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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第218号

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ISASメールマガジン   第218号       【 発行日− 08.11.18 】
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★こんにちは、山本です。

 先週は、ISASのトップページの記事が何度も変わりメルマガも盛りだくさんでしたが、今週は何となく静かです。

 トコロが、【地味】に変更されているページもあります。秋の夜長、じっくりページを眺めてみるのもよいのでは。きっと、新しい発見があります。

 今週は、宇宙輸送工学研究系の大山 聖(おおやま・あきら)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:私がISASにきた経緯とISASでの仕事
☆02:宇宙学校・ふくおか【宇宙に夢中!】
☆03:2008年度日本−ブラジル共同気球実験
☆04:今週のはやぶさ君
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★01:私がISASにきた経緯とISASでの仕事

 私は宇宙研の宇宙輸送工学研究系というところで助教をしています。専門は流体力学と設計工学です。「ISASで働き・研究している人間が見えて くるような記事を」という依頼でしたので、私がどういう経緯でISASにきて、どんなことをしているのか、ということを書いてみようと思います。

 進路の最初の分岐点にたったのは高校生の時です。まずは文系志望クラスに行くか理系志望クラスに行くかを決める必要がありました。昔から理科系の科目が好きだったのですが、文系の科目も好きでしたし(古典をのぞく)、海外にすんでみたかったので文系→外務省への就職も考えたのですが、下調べをして外務省への採用人数が少ないことに気がついてこりゃ無理だと文系にいくのはあきらめた記憶があります(笑)。

 次の分岐点は大学入試です。大学と学部を選択する必要があったのですが、ただ勉強するだけじゃなくてなにかかっこいいものを作りたいと思い、地元の東北大学で航空宇宙工学を学ぶことを選びました(子供の頃にみていたロボットアニメの影響が強かったのかもしれません)。学部3年生の時に中橋・大林研究室(現在は中橋研究室新しいウィンドウが開きます http://www.ad.mech.tohoku.ac.jp、大林研究室新しいウィンドウが開きます http://www.ifs.tohoku.ac.jp/edgeに分かれています)に配属になり、流体力学と設計工学について学び、それが楽しかったので就職はせず、大学院に進んで研究を続けることにしました。

 大学院でも中橋・大林研究室に所属し、航空機主翼の設計について学びました。学生時代は研究が楽しく、土日も関係なく研究に没頭する毎日だったのですが(たまに平日に大学をサボって怒られましたが…)、博士課程3年になり就職先を探す時期になりました。国内の大学の教育職、国内外の研究機関の研究職などをいくつかあたって、最終的にNASAグレン研究所で募 集していたポスドク(若手研究者を対象とした任期付きの研究職)に採用されNASAで働くことになりました(他にも採用可能という連絡をいただいていたのですが、やはり一番かっこいいNASAにしました。これもそれまでにみていたアメリカ映画やテレビに影響されていたのだと思います。メディアの影響って大きいですね)。

#NASAで募集しているポスドクはこちらのサイトからみれるので興味がある人はのぞいてみては?
新しいウィンドウが開きます https://www2.orau.gov/nasacatalog/

 NASAグレン研究所では数値流体力学と最新の設計工学を使ったロケットや航空機のエンジンの設計手法について研究しました。この期間はとてもたのしかったですね。基本的に、出勤は7時頃、帰宅は5時頃という生活を送っていて、夏はサマータイムを採っている事もあり夜8時を過ぎても明るいので、平日仕事が終わった後にピクニックに行ったり、近くの(フリーウェイで30分くらい)湖に釣りに行ったり、テニスをしたり、ゴルフをしたり… 仕事も、指導者に恵まれ(この業界では世界的に有名なMeng-Sing Liouさん)、余計な雑用もなく、研究にほぼ100%の時間を使うことができました。任期の3年半が満了するに伴い、日本での就職先を探していたところ、宇宙研で助手(今の助教)の募集があるという話を聞き、応募して採用されて、現在に至ります。
(ちなみに宇宙研の教育職の募集はここにでています
新しいウィンドウが開きます http://www.jaxa.jp/employ/educator_j.html

 宇宙研には2003年10月に採用されたのですが、就職して2ヶ月もたたない11月29日にH-IIAロケット6号機が打ち上げに失敗し、その原因究明のため数ヶ月徹夜が続くような日々が続きました。それまで大学やNASAでは将来技術に関する研究を行っていて現場とはある程度距離を置いていたのですが、宇宙研は現場と直結しているんだということを就職早々に体感させられました。
(それ以来H-IIAロケット打上げのたびに打ち上げが成功することを心から祈っています)

 ここからは、宇宙研で私が何をやっているかという話をしましょう。

 宇宙研では、宇宙輸送工学研究系に所属し、主にロケットなどの宇宙輸送系の空気力学や設計手法に関する研究を行っています。これまで、藤井孝藏教授とともに再使用型ロケットに関する研究、ロケットエンジンに関する研究、次期固体ロケット (新しいウィンドウが開きます http://www.jaxa.jp/projects/rockets/solid/index_j.html)に関する研究、火星飛行機に関する研究、その他の基礎研究などに関わってきました。
(詳細はこちらをごらんください。新しいウィンドウが開きます http://flab.eng.isas.jaxa.jp

 これらの研究に加えて、宇宙研で研究を行っている大学生・大学院生(http://www.isas.jaxa.jp/j/about/edu/index.shtml)の指導や研究室の所有するコンピュータや実験機器の保守・運用も行っています。東京大学の助教にもなっていて、東京大学大学院航空宇宙工学専攻の授業を教えたりもします。JAXAの情報・計算工学センターにも所属していて、ロケットエンジンの開発プロセスの情報化に関する作業にも携わっています。
(JAXAは人が足りないので一人で何役もこなさなければなりません… なんとかならないのかなー)。

 宇宙研は忙しいところですが、宇宙研にきてよかったことはいっぱいあります。一番大きいのは実際の宇宙科学・宇宙開発に携われることですね。これは大学で研究していては味わうことがなかなか難しいことです。
(今は現在計画中の人工衛星の設計に私の学んできた設計工学を生かせないかと模索中です)

 また、世界でも最高レベルの性能を持つスーパーコンピュータや大型の実験装置を使うことができるのも宇宙研ならではです。また(宇宙研に限らず大学の教育職全般にいえることですが)、国際学会で研究成果を発表したり、海外の研究機関と打ち合わせをするために、いろんな国に行けることも個人的にはとても楽しいことです。
(運がよければ宇宙飛行士のかたに会って話をする機会があったりもします)

 つらつらと私がどういう経緯でISASにきて、どんなことをしているのかについて書きましたが、ISASで働き・研究している人間は多少なりとも見えてきましたでしょうか? もちろん、宇宙研で働いている人たちが宇宙研にきた経緯は千差万別、していることも千差万別ですが、この記事が宇宙に興味がある若い人達のなにかの参考になればうれしく思います。

(大山 聖、おおやま・あきら)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※