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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第263号

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ISASメールマガジン   第263号       【 発行日− 09.10.06 】
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★こんにちは、山本です。

 今週は雨ばかりの天気予報、10月になってやって来たのは台風です。私の居室は小さなプレハブ棟で、どこへ行くにも傘が必要です。雨続きだと外へ出るのが面倒で、運動不足になってます。(前からだって声も聞こえてきますが ……)

 今週は、科学衛星運用・データ利用センターの長谷川晃子(はせがわ・あきこ)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:ありがとう
☆02:透過型電子顕微鏡のEDS分析のエネルギー分解能を一桁向上
☆03:今週のはやぶさ君
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★01:ありがとう

 初めて心から喜べた会議が、先週ありました。

 私が所属している部署は、科学衛星運用・データ利用センター衛星運用グループといい、主に、複数の科学衛星で使用する設備の開発、運用、維持などを担当しています。簡単に言えば、衛星運用の「縁の下の力持ち」でしょうか。

 その中で、私は地上局の運用計画を担当しています。

 今、ISASが運用している科学衛星と通信するための地上局は、長野県にある臼田局、鹿児島県にある内之浦局の二つがあります。その中に直径が64m、34m、20m、10mの4つのアンテナがあり、一つの科学衛星を運用するために1つのアンテナを使用します。

 そして、今、ISASで運用している科学衛星は、 「EXOS-D(あけぼの)」
「GEOTAIL」
「ASTRO-F(あかり)」
「ASTRO-EII(すざく)」
「SOLAR-B(ひので)」
「MUSES-C(はやぶさ)」
の6つがあります。3か月前は「SELENE(かぐや)」の運用も行っていました。

 科学衛星は地球や太陽を周回しているため、アンテナが科学衛星をとらえる時間は限られており、この時間を可視時間と言います。また可視時間の開始と終了の時刻をそれぞれAOS、LOSと言います。そして、限られた可視時間の中で運用を行う時間を運用時間と言います。

 複数の科学衛星間で運用時間が重複していた場合、運用時間を調整する必要が出てきます。

 そこで、可視時間、AOS、LOS、調整した運用時間をグラフ化し、時系列に、いつ、どの科学衛星が、どのアンテナを使用して通信を行うかといったことが分かるように、運用計画を作成します。これが私の今の主な仕事です。

 そして、各科学衛星の運用担当者が集う会議で、最終的に運用計画を決定します。決定された運用計画は地上局や、各科学衛星の運用担当者など多くの方に配布されます。

 今年の6月から、運用計画を担当し始めて3か月が過ぎ、先週行われた会議の後、初めて「ありがとう」とメールが届きました。

 そして、この会議に私も参加していたのですが、隣で筆記通訳してくれる人がいたおかげで、会議内容が分かるようになったのです。いつも会議で内容が分からず、悶々としていたのが、綺麗に消えました。

 筆記通訳?と思った人もいると思います。私は重度の難聴で、両耳が聞こえません。同様に障がいを持った人はJAXA全体で30人ほどいると聞いています。

 ちょうど今から3年前、私は他の会社でプログラマーとして勤務していました。JAXAで障がい者採用が行われており、合格通知が届いた時には、どうしよう!?と思ってしまいました。私は宇宙に関する勉強をしてきたわけでもなく、衛星のこともまったく知らない素人だったからです。

 「ありがとう」の一言で、全ての不安が消え、やっとスタートラインに立てたという喜びでいっぱいになりました。同時にこれからも気を引き締めて行かなくてはと、責任の重さを感じました。

 耳が不自由であるということは、情報は目から入るもののみになります。運用計画を作成するためには、各科学衛星の可視時間情報や、地上局のメンテナンス情報など、たくさんの情報が必要になってきます。幸いなことに、ほとんどの情報はメールでやり取りが行われますので、毎日メールとにらめっこしながら、計画を作成しています。

 大きな仕事ではないのですが、運用計画は多くの方が使用しているので、とても重要な仕事だと私は思っています。

 お話は変わりますが、今年7月に行われた、ISASの一般公開で耳の不自由な方を招待し、手話で案内しました。私だからこそ出来ることは何かを考えた末に、思いついたのが手話案内でした。案内するためにも、様々な専門を知っておかなくてはいけません。

 耳の不自由な子供たちにも宇宙やISASのことを知り、いろんな夢を持って欲しいなというささやかな願いを込めて、少しずつ専門の視野を広げながら、今日もパソコンに向かい、コツコツと運用計画を作成しています。

(長谷川晃子、はせがわ・あきこ)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※