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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第318号

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ISASメールマガジン   第318号       【 発行日− 10.10.26 】
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★こんにちは、山本です。

 10月も下旬になり、ニュースにも やっと秋の紅葉の話題が登場してきました。日光は、いま見頃のようですが、南関東まで前線が南下して来るのはいつ頃でしょうか?

 今週は、宇宙環境利用科学研究系の石川毅彦(いしかわ・たけひこ)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:微小重力実験室完成!
☆02:「おおすみ」40周年記念シンポジウムの開催
☆03:全天X線監視装置(MAXI)がケンタウルス座に新X線天体を発見
☆04:JAXA特集:小惑星探査機「はやぶさ」 ついに地球へ帰還!
☆05:「はやぶさ」カプセル等の展示スケジュール
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★01:微小重力実験室完成!

 相模原では「はやぶさ」「イカロス」「あかつき」のホットなニュースが飛び交う中、筑波では国際宇宙ステーションにおける実験が進められています。
こう書くと、
「宇宙ステーションは筑波にあるのかっ」
と誤解を招きそうですね。宇宙ステーションでの実験の多くは地上からの遠隔操作で行われていて、その設備が筑波宇宙センターにあるのです。実験者は筑波に集まって、実験手順に従って実験装置に指令(コマンド:例えば温度を○○まで上げろとか)を送るとともに、宇宙ステーションから送られてくる実験データの収集を行います。日本の実験棟「きぼう」の組み立て作業が一段落したことや日本人宇宙飛行士がいないこともあって、比較的静かな環境で淡々と実験がこなされている毎日です。

 先日、同じ研究系の稲富先生が代表する「ファセット的セル状結晶成長機構の研究」(通称FACET実験:詳細は、⇒ 新しいウィンドウが開きます http://kibo.jaxa.jp/experiment/theme/first/facet/)が終了しました。開始したのが昨年4月なので、実に1年半に亘ります。(正味は昨年4月〜6月と今年の8月〜10月の5ヶ月なのですが)
実はこの実験、最初のシリーズで終了の予定でした。ところが、貴重な光学観測データが装置内を循環させている空気の影響を受けて揺らいでいることが判明したため、装置の改修(光路に風よけを付ける)を行うとともに、再実験(シリーズ2)を実施しました。

 日本で初めて行われた本格的(?)な微小重力実験は1992年、毛利さんのスペースシャトル搭乗に遡ります。このミッション、研究者にとってはまさに「蝉の一生」でした。チャレンジャー号の事故等々による遅延により、実験提案から待つこと7〜8年で実験時間はたったの8日でしたから。更に、このミッションでは、ライフサイエンスと材料実験合わせて34テーマのてんこ盛り。1テーマに与えられる実験機会は非常に限られていました。(ほぼ1回)1994年向井さんのミッションでは、実験提案から実施までの時間は大幅に短縮されたものの、テーマ当たりの実験回数は増えませんでした。

 また、これらのスペースシャトルミッションでは、高々2週間の飛行期間に数多くの実験がひしめき合い、宇宙飛行士は2交替制、地上要員も3交替で、ミッション期間中、実験をし続ける時間割を組んで、何とか全部の実験がこなせる状態でした。なので、一度どれかの実験装置が壊れるとさあ大変、みんなで限られたクルータイムをひねり出して、装置の修理や修理後の再実験を計画しますが、完全にリカバーできる例は稀でした。

 非常に貴重な実験機会(一度逃せば、10年待たねばならない)で失敗は許されず(故障でもするとリカバーする時間がない)と言う状況は、実験提案者に非常に大きなプレッシャーでした。更にたった1〜2の実験データで論文を書けというおまけ付き。いや、これは実験ではなくイベントでしょう・・・。

 ISS(国際宇宙ステーション:International Space Station )は、シャトル時代の制約を一気に取り払いました。時間はほぼ無限。不具合が起きた時に「頭を冷やす」時間を取ることもできます。(あ、喫緊の応急処置はすぐにしますが)不具合を修理した後の再実験が十分可能なことは、FACET実験のとおりです。ある実験の結果を解析して、次の実験条件を決めるとか再現性確認のデータを取ると言った地上の実験では普通に行われていること(でもシャトル時代は時間の制約で困難だった)も行えるようになりました。名実ともに「微小重力実験室」が出来たのだと思っています。

(石川毅彦、いしかわ・たけひこ)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※