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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第160号

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ISASメールマガジン   第160号       【 発行日− 07.10.09 】
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★こんにちは、山本です。

 先週の『宇宙プラズマ研究者の野望』を読んだ読者から「プラズマのことモット知りたい!」とメールを戴きました。たたいま鋭意人選中です。少々お待ちください。

 今週は、宇宙科学共通基礎研究系の北村良実(きたむら・よしみ)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:地球誕生の現場を見る
☆02:「すざく」の観測成果ネイチャー誌に掲載
☆03:「かぐや」月周回軌道へ!
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★01:地球誕生の現場を見る

 皆さん、こんにちは。(*⌒O⌒*)
 ISAS宇宙科学共通基礎研究系の北村良実と言います。私は電波望遠鏡や赤外線望遠鏡を使って、太陽系のような惑星がどのようにして誕生したのか、について研究しています。

 私の天文学者としての原点は、子供の頃に田舎で見たきれいな星空です。(●^_^●)
 夜空を見上げながら星座を探していると、よく、吸い込まれていくような感覚になり、広大な宇宙に比べ自分という存在がいかにちっぽけであるかを感じました。パロマー天文台の天体写真集を見ていても、遠くの銀河の星々の中に、太陽のような星があり、地球のような惑星がまわっていると想像した時は、わくわくした気持ちになりました。そのような経験から、自然に天文学者への道を歩んでいたように思います。

 天文学では遠くの暗い天体の細部を見ることが大切なので、大口径望遠鏡をできるだけ高地に設置します。私は長野県野辺山高原にある野辺山宇宙電波観測所の電波望遠鏡を利用しています。このような素晴らしい装置を使える環境にいることに本当に感謝しています。m(__)m ここ最近は、ISAS/JAXAが衛星として打ち上げた赤外線望遠鏡、「あかり」も使っています。スペース望遠鏡「あかり」の魅力とは、大気に邪魔されずに天体を観測することができ、非常にシャープな天体画像が得られることです。

 太陽系がどのようにして誕生したのか、という太陽系起源論は古くからあり、現在の理論の原型は18世紀にまでさかのぼることができます。すべての惑星は、太陽のまわりのほぼ同一面内を、同じ向きに、円に近い軌道で回っています。この特徴から、今から約46億年前に、現在の惑星の軌道をすべて含むような円盤(原始太陽系星雲)が原始太陽のまわりを回っていて、その中から八つの惑星が誕生した、と理論家は予想しました。しかし、どうやって証明すればよいのでしょうか?太陽系の過去を直接見ることはできません!ところが、電波望遠鏡によって太陽に似た星が誕生している現場を見ることができるようになり、理論が正しいかどうか確かめられるようになりました。\(^O^)/

 目で見える宇宙は無数の星から成っています。それに対して、76年前にスタートしたばかりの電波天文学は、星と星の間の空間に漂っている、ガスとチリの雲状の塊(分子雲)の電波写真を撮ることに成功しました。さらに、その中に生まれたばかりの若い星が分布しているという事実も明らかにしました。分子雲は星と違って非常に低温で主に電波を放射するため、電波望遠鏡によって詳しく観測できます。光では背景の星を隠す暗黒星雲としても見 えます。中でもオリオン座の馬頭暗黒星雲は有名です。星は、分子雲の中にある濃い塊が自分自身の重みを支えきれずに縮んだ結果、誕生します。若い星をさらに詳しく調べると、土星の環のように、円盤を必ず伴っていることが分かってきました。この円盤こそ、46億年前に太陽系を生み出した円盤と同じものであり、原始惑星系円盤と呼ばれています。(^-^)v 私の現在の研究テーマは、原始惑星系円盤を電波望遠鏡や赤外線望遠鏡を用いて詳しく調べ、惑星が生まれている現場をとらえ、太陽系起源論を検証することです。

 一方、1995年にペガサス座51番星のまわりに最初の太陽系外惑星が発見されてから、現在までに200を超える系外惑星が発見され続けています。太陽系と瓜二つのものはまだ見つかっていません。しかし今年に入って、地球よりもすこし大きくて海が存在するかもしれない岩石質の惑星が見つかり、第二の地球発見も時間の問題となってきています。(◎_◎)
 さらに、木星型惑星の大気に水蒸気が発見されました。ISASの「あかり」に続く赤外線スペース天文台「スピカ」では、系外惑星の大気の分析を目指します。このような多様な系外惑星は多様な円盤から生まれると考えられていますので、円盤を詳しく調べ、地球のような惑星が誕生する確率が分かれば、我々がなぜ存在するのか、についての一つの答えが得られるかもしれません。

 電波天文学は星の誕生の解明だけではなく、分子雲に多くの有機分子を発見しました。現在、アミノ酸の検出に向けて電波天文学者はしのぎを削っています。我々の太陽系でも、かつて大量の水が流れていた火星、氷の層の下に海を持つと推定されている木星の衛星エウロパ、窒素の厚い大気を持つ土星の衛星タイタンへ、地球外生命を見つけるために、いくつもの探査機が送り込まれています。さらに、皆さんのパソコンでも簡単にできる、宇宙人からの電波を探すSETI@HOMEという野心的な試みも行われています。(@o@)

 天文学によって、太陽のような星が誕生する際には、同時にその周囲で惑星も生まれることが分かってきました。現在、第二の地球が発見されそうな勢いです。また、宇宙空間には生命につながる有機分子が満ち満ちています。宇宙生物学という新たな学問もスタートしたばかりです。私が子供の頃にはSFでしかなかったことが、天文学のテーマとして研究される時代となっています。これからの10年は天文学から目が離せないと思います。私たちは今、本当に刺激的な時代に生きていると思います。

(北村良実、きたむら・よしみ)

「あかり」プロジェクトのページ
新しいウィンドウが開きます http://www.ir.isas.jaxa.jp/ASTRO-F/Outreach/

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※