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ISASメールマガジン 第336号
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ISASメールマガジン 第336号 【 発行日− 11.03.01 】
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★こんにちは、山本です。
今週ISASでは、シンポジウム・研究会が3回も開催されます。
昨年の12月以来開かれてきた冬のシンポジウムのシーズンも、3月半ばで一段落です。
今週は、宇宙探査工学研究系の小林大輔(こばやし・だいすけ)さんです。
── INDEX──────────────────────────────
★01:一年の海外勤務を終えて
☆02:相模原キャンパス見学の方へ お知らせ
☆03:「はやぶさ」カプセル等の展示スケジュール
───────────────────────────────────
★01:一年の海外勤務を終えて
僕の宇宙研での仕事はICチップと呼ばれる部品についての研究です。この部品を宇宙で使うためにどうしたら良いかを考えています。2010年は特別な年になりました。一年間海外で研究をしてきたのです。世界最先端のIC研究所の一つであるimecというベルギーの研究所でICの故障問題について研究してきました。
宇宙で使うICチップは地上の最先端のそれから、だいたい10年遅れた製造技術でできていると言われています。交換ができない宇宙用部品には確実に動くことが要求されるので、長く使われて安定した技術で作られていることが求められるのです。
違う見方をすると、今の地上部品で使われている最先端技術はいずれ宇宙で使われることになるはずです。そのいつかに備えて、地上の最先端技術がどのようなものであるかを絶えず意識していなければなりません。
それは宇宙で使えるか?
という事を考えていく必要があります。
厄介なのは、最近の先端技術でできたICチップでは従来とかなり変わった仕組みが使われるようになってきていて予想が難しくなっていることです。構造を立体的に変化させたり、材料を力ずくでゆがませたり。そうやって性能を上げているのですが、宇宙での使用に耐えられるかどうかは判断がなかなか容易ではありません。
まずは、その仕組みをきちんと知る、それも実際に物に触れて得た経験知が必要であって、今回の海外での研究になったわけです。
さて、この研究の中身は別の機会にゆずるとして、今回はこの海外滞在で意識する事になった研究の仕方について書いてみたいと思います。
実は僕には隠されたミッションがありました。個人的にimecの成功の秘訣に興味があったのです。
imecは大変成功している研究所として知られています。優れた技術的成果を上げ続けているだけでなく、組織としての運営にも成功しています。年間の利益は10億円を越えています(2008年の利益を2011年2月25日のレートで換算)。
どうしてそんなに上手く行っているのか、その成功の秘訣を求めて。
潜入(?)して最初に感じた印象は、とにかく人の出入りが多いという事。新しい研究者が次から次へとやってきました。毎週新しい人がやって来て
「はじめまして」
と挨拶を交わすような印象でした。それと同じ位お別れをすることも。
年度単位で採用する日本のシステムに慣れた僕にとってはこの頻繁な出入りはとても印象に残りました。
もう一つは研究者同士でコラボレーションを組むのに積極的で、とりわけ、それを作る最初の一歩がとても早いと感じました。
個々の研究者は普段は自分の専門分野に取り組んでいるのですが、一人では手に負えない課題があったりすると、どういった専門知識が必要かを判断して、それに携わっている研究者達がすぐ集まってチームができる。
その人達の知識では足りないとなると、大抵メンバーの誰かから
「あいつに聞けばいい」
とすぐヒントが出てスルスルと人のリンクが繋っていきました。
先程述べた「新しい人」もこういうチームにすぐに入っていきます。様々な新しいコラボレーションがスッと生まれてくる、そう感じました。
僕が感じた「新しいコラボレーション」は成功の秘訣だったのでしょうか?
ここに今夢中になっている、W. Brian Arthur氏の著書「The Nature of Technology」(Penguin Books)があります。
テクノロジーとは何か?
を追究していて目から鱗(ウロコ)が落ちる思いをさせてくている本です。
たまたま手に取った本なのですが、新しいコラボレーションがテクノロジーにとっていかに重要かという内容にも触れていて大変驚きました。僕が感じたものはどうやらそう外れたものではなかったんだとニヤニヤしながら読んでいます。
今の僕の疑問は
「では、どうすればその新しいコラボレーションを作れるようになるのか?」
という事です。
滞在中にはヒントを得ることができず、今は先程紹介した本に期待しながら読みすすめているところです。自分では答えを出せないところが、まだまだ修行が足りない若造の限界でしょうか。
このメルマガの読者の方で良い御知恵がありましたらぜひ教えてください。まずは、週末、久しく会っていなかった知人に会ってこようと思います。新しい何かがうまれるかもと期待して。
(小林大輔、こばやし・だいすけ)
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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※
ISASメールマガジン 第336号 【 発行日− 11.03.01 】
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★こんにちは、山本です。
今週ISASでは、シンポジウム・研究会が3回も開催されます。
昨年の12月以来開かれてきた冬のシンポジウムのシーズンも、3月半ばで一段落です。
今週は、宇宙探査工学研究系の小林大輔(こばやし・だいすけ)さんです。
── INDEX──────────────────────────────
★01:一年の海外勤務を終えて
☆02:相模原キャンパス見学の方へ お知らせ
☆03:「はやぶさ」カプセル等の展示スケジュール
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★01:一年の海外勤務を終えて
僕の宇宙研での仕事はICチップと呼ばれる部品についての研究です。この部品を宇宙で使うためにどうしたら良いかを考えています。2010年は特別な年になりました。一年間海外で研究をしてきたのです。世界最先端のIC研究所の一つであるimecというベルギーの研究所でICの故障問題について研究してきました。
宇宙で使うICチップは地上の最先端のそれから、だいたい10年遅れた製造技術でできていると言われています。交換ができない宇宙用部品には確実に動くことが要求されるので、長く使われて安定した技術で作られていることが求められるのです。
違う見方をすると、今の地上部品で使われている最先端技術はいずれ宇宙で使われることになるはずです。そのいつかに備えて、地上の最先端技術がどのようなものであるかを絶えず意識していなければなりません。
それは宇宙で使えるか?
という事を考えていく必要があります。
厄介なのは、最近の先端技術でできたICチップでは従来とかなり変わった仕組みが使われるようになってきていて予想が難しくなっていることです。構造を立体的に変化させたり、材料を力ずくでゆがませたり。そうやって性能を上げているのですが、宇宙での使用に耐えられるかどうかは判断がなかなか容易ではありません。
まずは、その仕組みをきちんと知る、それも実際に物に触れて得た経験知が必要であって、今回の海外での研究になったわけです。
さて、この研究の中身は別の機会にゆずるとして、今回はこの海外滞在で意識する事になった研究の仕方について書いてみたいと思います。
実は僕には隠されたミッションがありました。個人的にimecの成功の秘訣に興味があったのです。
imecは大変成功している研究所として知られています。優れた技術的成果を上げ続けているだけでなく、組織としての運営にも成功しています。年間の利益は10億円を越えています(2008年の利益を2011年2月25日のレートで換算)。
どうしてそんなに上手く行っているのか、その成功の秘訣を求めて。
潜入(?)して最初に感じた印象は、とにかく人の出入りが多いという事。新しい研究者が次から次へとやってきました。毎週新しい人がやって来て
「はじめまして」
と挨拶を交わすような印象でした。それと同じ位お別れをすることも。
年度単位で採用する日本のシステムに慣れた僕にとってはこの頻繁な出入りはとても印象に残りました。
もう一つは研究者同士でコラボレーションを組むのに積極的で、とりわけ、それを作る最初の一歩がとても早いと感じました。
個々の研究者は普段は自分の専門分野に取り組んでいるのですが、一人では手に負えない課題があったりすると、どういった専門知識が必要かを判断して、それに携わっている研究者達がすぐ集まってチームができる。
その人達の知識では足りないとなると、大抵メンバーの誰かから
「あいつに聞けばいい」
とすぐヒントが出てスルスルと人のリンクが繋っていきました。
先程述べた「新しい人」もこういうチームにすぐに入っていきます。様々な新しいコラボレーションがスッと生まれてくる、そう感じました。
僕が感じた「新しいコラボレーション」は成功の秘訣だったのでしょうか?
ここに今夢中になっている、W. Brian Arthur氏の著書「The Nature of Technology」(Penguin Books)があります。
テクノロジーとは何か?
を追究していて目から鱗(ウロコ)が落ちる思いをさせてくている本です。
たまたま手に取った本なのですが、新しいコラボレーションがテクノロジーにとっていかに重要かという内容にも触れていて大変驚きました。僕が感じたものはどうやらそう外れたものではなかったんだとニヤニヤしながら読んでいます。
今の僕の疑問は
「では、どうすればその新しいコラボレーションを作れるようになるのか?」
という事です。
滞在中にはヒントを得ることができず、今は先程紹介した本に期待しながら読みすすめているところです。自分では答えを出せないところが、まだまだ修行が足りない若造の限界でしょうか。
このメルマガの読者の方で良い御知恵がありましたらぜひ教えてください。まずは、週末、久しく会っていなかった知人に会ってこようと思います。新しい何かがうまれるかもと期待して。
(小林大輔、こばやし・だいすけ)
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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※