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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第219号

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ISASメールマガジン   第219号       【 発行日− 08.11.25 】
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★こんにちは、山本です。

 11月もあと5日、帰り道もすっかり暗くなりました。相模原キャンパスの周りでもクリスマスイルミネーションをする家が増えてきました。朝とは全く違う様相となる帰り道、「奇麗」とは思うのですが、つい電気代を心配してしまいます。

 今週は、宇宙航行システム研究系の野中 聡(のなか・さとし)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:風のお話 その2
☆02:「あかり」赤外線カタログの初版完成と、最新の科学成果
☆03:JAXAクラブニュース「日本のロケットの歴史を築いたM-Vロケット」
☆04:今週のはやぶさ君
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★01:風のお話 その2

 1年ほど前に内之浦でロケットを打ち上げる際の「風」についてお話しました。今回も「風」についてのお話をしましょう。つい先日まで宮城県の角田宇宙センターで約1ヶ月間におよぶ再使用ロケット実験機のターボポンプの試験を行っていました。そしていよいよ秋田県能代での地上燃焼試験が始まります。実験場ではものすごく冷たい雪混じりの風が容赦なく吹きつけることでしょう。でも今回も能代の風のお話ではありません。今回の「風」は相模原キャンパスを心地よく自然にそよそよと吹きぬけるような「風」ではなく、人工的に装置で作り出す「風」です。

 みなさんは「風洞」という装置をご存知でしょうか。飛行機やロケットなどの形を決める仕事には欠かせない重要な装置です。スキーのジャンプ選手が記録を伸ばすためにはどのような姿勢で飛べばよいかなど、スポーツ分野での研究にも使われています。風洞は「風」「流れ」を作る装置です。その作り出された「流れ」を使って、飛行機やロケットなどの空力特性(空気の流れが機体にどのような力を及ぼすか)を調べたり、流体力学の研究を行ったりします。

 ひとことで風洞といってもいろいろとあり、さまざまな方法で流れを作り出します。ファンを回して流れを作る回流型風洞、容器に貯めたガスを吹き出す吹出式風洞、電気の力で気体を高温にして流れを作るアーク加熱風洞、衝撃波により気体を圧縮して吹き出す衝撃波風洞、などなど。空気のような気体の流れを作るだけではなく、水風洞なんていうのもあります。見たい調べたい流れの条件によって実験装置を選択します。例えば相模原では、超音速風洞の中にロケットの模型を入れて、流れの中に置いたときに模型に加わる力を計測し、ロケットが上昇する際に空気から受ける抵抗はどのくらいになるだろうか、形を変えたらもっと抵抗が減らせるのではないか、などなどの研究を行っています。圧力を計ったり、温度を計ったり、写真を撮ったり、実験の目的に合わせてさまざまな計測を行います。

 私自身は学生の頃から流体力学に関係する研究をしていましたが、あの頃は風洞ではなく「バリスティックレンジ」という装置で極超音速流れ(マッハ5以上の流れ)の研究をしていました。この装置は風を作るのではなく、静止している気体の中に物を打ち込んで飛ばすものです。直径15mmほどの球や円錐などのモデルを秒速5km(1秒間で5km進む速度、約マッハ15)くらいで空気中に撃ちだしてモデルの周りの流れをレーザー光によるシュリーレンやホログラフィーなどという方法を使って写真に撮っていました。これを流れの可視化と言います。極超音速という非常に速い速度で飛ぶものの周りではとても強い衝撃波ができます。可視化によって衝撃波の形を明らかにして解析と照らし合わせ、極超音速で飛ぶものの周りでどのようなことが起きているかを研究していました。このような基礎研究が例えば将来の宇宙往還機の空力特性の研究のために役立ちます。このように流れの研究には風洞以外にもいろいろな実験装置が使われ、コンピュータを使った計算による解析も盛んに行われています。

 いまちょうど大学院の学生たちと一緒に相模原で風洞実験をやっています。再使用ロケットが飛んで帰ってくるときにどんな飛び方をすればよいか、そのためにはどんな形にすればよいかなどを低速の風洞を使って調べています。天秤と呼ばれる装置で力を計ったり、流れに粒子を含ませて模型の周りの流れを可視化したりして、学生たちと夜中までああでもないこうでもないなどといろいろなアイデアを出し合いながら実験をするのはとても楽しいです。能代から帰ってきたら遷音速・超音速風洞での実験も待っています。

(野中 聡、のなか・さとし)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※