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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第198号

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ISASメールマガジン   第198号       【 発行日− 08.07.01 】
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★こんにちは、山本です。

 ボーナスを充てにしてブルーレイレコーダーを買いました。何がいいかなと考えていたところ、本館の展示スペースで「かぐや」の映像が流されていました。担当のTさんに聞くと、ブルーレイに記録しているとのこと。早速お願いして1泊でディスクを借りてわが家で鑑賞しました。
(NHKから出版されている「NHK VIDEO月周回衛星「かぐや」が見た月と地球 地球の出そして地球の入」は4935円もするのですが……)

 さすがの迫力なのですが……
音のない世界が続きます。最初に流れるテロップを読まないと何だかよく解りません。やっぱり、お金を出してNHKビデオを買うことになりそうです。

 今週は、固体惑星科学研究系の岡田達明(おかだ・たつあき)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:「かぐや」で日中韓交流〜釜山の旅〜
☆02:ISASニュース6月号
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★01:「かぐや」で日中韓交流〜釜山の旅〜

 月周回衛星「かぐや(SELENE)」は昨年9月14日に打ち上げ成功し、現在は月のまわりを周回しながら観測を続けています。「かぐや」に搭載されたハイビジョンTVで撮影した「地球の出」「地球の入」、クレータや溶岩で満たされた「生の月面」はすでにお茶の間でもお馴染みになっているかと思います。

 「かぐや」は14の観測機器を搭載していて、科学探査を行うことが主目的の探査機です。その最新成果報告を行うために大挙して国内・外の学会に押し掛けて講演する機会が多く、特に「かぐや」が世界的月探査ブームの先鞭的ミッションであるため世界中の研究者からの注目が集まっています。

 6月16日からの1週間は、隣の国・韓国の釜山でアジア・オセアニア地域地球惑星科学会議(AOGS)が開催され、そこに参加中です(釜山で執筆中)。これは宇宙科学研究本部に関連の深い惑星や太陽系、磁気圏などのほか、地震・火山・気象・海洋から自然災害・温暖化なども含む地球惑星科学の総合学会です。大災害をもたらせた先の四川地震の関係の特別講演もありました。

 さて、筆者はここ数年続けてAOGSの「月」セッションの取りまとめを担当しています。今年は日本の「かぐや」に加えて、中国の「嬢娥(チャンア)1号」も打上に成功し、月を周回して順調に観測が行われていることが報告されました。昨年は(国家的判断により?)突然全員が講演キャンセルになった中国から参加した筆者の友人でもある平さんは、「かぐや」関連の発表に負けず劣らずの拍手喝采を浴びていました。惑星科学関連では中国本土からの研究者による発表は珍しく、まさに貴重な発表でした。

 そのほか、今年中に月探査機を打ち上げる予定のインド、米国からの講演、欧州の過去と将来の計画などについて発表があり、まさに月探査時代が到来し、研究者レベルで世界的共同・協調・競争が始まったことが実感されたセッションになりました。

 国家や国策はどうあれ、研究者どうしはお互いに打ちとけたもので、日中友好の印(?)に何故か韓国料理で夕食をともにしました。

 今回、釜山で得た大きな意義は、韓国の研究者との新たな交流の始まりです。これまでAOGSはシンガポールやバンコクで開催されましたが、「月」セッションはほぼ日欧米の研究者だけで占められており、あえて開催する必要性はないとすら思える状況でした。今年は韓国人研究者が聴衆として多数参加し、ポスターセッション後には本場の韓国料理で交流をはかりました。

 3月に米国ヒューストンで行われた将来月探査の会議で筆者が同席して知り合いになった文さん(英語表記はなんと”Moon”さん)から依頼されたのですが、「かぐや」研究者も総勢10名参加し、親交を深めることができました。韓国の参加者の一人はJPL留学中に「はやぶさ」のターゲット天体の小惑星イトカワを観測したそうで、この世界は狭いものです。
AOGSの「月」セッションが初めて日中韓交流の重要な機会を与えてくれた1週間となりました。

(岡田達明、おかだ・たつあき)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※