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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第270号

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ISASメールマガジン   第270号       【 発行日− 09.11.24 】
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★こんにちは、山本です。

 急に寒くなりました。寒気がして、インフルエンザにかかっていたら大変と医者に行ったところ、
「あなたの年代の人は、新型インフルエンザに耐性があるようで、大丈夫ただの風邪です」
と言われました。寝不足などで悪化させぬよう気をつけないと……

 今週は、宇宙環境利用科学研究系の石川毅彦(いしかわ・たけひこ)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:ISS運用管制
☆02:小惑星探査機「はやぶさ」の帰還運用の再開について
☆03:今週のはやぶさ君
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★01:ISS運用管制

 初めまして。メールマガジン初投稿です。2003年のJAXA誕生以来ISAS所属なのですが、普段筑波の方で国際宇宙ステーション(ISS)を利用した微小重力環境利用実験の仕事をしています。つくばエクスプレスとどちらが早いか競っていた(どちらも当初の計画から遅れていた)「きぼう」ですが、競争相手の開業が始まると、それを待っていたかのように順調に組み立てられ、2008年度から運用が始まりました。研究の傍ら、運用のお手伝いもしてきたので運用管制の様子をご紹介したいと思います。

 「きぼう」の運用は、筑波宇宙センターの正門から入ると一番奥の宇宙ステーション総合推進センターで行われています。運用管制室は、ミッションコントロールルーム(MCR)とユーザー運用エリア(UOA)に大きく分かれています。UOAは、「きぼう」で行われる実験データの収集や実験シーケンスの制御を行う部屋で、実験提案者らが集結する部屋です。ですから、UOAは実験が一つも行われていないときは空っぽになります。一方、MCRは「きぼう」自体のお世話をするところなので、年中無休です。「きぼう」は電力、排熱、空気などをISSに頼っているため、これらの監視制御を行うとともに、こうした資源の配分について、ISSの大家さんであるNASAと調整を行います。資源の配分は条約で決まっていて、日本の取り分は12.8%、全体の約1/8です。そうそう、宇宙飛行士の作業時間も重要な資源で、これも1/8です。

 MCR担当の運用要員は3交替で24時間365日運用卓に着いています。
ISSは、基本的にGMT(グリニッジ時間)で動いていて、宇宙飛行士は6時に起床します。日本時間では夕方の4時ころでしょうか。ここから夜中の12時までの勤務がシフト1、夜中の12時から朝の8時までがシフト2、朝8時から夕方4時までがシフト3です。宇宙飛行士の作業に対応するのはシフト1とシフト2の半分です。シフト3中宇宙飛行士は就寝中ですが、この時間が最も微小重力環境が良いので、流体実験などは地上からの遠隔操作でこの時間帯に行われることが多いのです。シフト3は、日本では通常の勤務時間帯とほぼ一緒なので、JAXA外部の研究者にとってもありがたいようです。

 MCR運用要員の仕事は、現在の「きぼう」の機能を監視して、正常に維持することと、この先1週間の計画をレビューすることがあります。NASA、ESA、日本などの参加機関が登録した作業や実験などが、5分単位の時間割として提示されます。作業の順番に問題はないか、正しい手順書が呼ばれているか、地上との交信は確保されているかなどなど、細かいチェックが行われます。

 宇宙のゴミ(デブリ)は、宇宙ステーションにとって大敵です。大きなデブリは、監視下にあるので、衝突しそうなデブリは72時間以上前にわかるようです。当たりそうなものがあると、ISSは軌道や姿勢を変えてこれを避けるDAM(Debris Avoidance Maneuvers)を行います。ただ、姿勢を変えると太陽電池パドルでの発電量が低下するので、電力消費の削減計画作りが始まります。なるべく実験等の計画にインパクトなく節電する、運用要員の腕の見せ所です。

 昨年夏に大型ハリケーンがメキシコ湾を襲いました。そこは雲のはるか上にいるISS、関係ないだろうと思うとさにあらず。ISSの運用管制はテキサス州のヒューストンで行われているのですが、ここを直撃しました。運用管制員を含めて住民が避難するため、地上からの管制が困難になります。アラバマ州のNASAセンターに権限を委譲して、宇宙飛行士の安全を確保しつつ最低 限の管制が行われましたが、実験は1週間延期となりました。宇宙と地上は繋がっていると感じたエピソードでした。

(石川毅彦、いしかわ・たけひこ)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※