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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第339号

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ISASメールマガジン   第339号       【 発行日− 11.03.22 】
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★こんにちは、山本です。

 節電と施設見学停止中のため 照明を落とした研究棟の玄関ホールは、暖房も無いこともあって、ホール担当の守衛さんも寒そうです。

 今週は、東日本大震災によるISASへの影響・現況を、宇宙科学広報・普及主幹の阪本成一(さかもと・せいいち)さんに書いていただきました。

── INDEX──────────────────────────────
★01:東北地方太平洋沖地震によせて
☆02:「はやぶさ」カプセル等の展示スケジュール
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★01:東北地方太平洋沖地震によせて

 3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震とそれにより引き起こされた大津波により被災された方々、そして、津波の影響によって発生した福島第一原子力発電所の事故に伴って避難生活を強いられている方々、および周辺住民の方々に心からお見舞い申し上げます。

 特に、宇宙研が1971年の開設以来2007年まで400機以上の大気球を放球してきた大船渡市にも津波は今回も大きな爪痕を残し、とても心配しています。


 私はその時たまたま自分のオフィスにいて、相模原市立博物館の学芸員たちと企画展示の内容について相談しているところでした。建物が大きく強く揺れましたが、本棚などは無事でした。今にも崩れそうだった私の机の上の書類や、本棚に雑然と置かれた資料なども案外無事(多少変わったのかもしれませんが本人も気づかないレベル)でしたが、上の階の実験室ではいろいろなものが転倒して大変だったようです。とはいえ相模原キャンパスについては幸いにも在勤・在籍の教職員や学生に人的被害はなく、建物、施設等についてもわずかな被害にとどまりました。

 当日は首都圏でも多くの帰宅難民が発生したようですが、通勤に1時間半かかる私もそのうちの一人でした。とはいえ院生の頃から職場に泊まる機会が多く(院生の頃は研究室に住んでいた)、今もロッカーには寝袋やら着替えやら非常食やらが置いてありますので、影響は最小限ですみました。

 その後も続く余震や計画停電の影響などで、予定していた学会や見学案内、講演会が基本的にすべてキャンセルされたため、珍しくオフィスや自宅にいる生活を送っています。

 JAXA関連施設でいうと、震源に近い宮城県の角田宇宙センターでは被害は大きく、当面閉所して復旧にあたることになりました。筑波宇宙センターでも建物の一部に大きな損傷が出て、復旧に1か月ほどかかると言われています。


 このように、震災の直接的な影響はそれほどでもありませんでしたが、その後の電力不足に伴う計画停電(宇宙研は第4グループ)や節電要請などがあり、相模原キャンパスでのさまざまな活動に困難が生じています。これを受けて宇宙科学研究所内には
「宇宙研における地震・計画停電の臨時対応チーム」
が組織され、限られたリソースをどこに振り分けるかの取捨選択を行っています。

 この結果、軌道上にある衛星や探査機の安全で継続的な運用体制の確保や、プロジェクト等に必要となるクリーンルーム等の設備の保全(「はやぶさ」サンプルの汚染防止を含む)体制の確保、遅れることなく実施することが必要な地上試験の状況確認と安全な実施体制の確保がなされ、それが自家発電の能力と整合しているかの確認もなされました。

 また、ウェブサーバーにはまだ問題はありますが、相模原キャンパス固有メールシステムなどの情報インフラの停電対応体制の確保と停電の影響の最小化にも努めています。その結果、上記については、今後数週間にわたって現状が続くことがあっても、許容しがたい問題を生じることなく対処できる体制が作られています。


 一般との接点ではホームページやプレスリリース、見学受け入れやイベントなどがありますが、これは少なからぬ影響を受けています。

 ホームページについては停電の影響で不安定になりがちでご不便をおかけしていますが、状況はTwitterなどで適宜アナウンスするようにします。先週はプレスリリースの予定もいくつもあったのですが、すべて飛びました。どういう形でご紹介するか当事者と相談して決めますが、たぶんホームページ上でのご紹介となるものと思います。

 キャンパス展示室の見学については、3月中の団体見学はいったんすべてキャンセルとしました。自由見学も当面は中止としてありますが、安全の確認はできています。同じく計画停電の影響を受けている相模原市立博物館は早々と17日から公開を再開していますので、停電以外の際には自由見学だけでも許可できないかと首脳陣に打診しているところです。

 主催行事にも影響が出ており、3月27日から29日に予定されていた相模原スペースキャンプについては、参加者が小中学生であることから開催が見送られました。ただ、4月9日の「宇宙科学講演と映画の会」については、新宿区が計画停電の対象外であることもあり、予定通り実施します。トラブルを乗り越えようと必死で道を探している「あかつき」や、苦難を乗り越えて戻ってきた「はやぶさ」の話は、災害を乗り越えてこの国をより一層輝かせるのに役立つかもしれません。


 被災者支援への取り組みも進めています。まずは募金が一番だと思い、支援壁紙ダウンロードのページを準備しつつあります。

 宇宙研つながりで自治体も動いてくださっています。宇宙研の関連施設が市内にあることをきっかけに作られた「銀河連邦」に属する自治体が、災害時の相互支援の協定に基づいて大船渡市の支援に動いたのです。

 例えば相模原市では、13日には消防士やアマチュア無線資格を持つ職員などからなる派遣隊を組織して直ちに大船渡市役所に派遣し、4トントラック2台で水や食料、毛布、仮設テントなどの物資を届け、必要な物資に関する情報を得てきたそうです。これを受けて、市内の企業に呼び掛けて支援物資を集めているほか、3月21日から24日まで缶詰や紙おむつなどの支援物資を市民から集めて大船渡市に届けるようです。このような支援の輪は他の自治体にも広がっています。

 復旧にむけた道は長く遠いと思われますが、打ちひしがれた被災地に明るい話題を届けるために、私たちもさまざまなかたちで支援の取り組みを続けたいと思います。今後ともよろしくお願いします。

(阪本成一、さかもと・せいいち)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※