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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第353号

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ISASメールマガジン   第353号       【 発行日− 11.06.28 】
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★こんにちは、山本です。

 先週 不意にやってきた「真夏日」

 6月中は エアコンも入らず、窓や部屋の出入り口を開けても
「室温が30度を超えてます。」
なんて報告されても、それで涼しくなる訳でもないし……

 やっぱり 熱中症対策に励みましょうか

 今週は、電子部品・デバイス・電源グループの久木田明夫(くきた・あきお)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:不惑の○×系
☆02:相模原キャンパス特別公開(7月29日・30日)
☆03:相模原キャンパス展示室 臨時休館のお知らせ
☆04:「はやぶさ」カプセル等の展示スケジュール
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★01:不惑の○×系


10年以上勤めた会社を辞めて転職する事を決意したのが、4年前でしょうか。

 なぜ辞めようと思ったかは、兎も角として、40歳を目前にしたその頃、私は惑ってばかりだったように思います。

 「不惑の40」と言いますが、この言葉は私には当てはまらなかったようです。不惑と言える程、人間が出来てなかった、ということでしょうか。その当時は、そのように考えていましたが、ちょっと調べてみると、40にもなったら家族や社会への責任があるんだから、惑ってはいけない、という考え方もあるようです。

そう考えると、転職する事を快く許してくれた妻に感謝しないといけませんね。


 さて、2008年の春、JAXAに転職し、宇宙科学研究本部(当時)の電源グループに配属となりました。会社にいた頃とは色々と風土というか文化が違うなぁと感じたものです。例えば、会社につとめていた頃は、部署名の誰々さんでしたが、ここでは、○×系という言い方をします。私の場合だと「電源系の久木田さん」と呼ばれたりするわけです。

 ちなみに、衛星の構成は大きくバス部とミッション部の2つに分けることができます。バス部は衛星の基本的な機能の為に必要な機器であり、ミッション部は科学観測等、衛星の目的を達成するための機器です。電源系は、バス部の一部ということになります。


 人工衛星において、電源系はまさに心臓部です。日に当たっている間、太陽電池で必要な電力を発電しバッテリを充電すると共に、各部に電力を分配し、太陽光を受けることが出来ない時間帯は、バッテリから電力を各部に分配します。

 もし万が一電源が途絶えてしまうと、衛星は何も出来ません、軌道を回る単なるゴミ、いわゆるデブリでしかなくなってしまいます。そんなことになってはいけませんよね!


 打上げのとき、ロケットが打ち上げられ、その後、衛星の分離が成功すると、多くの衛星担当者は喜びを表しますが、電源系の人は、その段階では、まだ安心していません。

 太陽電池パドルが展開し、発生電力が正常であることを確認して初めて、「おめでとう」と喜びを分かち合うのです。


 閑話休題、
それだけに、電源機器には、非常に高い信頼性が求められます。技術が進歩し、より軽く、より性能のいいものが開発され、使われれば他のバス部やミッション部にとってもメリットがあるものだとしても、それらがすぐに導入されることはありません。

 過去に宇宙で問題なく動作したという実績は非常に重要なのです。不測の事態が起きないよう、実績の無い新しい技術の導入は、慎重には慎重を期さないといけません。「石橋を叩いて、尚渡らず」といった感じでしょうか。


 とはいえ、より良いものにしようと、私が開発をしてるかどうかは別として、様々な研究開発が進められています。誰でも自分たちが開発しているものは、製品化したいですよね。

 我々も、新しく開発されたものが、人工衛星で使われるようになってほしいのですが、前述したようにそのハードルは、非常に高いのです。

 ただ、幸運なことに我々電源系は、次世代の電源機器の宇宙実証を計画する機会に恵まれており、2013年度に打上げ予定の小型科学衛星シリーズの1号機、SPRINT-Aのオプションコンポーネントとして、実証機を搭載する計画を進めています。


 この実証機は、今後、宇宙での利用が期待される、高効率薄膜太陽電池やリチウムイオンキャパシタ等の宇宙実証を行うものです。私の当面の目標は、この実証計画を成功させることです。そして、この実証が実績となり、次世代の電源機器が人工衛星に適用される日を待ち望んでいます。


 さて、不惑の40になってから、数年が経とうとしておりますが、まだまだ不惑とは言えなさそうです。知命の50を迎えるまでには、不惑と言えるようになりたいものです。


(久木田明夫、くきた・あきお)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※