。普段の作業はもちろんですが、特にすぐに「紙」に表現できないような気配りが必要なときや調整事項が出るとベテラン勢の偉大さを感じます。しかしながらベテランの不在を嘆いてばかりもいられないので、若手はベテランの何倍も頑張る機会を与えてもらったと意気に感じるべきなのでしょう。(勝手に若手目線ですが。)

またこの7年という月日は、打上げ関係の作業そのものだけではなく、内之浦の宿事情にも影響を与えています。これまでM-Vロケットの運用があるので何とか営業を続けていただいていた宿のいくつかは営業をやめてしまったところもあり、関係者全員を内之浦に収容することは難しくなっています。それでも何とかやりくりをしていただいていますが。


2.JAXAのロケットである。(当たり前?)

 JAXA統合時に既にM-Vロケットの運用が確立していて「ISASのロケット」としての慣性が強く働いたためか、統合後の6号機以降もM-Vロケットは比較的ISASの体制に近い形で打上げ運用を行ってきました。

一方で種子島から打ち上げているH系のロケットに関しては旧NASDA(宇宙開発事業団)の慣性が同様に働いているように思います。


JAXAが統合しておよそ10年となりますが、今回のイプシロンロケットは異なる背景を持つ組織による初めて?の「JAXA」としての打上げになります。(このあたりは一応、個人的な感想である旨申し添えておきます。)


イプシロンではこれまで以上により良い形での打上げ体制を目指していますが、初めてというのは何でも大変なもので、異文化交流的な難しさを感じることも時折あります。しかしながら「JAXA」としてのイプシロンの打上げが各組織の互いの理解をより促進させるとともに、打上げの成功をもって大きな自信を得ることができるのではないかと思っています。


3.打上げ機数が多い。

 この夏、種子島を含む鹿児島宇宙センターから打上げられるのは4機のロケットです。もしかするとイプシロンとH-IIBの2機の間違いじゃないのか?と思っている方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。

イプシロンやH-IIBの打上げに先駆けて、観測ロケット(しかも2機)の打上げが7月20日に予定されています。この観測ロケットのUSCでの作業も7月8日にスタートしています。

というわけでUSC場内は、イプシロン関係の人、SPRINT-A関係の人、観測ロケット関係の人、普段からUSCにいる人。と場内はごった返しています。(ちなみに私は、観測ロケット関係者でもあり、イプシロン関係者でもあり、USCに普段からいる人でもあります。)


ここでごくごく簡単ですが、それぞれのロケットの現状を紹介しておきます。

イプシロンロケットは各種の機体のほぼすべてがUSCに搬入済みで、各段の組立て作業を終えています。現在は電気的な点検作業を入念に進めており、この点検作業を終えると、いよいよお客さんであるSPRINT-Aをロケットに載せる作業へと進んでいきます。

観測ロケットはUSCでの作業を開始したところです。今回の打上げは2機の同日打上げなので、機体の準備も2機分です。2機のロケットはすでにUSC場内に搬入されており(まだいくつかの部品に分かれていますが。)、これから7月20日の打上げに向けて順次組立等の作業を進めていきます。


ざっと、内之浦が大変なことになっている理由を挙げてみました。それぞれみんなが大変ですが、皆で協力して何とか前に進んでいます。
秋には笑顔で「いやー夏は大変だったねぇ。」といえるように何とか頑張っていきたいです。

(荒川 聡、あらかわ・さとし)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※