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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第279号

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ISASメールマガジン   第279号       【 発行日− 10.01.26 】
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★こんにちは、山本です。

 メルマガの配信が遅れてすいません。
皆さんをお待たせした分、ホットな情報が満載になりました。

 ISASホームページの背景画像が、金星と「あかつき」に変更されました。同時に壁紙も追加されています。ご利用ください。
http://www.isas.jaxa.jp/j/wallpaper/index.shtml

 今週は、宇宙航行システム研究系の小川博之(おがわ・ひろゆき)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:不思議な縁
☆02:「おおすみ」40周年記念シンポジウム
☆03:「すざく」で 木星のまわりに大きく広がる硬X線放射を発見
☆04:小惑星探査機「はやぶさ」軌道情報
☆05:今週のはやぶさ君
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★01:不思議な縁

 筆者が生まれた三重県員弁郡東員町(みえけんいなべぐんとういんちょう)には猪名部神社(いなべじんじゃ)という神社があり、厄年のお正月には、神社に同級生が集まって厄払いの正式参拝をするのが習わしです。筆者は今年後厄で、今年もお正月に帰省し参拝しました。宮司さんが小学校時代の先生だったこともあり、同級生とともに昔話やら現況やらで会話が盛り上がりました。
話をするうち、当たり前のことながら、同じ小学校・中学校を一緒に過ごした同級生がそれぞれ違う生活をしていることが不思議で、特に私が今宇宙研で仕事しているということがとても不思議に思いました。不思議な縁で関わった先生方に導かれた結果、今の状況にあるのだということを改めて思いました。

 今思うと、宇宙の仕事に導かれるきっかけは、幼少のころ両親に買ってもらった図鑑でみたアポロ月探査システムといろいろな飛行機でした。今でも実家には幼稚園の頃描いたサターンロケットの絵が飾ってあります。しかしながら以下で述べますように、正直申しまして、私は宇宙に関する仕事を幼少のころからずっと志してきたわけではありません。

 中学は公立でなんとなく過ごし、偏差値でなんとなく選んで入った高校では、周りがほとんど進学するというのに流され、その当時流行っていたロボット関係で有名な研究室がある大学を目指しました。転機は高校3年の夏、その当時は珍しかった志望校のオープンキャンパス(高校2年対象だったのを無理いって参加した)で、たまたま訪れた実験室にありました。名古屋大学航空学科の推進研究室でアークジェットエンジンのデモを見せていただき、これが人工衛星のエンジンだと説明されました。その瞬間に幼少のときにあこがれたアポロ宇宙船と飛行機が頭の中によみがえり、志望を名古屋大学航空学科に変更しました。いろいろな幸運が重なり、なんとか入学できました。

 入学後は好きな航空の勉強ができたのでうれしかったのを覚えています。特に制御理論にひかれました。卒業研究配属研究室の第1志望は制御研究室でした。この研究室は人気が高かったため、いろいろあって、結局一番人気のなかった研究室に配属になりました。配属になった研究室は、気体分子運動論を研究している研究室で、紙と鉛筆で研究する地味な研究室だったのですが、これがやってみると面白く、とても充実した研究生活を送ることができました。航空会社への就職も考えましたが、結局なんとなく修士課程に進学しました。

 修士課程は、いろいろあって別の研究室に配属になりました。ここで新しい指導教官から「宇宙流体をやりなさい」といわれました。当時航空分野で発展していた数値流体力学を天体現象に適用する研究を期待されていたようです。暗中模索するなかですがる思いで理学の先生方と交流し、プラズマ流れを解析する研究をおこないました。理学の先生方と交流したこともあって、なんとなく博士課程に進学する気になり、プラズマ流れに関する研究で博士号をとりました。

 博士号を取った後はポスドクでなんとなく過ごしていたのですが、ある日縁あって宇宙研に就職することになりました。宇宙研の話がある前日までは全く想像もできなかった転機でした。

 宇宙研での配属の関係で縁あって宇宙熱技術に携わることになり、BepiColomboプロジェクトに携わることになりました。また縁あってロケットの飛行安全や再使用ロケットの研究にも携わることになり、現在に至っています。

 このように大学受験のときを除いてなんとなく流されてきた自分が排除されずに、不思議な縁に導かれ、結果、今充実した日々を過ごすことができていることに運命のようなものを感じています。

 「かけた恩は水に流し、受けた恩は石に刻む」。冒頭の参拝の後の直会(なおらい)のときに冒頭の猪名部神社の宮司さんが贈ってくださった言葉です。この言葉をいただき、まさに今の状況があるのは、私と縁あってこれまで導いてくださった先生方はじめ皆さんのおかげだと感謝した次第です。

 今後、再使用ロケットはじめいろいろな仕事に従事してまいりますが、これまでに受けたご恩を忘れずに、がんばっていきたいと思います。どうか皆様、ご指導ご支援のほどよろしくお願いいたします。

(小川博之、おがわ・ひろゆき)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※