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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第454号

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ISASメールマガジン   第454号       【 発行日− 13.06.04 】
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★こんにちは、山本です。

 相模原キャンパスの隣にある相模原市立博物館で、6月1日からプラネタリウム新番組『はやぶさ2の挑戦〜新たなる小惑星探査へ〜』が始まっています。
(相模原市立博物館プラネタリウムのページ
 ⇒ 新しいウィンドウが開きます http://www.remus.dti.ne.jp/~sagami/30-03tenjiannai-plazenten.htm

 6月13日(木)の「はやぶさの日」には 無料上映されます。
当日整理券が配布されますので、詳しくはWebページで確認してください。


 5月31日〜6月12日(水)まで、ISAS展示室のASTRO-H、SPRINT-A、MMO、MOON SCOPEが、名古屋市科学館で展示の為、出張します。

 今週は、宇宙機応用工学研究系の三田 信(みた・まこと)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:研究者日月抄
☆02:JAXAの歩き方〜公開データのウェブサイトカタログ〜
☆03:宇宙学校・かのや【リナシティかのや】7月14日(土)
☆04:2013年度第一次気球実験大気球実験 BS13-04 終了
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★01:研究者日月抄

 多くの事でも言えることかも知れないが、研究に関してもその人の性格が良くでるようだ。筆者の専門であるMEMS(マイクロマシン)でもそんな感じがする。

MEMSというのは「Micro Electro Mechanical Systems」の略で簡単に言ってしまえば「とても小さな機械」だ。

文字通りマイクロメータ(1mmの千分の1)の大きさなものもある。加工精度で言えばナノメータレベル(1mmの100万分の1)にも及ぶ。


 我々は他にないオリジナルなMEMSデバイスを開発するため、企業に頼らず自分たちで新しいデバイスを作製、研究している。作るデバイスによって違うが、簡単なものでも十数ステップ、多いものでは数十ステップを経て一つのデバイスが出来上がる。

それぞれのステップでの成否が後々できるデバイスの「出来」に影響してくるので、自分の手で作っているのもあってか、まるで一つの芸術作品のよう でもある。

そして、一度の試作で望む通りのデバイスができるわけではないので、何度も作っては設計し直し、また作っては改良するという感じで、手を動かして いるせいもあり、職人の世界に近いかもしれないと思うことがある。


 そうなってくるとやはり、その作製されたデバイスを見ると作った人の人となりが見えてくるように思える。丁寧な仕事をする人が作ったデバイスは丁寧な感じがするし、神経質な人のデバイス神経質な感じがする。

そんな感じで出来上がったデバイスを眺めながら
「○○くんはまじめだなあ」とか
「△△くんはおっちょこちょいだなあ」とかと思いを巡らしてしまう。

MEMSデバイスはとても小さいので顕微鏡で観察する必要がある。顕微鏡ですみずみを見ながら、きれいにできたデバイスだったりすると、つい某鑑定番組の有名な鑑定家よろしく「いい仕事してますね」とつぶやいてしまうのである。


 じゃあ、偉そうに書いている筆者はどうなのかとなると「雑」の一言であろう。そしてそれは筆者自身の人間性にも当てはまる。悪く言えば手抜き、良く言えば効率的。それも構想、設計段階から手を抜くことを考えているあたりは筋金入りの「なまけもの」だったりする。同じ機能を持つデバイスならより簡単に作れるように最初から注力するのだ。

立場上、後輩や学生さんなどにデバイスの作製方法を教えなくてはならないのだが、「雑」な筆者のマネをしてもらっては困ってしまうのである。

そんなものだから、一々
「本当はこんなことしない方が良いのだけれど」とか
「こうした方が良いけど今は手間だから」とか
言い訳をしながら教えるハメになっている。


 それでも亀の甲より年の功とは良く言ったもので、筆者のような「テキトーな」人物が作ったデバイスでも素人は騙せる。

初めてデバイスを作る人に同じデバイスを作らせて比べさせると、当たり前かも知れないが筆者の方が良くできている。そして、後輩や学生は「こんなテキトーな人が作ったデバイスなのに自分が作ったものより良くできている」と驚き、素直に教えを乞うようになるのである。

でもそんな時期もあっという間に過ぎ、卒業するころになると筆者よりも上手にデバイスを作るようになってくる。

そして、今日もまた後輩や学生のデバイスを覗き込みながら
「いい仕事してますね」
と心の中でほくそ笑むのだった。

(三田 信、みた・まこと)


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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※