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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第366号

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ISASメールマガジン   第366号       【 発行日− 11.09.27 】
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★こんにちは、山本です。

 日本列島に 被害の爪痕を残した台風15号、皆さんがお住まいの地域は大丈夫だったでしょうか?

 相模原キャンパスでは、数カ所雨漏りがあったと聞いています。

 話は変わりますが、今週末から「はやぶさ」映画の第1弾「はやぶさ/HAYABUSA」が上映されます。(TVでも予告編が流れています。)

 登場人物のモデルとなった本人を知っているので、映画館で感動的に見ることができるのか心配です。

 今週は、観測ロケット実験室(内之浦宇宙空間観測所 勤務)の 荒川 聡(あらかわ・さとし)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:内之浦へいこう!
☆02:ブラックホール周辺から吹き出すジェットの不規則変動をとらえた
☆03:「ガンマ線バースト」は強磁場ジェットからの放射だった
☆04:内之浦宇宙空間観測所 特別公開(10月30日(日))
☆05:「はやぶさ」カプセル等の展示スケジュール
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★01:内之浦へいこう!

 このメールマガジンの読者の皆さんはきっと、「内之浦」といえば、
「あぁ、「はやぶさ」の故郷の内之浦ね。」
とすぐにピンとくる方ばかりだと思いますが、一般的な知名度は残念ながらそれほど高くは無いのです。

 例えば、先日の相模原キャンパス特別公開では内之浦のジオラマ模型近くで、子連れのお父さんが子どもに向かって
「これがロケットを打ち上げている種子島だよ。」
と言っていたりします。
(もちろん
 「イヤイヤ、これはですね内之浦宇宙空間観測所と言ってですね、「はやぶさ」を打ち上げた云々...。」
と説明をするのですが)
そんな種子島ジェラシーな気持ちもありつつ私の勤務地:内之浦宇宙空間観測所(USC:Uchinoura Space Center)と内之浦の町について少し紹介したいと思います。


 USCは鹿児島県は大隅半島の東南にある肝付町(旧内之浦町 2005年に高山町と合併し、肝付町となりました。)に所在しています。宇宙研に入ったばかりのころは、出張でUSCに訪れる際の内之浦までの道のりが大変長く感じました。相模原キャンパスからを例にとってUSCまでの代表的な旅程を簡単に紹介してみます。


 相模原キャンパスー淵野辺駅 徒歩    約15分
 淵野辺駅ー羽田空港     電車    約80分
 羽田空港ー鹿児島空港    飛行機   約120分
 鹿児島空港ー鹿屋市     バス    約100分
 鹿屋市ー内之浦市街     タクシー  約50分
 内之浦市街ーUSC       車     約10分

 ざっと足し合わせただけで6時間を超えています。これに待ち時間などを考えると、8時間程度でしょうか。なかなかの旅です。それでも先輩方の話を聞くと、近年の交通機関の発達や道路の整備などにより格段にアクセスは良くなったそうです。
(私としても最近、「実はそれほど遠くはないのでは?」と思っています。)


 こうしてたどり着いた内之浦の町ではいろいろな所にロケットや宇宙をモチーフにしたモノを見つけることができます。

 内之浦の町からUSCへ向かう国道448号線に掛かる複数の橋はその代表的なものでしょう。これらの橋は「宇宙への架け橋」として、ビーナスブリッジやマーズブリッジなど惑星の名前が付けられており欄干には人工衛星、ロケットなどを模した飾りが付いています。

 こういった宇宙にちなんだモノたちが、あらためて、この町が宇宙への玄関口であることを感じさせてくれます。


 そんな宇宙には近いが、関東からはちょっとだけ遠いUSCの歴史はとても長く、1962年に起工式を行った以降、約50年の歴史の中で数々の宇宙科学に関する成果がこの内之浦から生まれました。なかでも日本で最初の人工衛星「おおすみ」の打ち上げと、皆様ご存じ「はやぶさ」というのは、科学的な成果のみならず社会に与えたポジティブな影響の大きさもあって、(あくまで個人的にですが)特に素晴らしい成果ではないかと考えています。


 USCではこれらのような人工衛星や探査機の打ち上げだけでなく、理学的/工学的な実験を目的とした小型ロケット(観測ロケット)の実験が年に1機〜2機程度のペースでおこなわれています。またロケットの打上げに関する設備だけでなく、人工衛星の追跡を行うアンテナ設備なども有しており、まさに宇宙空間を観測しているところと言えるのではないでしょうか。


 さて、そんなUSCには今年に入り、大きなニュースがありました。それは世界最高性能の固体ロケットと言われたM-Vロケットの後継機であるイプシロンロケットの打ち上げ場所がUSCに決まったことです。

 観測ロケットの打ち上げや衛星追跡など様々なことを実施しているUSCですが、イプシロンのような衛星打ち上げのロケットは、2006年9月のM-Vロケット7号機「ひので」の打ち上げ以降実施されておらず、少しさみしい思いをしてきました。

 しかしながら、「固体ロケットの聖地 内之浦」(イプシロンロケットプロマネのお言葉を拝借しています。)での打ち上げがついに決定し、ふたたび内之浦から輝かしい宇宙科学の歴史が刻まれていくことになります。楽しみですね。そして町の中には「祝 イプシロンロケット射場決定」という垂れ幕を複数みることができます。これには地元の方のご理解とご支援がとても心強く感じると共に責任重大だなと感じるところです。

 そんなわけでUSCでは2013年度のイプシロン打ち上げに向けて、M-Vロケット終了後使用していなかった設備の点検や新規設備の検討が進められており、いよいよ始まったという感じがします。


 ここまで、ごくごくわずかな情報にて紹介した内之浦ですが、少しは興味を持っていただけたでしょうか?

 イプシロン打ち上げの際には「おおすみ」「はやぶさ」のふるさとへ、新たな歴史の目撃者として(大げさ?)ぜひ内之浦へお越しください。

 もちろん事前に予習も必要でしょうから、まずは10月30日に予定されているUSCの特別公開なんていかがでしょうか?

 メルマガ読者の方とお会いできることを楽しみにしています。

(荒川 聡、あらかわ・さとし)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※