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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第180号

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ISASメールマガジン   第180号       【 発行日− 08.02.26 】
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★こんにちは、山本です。

 週末、春一番が吹き荒れ、3月頃の気温にまで上昇しましたが、また寒気が戻ってきたようです。鼻がムズムズしてクシャミが出るのは、風邪を引い てしまったのでしょうか、それとも、去年はあまり気にならなかった【スギ花粉】のせいでしょうか?

 23日のH-IIA-14号機「きずな」打上げの際に、種子島からのライブ中継を一般見学者の方にも開放しました。強風のために1時間30分以上も打上げが延期される中、70名程(家族連れの職員も含めて)の一般見学者が相模原キャンパスで打上げ中継を見守りました。

 今週は、宇宙航行システム研究系の竹前俊昭(たけまえ・としあき)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:ロケットに火を点ける
☆02:SELENEプロジェクトチームが第53回前島賞を受賞
☆03:星の講演会「『かぐや』が見た月の世界」【葛飾郷土と天文の博物館】
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★01:ロケットに火を点ける
 JAXA宇宙科学研究本部ホームページのトップにも載っているので、読者のみなさんは既にご存知だと思いますが、高度150kmまでの三次元プラズマ密度分布の観測を目的とした観測ロケット「S-130-38号機」の打上げが、2月6日に成功裏に終了しました。観測したい現象が弱いなど打上げ条件が整わず、合計3回の延期で当初の予定より9日遅れとなりましたが、ロケットは日没直後の空に、美しい光の筋を描いて上昇して行きました。(実験の詳しい内容は、下記ホームページをご覧下さい。)

 私は打上げ現場では、「タイマ・点火管制班」で仕事をしています。ロケットはカウントダウンのゼロで点火され飛んで行きますが、大切なのはゼロ以降です。例えば今回のS-310-38号機では、+60秒にノーズコーン(ロケット先端の円錐状の部分:中には観測機や通信機などの機器が搭載されている)を開らき、+62.5秒には計測用のセンサを展開するなど、ロケット飛翔中のイベント項目が秒単位で決められています。この、○○秒に××をするという一連の流れ(これをタイムシーケンスと言います)を司るのがタイマです。(一般にはタイマーと伸ばしますが、ここでは通常我々が使用する伸ばさない表記のままとします。)

 タイムシーケンスの最初の項目は、勿論ロケット点火です。でもタイマは、ゼロから動作し始めるのではありません。観測ロケットの場合、タイマは30秒前に起動します。そして15秒前に正常に動いている事を確認し、最初の項目としてゼロ秒(打上げ時刻)でロケットに点火しているのです。

 この打上げ時刻の30秒前にタイマを起動するのは、実は人間が手動で行っています。点火管制盤のボタンを押しているのは・・・、そう私です。
秒読みのゼロで押す訳ではないので、発射ボタンと言えないかもしれませんが、この30秒前の押すタイミングがずれると、点火が打上げ予定時刻(秒)からずれてしまいますので、事実上の発射ボタンと言えると思います。最先端技術の塊として飛んで行くイメージの強いロケットですが、意外と人の手が行っている部分も残っているんですよ。

 でも今回の打上げ終了後、点火管制盤は新しい物に更新されます。このメルマガがみなさんのお手元に届く頃には、新しい点火管制盤の設置工事と機能確認の試験を行っていると思います。そして今後は、「標準時刻装置」と連動して、設定した時刻に自動的にタイマが起動する方式になります。私の起動ボタンを押すという仕事は、起動を確認する事に変わります。少し寂しい気もしますが、これも時代の流れでしょう。

 このS-310-38号機の打上げが、手動タイマ起動の最後になるという事で、30秒前のボタンを正確に押す様に心がけました。しかし結果は、0.2秒程遅かった様です(苦笑)。勿論このコンマ数秒の遅れが、打上げ実験に影響を与える事は全くありません。そして新しい点火管制盤になれば、この様なずれの心配は全く無くなります。個人的には若干の悔しさが残りますが、今までとても貴重な経験をさせてもらっていたのだなと改めて思っています。

(竹前俊昭、たけまえ・としあき)

詳しくは、【S-310-38号機、打上げ成功!】
http://www.isas.jaxa.jp/j/topics/topics/2008/0206.shtml

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※