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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第181号

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ISASメールマガジン   第181号       【 発行日− 08.03.04 】
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★こんにちは、山本です。

 スギ花粉も飛んでいますが、中国大陸から黄砂も大量に飛んできています。景色が黄色く霞んだり、窓ガラスにも砂がついて外の景色がもやっています。洗濯物も家の中に干したほうが良いようです。

 16日に催される【やまがたサイエンスカフェ】の講師は上杉名誉教授です。何故、と考えましたが、上杉先生は米沢藩・藩主上杉家の第17代当主(平たく言えば【殿様】ですね)、縁の地へ出陣?されるわけですネ。

 今週は、品質保証室の清水幸夫(しみず・ゆきお)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:科学衛星・探査機たちの近況
☆02:太陽観測衛星「ひので」のX帯受信の状況について
☆03:やまがたサイエンスカフェ「太陽系探査の最前線」【山形市】
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★01:科学衛星・探査機たちの近況

 2月23日(土曜日)、種子島からH-IIA-14号機により「きずな」が打上げられました。私たちも相模原キャンパスの会議室で一般の方々とご一緒に中継画像を眺めながら打上げの無事を祈りました。今日(2月29日)現在「きずな」は4回に亘るアポジモーターの噴射と20ニュートンスラスタにより東経143度の静止軌道に投入されつつあります。監視領域への船舶の立ち入りなどで打上げ窓(打上げが出来る時間帯の事)設定のぎりぎり の打上げでしたが、見事打上げに成功しました。

 中継画像を見ていると固体補助ロケット(SSB)のノズル形状が微妙に違うような気がしたのですが気のせいでしょうか?
 今回の打上げはH-IIA2024型によります。今まで14回打上げられたH-IIAロケットの中でも半分がこの2024型です。2024型はH-IIAロケット本体(2段式)に固体ロケットブースター(SRB)2本とSSB4本が装備されたものです。SSB4本のうち2本ずつがペアになり、打上げ10秒後と1分16後にそれぞれのペアに点火されました。最初のペアはまだ高度も低く周り大気圧はほぼ海面下と同じですが、二番目のペアが点火される時点ではロケットの高度は既におよそ24kmに達しています。SRBとSSBの分離、衛星フェアリングの開頭・分離、第1段ロケットの切り離しが行われました。第2段エンジンを使っての分割噴射は液体ロケットエンジンの特徴その物です。必要なタイミングで必要な推力を計画通り発生できる高度な技術の結晶と言えるでしょう。中継画像では日本から遠く離れてしまい既に映像を見る事はできませんが、音声解説を聞いて想像逞しくロケットの進路を頭に中に描くのもロケット打上げ中継の楽しみの一つではないでしょうか?

 ところで、宇宙科学研究本部が運用している衛星や探査機は現在8機あります。打上げの古い順番から述べると、
1989年2月に打上げられた「あけぼの」、
1992年7月に打上げられた「GEOTAIL」、
2003年5月に打上げられた「はやぶさ」、
2005年7月に打上げられた「すざく」、
2005年8月に打上げられた「れいめい」、
2006年2月に打上げられた「あかり」、
2006年9月に打上げられた「ひので」
そして
2007年9月に打上げられた「かぐや」
の8機です。

 地球電離圏観測衛星「あけぼの」は19年間にわたり地球電離圏や磁気圏の観測データを送り続けており、来年はいよいよ成人式を迎えようとしています。
地球磁場探査機「GEOTAIL」も16年もの長きに亘って地球周りの磁場データを取り続けています。
小惑星探査機「はやぶさ」は昨年10月に計画通りイオンエンジンを一旦停止させ、2月末現在太陽からおよそ1.6天文単位の遠日点付近、地球からはおよそ2.2天文単位離れたところにあって、スピン安定姿勢をとりながらも太陽補足を行なっています。来年(2009年)早々にはイオンエンジン再起動により地球への帰還を目指します。現在は地球帰還が確実に行なえるよう軌道要素取得の運用が続いています。
X線天文衛星「すざく」は昨年暮れに宇宙線の高エネルギ粒子加速源の発見の発表を行ない、今年1月には白色矮星パルサーの発見や米国の天文衛星やドイツの複数地上望遠鏡と連携して超新星残がいの観測データから宇宙線の加速機構の解明を行なっています。
ロシアのドニエプル・ロケットで打上げられた小型科学衛星「れいめい」は、予定していた観測期間を超え、相模原キャンパスの研究棟屋上にある小さなアンテナで日々運用が続いています。70kgという小型衛星ながらオーロラ発光とプラズマ粒子の相関など沢山の観測データが得られています。
赤外線天文衛星「あかり」は搭載していた超流動ヘリウムを予定の観測期間まで冷却に使う事ができました。超流動ヘリウムを使った超極低温域での観測を終え、機械式冷凍機による観測フェーズに移行しました。現在、機械式冷凍機でおよそマイナス230度の極低温下で観測を続けています。
太陽観測衛星「ひので」は日々活発な太陽活動を私たちに伝えてくれています。皆さまもご存知のように発表された映像は驚くほど活発に活動する太陽の姿を伝えてくれています。国立天文台ひので科学プロジェクトのホームページにも詳しく記載されていますのでそちらも是非ご覧ください。先週発表があったように「ひので」の機器(X帯通信機)に不具合が見つかりましたが、運用を工夫しながら観測を続けています。
月周回衛星「かぐや」はハイビジョンカメラが捉えた美しい月の表情が良く知られていますが、その他にも沢山の機器で観測されたデータが既にホームページで公開されています。

 それぞれの衛星・探査機の成果は宇宙科学研究本部のホームページから得られますので、詳しくはそちらをご利用ください。また、3月21日には「すざく」と「はやぶさ」などがデザインされた記念切手が郵便局株式会社から売り出され、私たちも発売を楽しみにしています。

 先週はその他にも太陽系第9番惑星の存在がニュースになりました。一昨年冥王星の定義づけが話題になりましたが、海王星以遠により大きな惑星(新聞によれば地球規模の大きさ)が存在するかも知れないというロマンのあるニュースでした。セドナ・クワオア・エリス(またはゼナ)など第10番惑星に名乗りを上げた天体よりもかなり大きいと理論予測結果が示しているとの事です。

 来月4月には久々に宇宙飛行士の募集があります。皆さまも是非ご応募ください。

(清水幸夫、しみず・ゆきお)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※