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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第138号

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ISASメールマガジン   第138号       【 発行日− 07.05.08 】
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★こんにちは、山本です。

 ゴールデンウィークも終わり、久しぶりにISASに出勤してきました。正門からのメインストリートに面している林は、下生えが密生して鬱蒼とした森のように変わっていました。改めて自然の威力を感じました。

 11日(金)でセレーネの愛称募集が締め切りとなります。まだの人はお早めに。

 今週は、第6回「君が作る宇宙ミッション」世話人、赤外・サブミリ波天文学研究系の山村一誠(やまむら・いっせい)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:あなたも宇宙ミッションを考えてみませんか?
☆02:月周回衛星SELENE(セレーネ)の愛称募集5月11日締め切り!
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★01:あなたも宇宙ミッションを考えてみませんか?

 我々が研究を行っているとき、そこには正解というものはありません。自分自身で解答を見つけ、それが正しいことを自分自身で示さなければなりません。そもそも、問題自身も自分で見つけてくるものです。このような作業は、子供たちが普段学校で行っている、教科書にのっている「正解」を学ぶ、と言う行為と大きく違うことです。もちろん、学習は、新しい世界を切り開く基礎知識を養うという点でも、人間社会の中でのコミュニケーションを確立するという意味でも重要なことです。が、試験に追われて「正解を当てること」が目標の全てになってしまっては、新しい世界を切り開いていくことは出来ません。

 「君が作る宇宙ミッション」(通称「きみっしょん」)という、高校生を対象とした体験学習プログラムがあります。六年前、この企画を最初に提案したのは、委員会でも教職員でさえもなく、二人の若手研究員でした。当時(今でも)、宇宙に関する体験プログラムはほかにもいくつもありました。が、その多くはすでに用意された教材を用いて実習を行うことが中心でした。きれいな結果は出るのですが、それだけでは物足りない。二人は、全く別の方向を提案しました。「宇宙ミッションをゼロから創造させよう。たとえ立派な結果が出なくても良いから、徹底的に脳みそから汗を流させよう!」 この理念は、いまでも受け継がれています。昨年度から、宇宙教育センターのプログラムの一つとして位置づけられ、運営基盤も整備されてきましたが、「自分で必死に考えさせる」という「きみっしょん」精神は、今後も受け継がれていって欲しいと思います。

 「きみっしょん」のもう一つの特徴は、運営主体が宇宙研で学ぶ大学院生であることです。もちろん教職員、そして経理など事務スタッフがサポートしますが、運営方針の議論から各種業務の分担、当日の高校生の指導までのほとんどの作業が、大学院生の自主的な活動に基づいています。もちろん彼らも学生の身、自分自身の研究や授業など、忙しい生活の間を縫っての参加です。
「きみっしょんを言い訳にしない」精神でがんばっています。私の目から見ていても、彼らの団結力は相当のもので、「理学・工学が一体となってプロジェクトを進める」という宇宙研の伝統をまさに継いでいると言えます。普段、自分たちの研究分野に閉じこもりがちな若手が、このように分野を超えて仲良くなっていくのを見るのは楽しいものです。

 「きみっしょん」の本番は夏休み。全国から期待に胸をふくらませた高校生がやってきます。四泊五日のプログラムのうち、ほとんどの時間はミッション提案の議論に費やされます。それぞれが個別に思い描いていたやりたいミッションを班ごとにとりまとめ、そのミッションを実現するのに必要な技術・知識を洗い出し、検討を進めて行きます。指導役として付いている大学院生は、 教えるのではなく、高校生自身が考え、議論するようにし向けていきます。
毎晩の進捗報告会では、指導役からだけではなく、高校生自身の間でも鋭い質問が飛び交い、さらに深夜まで検討が進められていきます。高校生は、皆驚くほどの積極性を持って意見を交わし、調査し、考えていきます。自分が彼らくらいの歳だったときのことを考えると、とても信じられないような光景です。四日目の夕方に催される成果発表会では、宇宙研の先生方も多く聞いている前 で、堂々とミッションを発表します。

 五日間のプログラムを終え、宇宙研を去っていく高校生たちは、疲労困憊の中にも満足感でいっぱいに見えます。同時に、一週間付きっきりで相手をしていた大学院生のスタッフたちも、一回りたくましくなっているように見えます。そう、このプログラムは高校生の体験学習だけではなく、大学院生の実践教育の場でもあるのでしょう。

 今年の「君が作る宇宙ミッション」は、8月6日(月)〜10日(金)に開かれます。参加者の募集も始まりました。
詳しくは「きみっしょん」のWebページをご覧ください。

(山村一誠、やまむら・いっせい)

「きみっしょん」のHP
新しいウィンドウが開きます http://www.isas.jaxa.jp/kimission/

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※