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ISASメールマガジン 第148号
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ISASメールマガジン 第148号 【 発行日− 07.07.17 】
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★こんにちは、山本です。
台風4号が太平洋側に大きな被害を出して東の方へ去って行くと思っていた矢先、今度は新潟で大きな地震。読者の皆さんがお住まいの所は大丈夫だったでしょうか?
今週末の21日は、ISASの一般公開の日です。先週、担当者の打ち合わせがあり、準備も順調に進んでいます。去年は2万人近い来場者で展示会場も混雑しました。天候によっては暑さ対策をしっかり準備してお出かけください。
今週は、技術開発部の下瀬 滋(しもせ・しげる)さんです。
── INDEX──────────────────────────────
★01:ロケットの発射装置
☆02:「はやぶさ」イオンエンジン論文が米国航空宇宙学会最優秀論文賞受賞
☆03:観測開始から1年、「あかり」が見た宇宙
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★01:ロケットの発射装置
まもなく2007年度第一次観測ロケット実験が始まります。
今回の実験目的は高度300kmまでの中性・電離大気観測と気象・海洋現象の多波長撮影です。実験内容の詳細はともかくこの実験目的を達成させる為には高度300kmまで各種観測装置を運ぶ道具が必要になります。
それが観測ロケットS-520型ロケットです。このS-520型ロケットは1段式の固体燃料ロケットで、直径が520mm(だからS-520)、長さが約8m、重さが約2.1トンです。
私はロケット実験時にはロケットランチャ班員としてロケットの組立や、発射装置の運用を担当しています。
ロケットの発射装置にはランチャとランチャドームの2つがあります。それらをここで簡単にご紹介します。
まずランチャですがこれはロケットの飛んでいく方向を決めるとても重要な装置です。
このランチャは各ロケット毎に用意されており、今回のS-520型ロケットの打上げには520型ランチャを使用します。520型ランチャがどんな感じかと言うと「はしご車」もしくは「クレーン車」です。実際にはロケットを打ち上げる為に補強や改造などをしていますがパッと見た目は殆どクレーン車です。そのクレーン車で言うところのブーム(物を吊上げる時に動かす腕の様な部分)の上側にガイドレールが取付けてあります。S-520型ロケットはそのガイドレール上に設置(ただ上に置くだけですが)され、ガイドレールに沿ってロケットが飛んでいきます。
観測ロケットには姿勢制御装置が付いていない為、ロケットはランチャを飛び出すと後は風任せです。したがってランチャのセットする向きがロケットを予定の方向に飛ばす為に非常に重要になります。
もう一つのランチャドーム(正式名称:KSロケット天蓋開閉式発射保護装置)にも大切な役割があります。これは打上げ直前までロケットとランチャを雨や風から守る事です。見た目は鉄筋コンクリート製の打ちっぱなしの建物です。これにランチャが出入りする為の大扉とロケットの出口部分のフタ(それが天蓋)が装備されています。天候の悪い時は天蓋を閉めた状態のランチャドーム内でロケット打上げの準備作業を進め、打上げの5分前に天蓋を開けてロケットを発射します。見慣れるとそうでもないのですが、初めてこのドームを見た時、特にロケットとランチャがセットされた状態で天蓋が開いていくところはまるでサンダーバード(ちょっと古い?)の1シーンを見ている様な感じでした。
この文章を書いていて、自分が初めてロケットを搭載したランチャの打上げ角度を設定した時の事を思い出しました。自分がセットした向きを報告する為にランチャの角度計測を行いうのですが、通常1回でいいものを何度も何度も計り直し、それでも不安で別のタイミングでもう一度計測したりしました。でもまだ不安はとれず、打上げ直前まで作業ノートを見ながらやり忘れたことはないか、何か間違っていないかをずーっと考えていました。ロケットが無事打上げられ、予定通りに飛翔したことを確認できた時の喜びは一生忘れられません。
これからもこの気持ちを忘れずに仕事に取り組まなくてはと再認識させられる原稿になりました。
(下瀬 滋、しもせ・しげる)
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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※
ISASメールマガジン 第148号 【 発行日− 07.07.17 】
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★こんにちは、山本です。
台風4号が太平洋側に大きな被害を出して東の方へ去って行くと思っていた矢先、今度は新潟で大きな地震。読者の皆さんがお住まいの所は大丈夫だったでしょうか?
今週末の21日は、ISASの一般公開の日です。先週、担当者の打ち合わせがあり、準備も順調に進んでいます。去年は2万人近い来場者で展示会場も混雑しました。天候によっては暑さ対策をしっかり準備してお出かけください。
今週は、技術開発部の下瀬 滋(しもせ・しげる)さんです。
── INDEX──────────────────────────────
★01:ロケットの発射装置
☆02:「はやぶさ」イオンエンジン論文が米国航空宇宙学会最優秀論文賞受賞
☆03:観測開始から1年、「あかり」が見た宇宙
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★01:ロケットの発射装置
まもなく2007年度第一次観測ロケット実験が始まります。
今回の実験目的は高度300kmまでの中性・電離大気観測と気象・海洋現象の多波長撮影です。実験内容の詳細はともかくこの実験目的を達成させる為には高度300kmまで各種観測装置を運ぶ道具が必要になります。
それが観測ロケットS-520型ロケットです。このS-520型ロケットは1段式の固体燃料ロケットで、直径が520mm(だからS-520)、長さが約8m、重さが約2.1トンです。
私はロケット実験時にはロケットランチャ班員としてロケットの組立や、発射装置の運用を担当しています。
ロケットの発射装置にはランチャとランチャドームの2つがあります。それらをここで簡単にご紹介します。
まずランチャですがこれはロケットの飛んでいく方向を決めるとても重要な装置です。
このランチャは各ロケット毎に用意されており、今回のS-520型ロケットの打上げには520型ランチャを使用します。520型ランチャがどんな感じかと言うと「はしご車」もしくは「クレーン車」です。実際にはロケットを打ち上げる為に補強や改造などをしていますがパッと見た目は殆どクレーン車です。そのクレーン車で言うところのブーム(物を吊上げる時に動かす腕の様な部分)の上側にガイドレールが取付けてあります。S-520型ロケットはそのガイドレール上に設置(ただ上に置くだけですが)され、ガイドレールに沿ってロケットが飛んでいきます。
観測ロケットには姿勢制御装置が付いていない為、ロケットはランチャを飛び出すと後は風任せです。したがってランチャのセットする向きがロケットを予定の方向に飛ばす為に非常に重要になります。
もう一つのランチャドーム(正式名称:KSロケット天蓋開閉式発射保護装置)にも大切な役割があります。これは打上げ直前までロケットとランチャを雨や風から守る事です。見た目は鉄筋コンクリート製の打ちっぱなしの建物です。これにランチャが出入りする為の大扉とロケットの出口部分のフタ(それが天蓋)が装備されています。天候の悪い時は天蓋を閉めた状態のランチャドーム内でロケット打上げの準備作業を進め、打上げの5分前に天蓋を開けてロケットを発射します。見慣れるとそうでもないのですが、初めてこのドームを見た時、特にロケットとランチャがセットされた状態で天蓋が開いていくところはまるでサンダーバード(ちょっと古い?)の1シーンを見ている様な感じでした。
この文章を書いていて、自分が初めてロケットを搭載したランチャの打上げ角度を設定した時の事を思い出しました。自分がセットした向きを報告する為にランチャの角度計測を行いうのですが、通常1回でいいものを何度も何度も計り直し、それでも不安で別のタイミングでもう一度計測したりしました。でもまだ不安はとれず、打上げ直前まで作業ノートを見ながらやり忘れたことはないか、何か間違っていないかをずーっと考えていました。ロケットが無事打上げられ、予定通りに飛翔したことを確認できた時の喜びは一生忘れられません。
これからもこの気持ちを忘れずに仕事に取り組まなくてはと再認識させられる原稿になりました。
(下瀬 滋、しもせ・しげる)
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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※