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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第361号

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ISASメールマガジン   第361号       【 発行日− 11.08.23 】
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★こんにちは、山本です。

 週明けの月曜日、新研究・管理棟2階のエレベータホール前では雨漏りの水を拭き取るのに大わらわでした。

 相模原キャンパスでは唯一(?)の 建物内喫煙所が 雨漏りしたのです。
週末の雨が原因なのでしょうが、コンクリートの建物の雨漏りの原因を突き止めるのは大変なようです。

 これからの台風の季節に、毎回雨漏りしないといいのですが

 今週は、「きみっしょん」事務局長・宇宙科学共通基礎研究系の羽賀崇史(はが・たかふみ)さんです。


── INDEX──────────────────────────────
★01:未来の『はやぶさ』プロジェクトをつくるのは君だ
☆02:宇宙学校・くらよし 〜集まれ!未来の開拓者〜(9月11日(日))
☆03:2011年度第二次気球実験
☆04:「はやぶさ」カプセル等の展示スケジュール
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★01:未来の『はやぶさ』プロジェクトをつくるのは君だ

    〜 第10回 君が作る宇宙ミッション 〜


 みなさん、こんにちは。ISASで電波天文学を研究している博士課程1年の羽賀崇史と申します。ISASで毎年夏に開催されている高校生向けの宇宙教育プログラム「君が作る宇宙ミッション(通称:きみっしょん)」の事務局長を務めています。

 記念すべき第10回を数えた今年のきみっしょんも、関係者の皆様のご協力のもと無事に終了することができました。今回は、みなさんに「きみっしょん」について、今年の報告を交えて紹介したいと思います。


 「きみっしょん」は、4泊5日の合宿形式でISASに滞在しながら、数人のチームで1つのミッション計画を作り上げる研究体験型の教育プログラムです。毎年夏休みのはじめ頃に開催され、今年は8月1日〜8月5日の日程で行われました。

 今年は特に「はやぶさ」効果もあり、過去最高の応募総数となりましたが、その中から作文審査を突破した24名の高校生が全国から集まりました。


 「自ら考え、自ら決定し、自ら作業する」、

これは10回目を迎えた「きみっしょん」の歴史の中で一貫して掲げてきたモットーであり、最大の特徴です。

 期間中、ISAS職員や大学院生スタッフにサポートをしてもらいますが、あくまでミッションを作るのは「高校生」です。高校生が自分たちで問題を発見し、問題解決のアイディアを出し、その妥当性を検討するという研究者が日々行っている作業を、文字通り朝から晩までとことん体験してもらおうというのが「きみっしょん」です。


 まずは、1人ひとりが考えてきた「個人のミッション」をもとに「チームのミッション」を決めていきます。始めは出会ったばかりでぎこちなく、議論の難しさを痛感しているようでしたが、時間とともに仲良くなればなるほど、活発で中身の濃い議論となり、チームワークの大切さも学べたのではないでしょうか。


 2日目からは毎日夕方に進捗報告会が行われます。

「軽いトラウマになった」

という高校生もいましたが、大学院生スタッフや先生方から厳しい質問やアドバイスなど、チーム内では見落としていた点や、行き詰まりを打開するヒントなどをもらい、ミッションがより具体的になっていきます。

 ミッションの目的や流れが決まると具体的なミッションの手法を考え、さらにそれを評価していきます。各チームの白板には、それぞれ定量的な検討をした際の計算式が並び、高校生はもちろん大学院生スタッフも頭を悩ませながら裏で必死に検算していました。


 今年の高校生たちは,以下のようなミッションを作成しました。

・A班 宇宙発電所の建設 〜MADE IN SPACE〜
(エネルギー問題を解決するため、宇宙空間に太陽光発電所を建設し世界中に送電する)

・B班 宇宙船内での循環システムの開発 〜目指せ100% リサイクル〜
(長期の有人宇宙探査を可能にする、宇宙船内の資源の循環システムの構築)

・C班 エンケラドスの生命探査
(地球外生命体の発見とその進化の過程を知るために、土星の衛星、エンケラドスを探査する)

・D班 Fresh ISS Cooking
(新鮮な食材を用いてISSでみそ汁を作ることを例に、宇宙空間での将来的な調理法の研究)


 発表会場の大会議場は満席。例年以上にたくさんの先生、職員、学生のみなさんに来て頂きました。またこの様子は生中継でインターネット配信され、高校生の親御さんをはじめ、多くの方に高校生の活躍をみて頂くことができました。

 どの班も工夫をこらした個性的なミッションで、予想以上の出来に大変驚きました。特に質疑応答の場面は、立派な受け答えで、たくさん頭を使ってきた努力の成果が伝わってきました。

 終了後の高校生からは

「考えたり、議論したりするのは難しかったけど、本当に楽しい時間を過ごせた。」

「宇宙のことをたくさん語れる仲間ができてよかった。」

「将来のことを考える経験ができた。」

といった感想を聞くことができました。


 この高校生の声を聞くことを目指して、「きみっしょん」の企画、運営、準備の主体を担ってきたのは、ISASの大学院生です。今年集まった大学院生スタッフの数は、参加した高校生の約2倍。準備は前回の「きみっしょん」終了後すぐに始まり、丸一年準備をしてきました。

 はじめに、大学院生スタッフの中核を担う有志の大学院生スタッフで「きみっしょん」のモットーを確認し、今年の高校生をどのように指導していくかを議論、共有し「指導方針」としてまとめました。また、たくさんの高校生に応募してもらおうと、広報活動の充実を議論し、twitterを開始し、遠方の高校生にも参加しやすいようにと、旅費の補助にも取り組んできました。
 その後も高校生の選抜や食事の手配、しおりの作成などを行い、現在も、「きみっしょん」期間中の写真をアルバムにする作業が続いています。

 特に今年、大好評だったのは「エッグドロップコンテスト」です。ISASの特別公開にもありましたが、これは、生卵に細工をしてある高さから落としても割れないようにするという競技です。わずかな製作時間にもかかわらず創意工夫に満ちた12機が出来上がり、空を舞いました。

 ミッション作りでは、考えることばかりの高校生に、実際にものを作らせることで、「思考と実現のギャップ」を感じてもらおうとスタッフが熱心に準備しました。


 大きな事故もなく、大満足で終わった5日間でしたが、「きみっしょん」はまだまだ続きます。
発表後、

「まだ納得していないのでミッション作りを続けたい」

という高校生もいましたが、全国各地へ戻った仲間達とさらに議論を重ね、来春の天文学会/ジュニアセッションで発表することが出来ます。今回もすでに全チームが議論を再開し、大舞台での発表に向けて準備を進めています。


 さらに言えば、ジュニアセッションも「きみっしょん」の1つの通過点に過ぎません。「きみっしょん」という1つのミッションにおける本当の成功は、10年後、20年後の高校生の姿を見るまでわかりません。

 この5日間は「きみっしょん」のプロローグでしかなく、ようやく打ち上げが成功した段階なのです。これから彼らがどのように社会で活躍するか楽しみで仕方ありません。


 第1回の「きみっしょん」から8年の時を刻みました。「きみっしょん」を卒業してきた高校生たちがどんな進路をたどったのかこれから調査していこうと思います。読者で「きみっしょん」出身の方がいましたら、ぜひ連絡してください。
【連絡先】kimission@jaxa.jp


 ここでは語り尽くせなかった「きみっしょん」の詳細については、以下のURLを参照して下さい。興味をもった高校生のみなさん!来年の参加をお待ちしています。

【きみっしょんホームページ】
新しいウィンドウが開きます http://www.isas.jaxa.jp/kimission/

【きみっしょん2011ブログ】
新しいウィンドウが開きます http://kimission.jp/blog/2011/


 最後になりましたが、第10回君が作る宇宙ミッションの開催にあたりご尽力いただいた皆様に、この場を借りて御礼申し上げます。本当にありがとうございました。


(羽賀崇史、はが・たかふみ)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※