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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第174号

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ISASメールマガジン   第174号       【 発行日− 08.01.15 】
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★こんにちは、山本です。

 今回は、ISASモバイル(携帯サイト)のご案内です。
現在、準備万端整って今日にも発信予定です。

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 今週は、宇宙プラズマ研究系の淺村和史(あさむら・かずし)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:プラズマ粒子の観測
☆02:「かぐや」レーザ高度計および月レーダサウンダーによる観測を実施
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★01:プラズマ粒子の観測

 地球周辺の宇宙空間には磁気圏と呼ばれる領域が広がっています。磁気圏は地球の持つ固有磁場が主成分となっている領域で、磁気圏外に出ると、太陽風磁場が卓越しています。磁気圏内では様々な現象が起こり、プラズマ粒子(電子・イオン)が加速、減速、または加熱されたりします。例えば、オーロラは高エネルギー粒子が地球に向かって降りこみ、大気粒子と衝突することで発光すると考えられています。この高エネルギー粒子は、太陽風中に通常存在する電子やイオンに比べエネルギーが10倍以上高く、磁気圏内での加速なしには説明できません。また、磁気圏内でも地球近く、内部磁気圏と呼ばれる領域には高エネルギー粒子に満ちた放射線帯が存在しています。
放射線帯粒子のエネルギーは数十MeVにも及び、太陽風中の水素イオンの典型的なエネルギー(1keV)に比べ10000倍程度も高くなっています。

 高エネルギー粒子が存在する領域は、地球磁気圏に限らず木星や土星の磁気圏にも存在しています。このため、将来の惑星磁気圏探査を含め人工衛星によって磁気圏探査を行う際、高エネルギー粒子の存在は簡単には避けて通れません。高エネルギー粒子の存在はより低エネルギーのプラズマ粒子観測にとって大きな影響を与えます。それは、高エネルギー粒子は観測器の壁を突き抜けて検出器に到達してしまうからです。この問題はやっかいです。
壁を厚くすれば高エネルギー粒子が突き抜ける確率は減ってゆきます。しかし、壁を厚くするということは衛星搭載品重量の大幅増を意味し、限られた重量の中で科学的意義を引き出そうとする上では好ましい方向ではありません。やはり、高エネルギー粒子によるノイズの存在は受け入れ、その中で測りたい対象である低エネルギープラズマ粒子を選り分けて観測できるようにすることが望まれます。

 その方法の一つに飛行時間計測法という手法があります。粒子の飛行時間計測を行うためには、まず炭素などでできた非常に薄い膜(膜厚0.000002mm程度)を用意し、観測器内に設置します。そして、観測器内に入ってきた粒子をあて、通過させます。この際、薄膜からは電子がたたき出されます。
たたき出された電子が検出されるタイミングと、通過した粒子が通過後に検出されるタイミングの時間差は、粒子が薄膜から検出器に到達するまでに要した時間の情報を持ちます。薄膜と検出器間の距離は分かっているので、時間差の情報から粒子の速度を割り出すことができます。しかし、壁を突き抜けてくる高エネルギー粒子の場合は、このようにして速度が割り出されてしまうことは稀です。そもそも薄膜を突き抜けて検出器に到達する確率が高くありません。横から入ってきて薄膜は通過しても検出器には近づきもしないとか、検出器には到達しても薄膜は通過してこなかったなどがよくあるパターンになります。また、高エネルギー粒子は速度が速いので、仮にまともに時間差が測られてしまったとしても、そこから割り出される速度は本来観測しようとしている粒子の速度よりも速く、ノイズとして認識できます。
ただし、ここで注意しないといけない点は、あるノイズと別のノイズの検出された時間差によって擬似的に飛行時間が計測されてしまう可能性がある点です。これは確率の問題で、ノイズ量が多いとどんどん不利になってゆきます。このため、飛行時間計測法を使ったとしてもノイズ量の抑制は重要なポイントです。

 私達は今、できるだけ観測器の壁を厚くしてノイズ量を減らし、それでも観測されてしまったノイズは飛行時間計測法でノイズとして認識し、必要な信号のみを選りだそうとしています。そして、今まで観測が難しいとされてきた地球の放射線帯領域、さらには木星や土星の磁気圏で性能をだせるようなプラズマ粒子観測器を開発してゆきます。

(淺村和史、あさむら・かずし)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※