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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第108号

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ISASメールマガジン   第108号       【 発行日− 06.10.03 】
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★こんにちは、山本です。

 今、スペインのバレンシアでIAF(国際宇宙航行連盟)総会が開かれています。M-V-7号機の打上げで内之浦に出張していた人たちの中にも、相模原で席を暖める暇も無く『東奔西走』している人がいます。Sさんもその一人です。眼鏡のツルが具合悪いのに直しに行く暇も無いって、嘆いていました。

 今週は、高エネルギー天文学研究系の高橋忠幸(たかはし・ただゆき)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:あなたも「すざく」の観測が出来る?
☆02:SOLAR-B/M-V-7打上げライブ中継アンケートにご協力を!
☆03:SOLAR-B/M-V-7打上げ中継を見逃した方へ
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★01:あなたも「すざく」の観測が出来る?

 9月19日から20日、九州は八幡で日本天文学会、それと重なるようにして20日から23日に奈良で日本物理学会の秋の年会が開かれました。天文学会でX線天文衛星「すざく」の結果を用いて50篇を超える発表が行われ、打上げから1年半がたっての「すざく」成果がどんどんと出てくるようになってきました。日本ばかりではなく、海外の会議でも、これまでに得られた成果の発表が行われ、6月に行われたアメリカの天文学会では「すざく」の特別セッションがひらかれました。12月には、「すざく」の成果を集めた特集号が日本天文学会の欧文誌「Publications of the Astronomical Society of Japan(PASJ)」から出版される予定です。

 すざく衛星の観測結果の一部が速報として日本天文学会が発行する月刊誌「天文月報」に掲載され、その内容を「すざく」のホームページからも読む事ができます。
新しいウィンドウが開きます http://www.astro.isas.jaxa.jp/suzaku/flash/)これら速報は、日本のX線天文学の若手の研究者が書いたものですが、中々思いがこめられていておもしろいです。12本の連載ですが、ここにそのタイトルと副題を書いておきますので、是非読んでみてください。

 1:銀河中心100光年の旅〜その車窓には「極高温に浮かぶ超高温と極低温ガス」の世界〜
 2:灰かぶりの惑星状星雲〜炭素合成の現場をとらえる〜
 3:超新星残骸から芽生える新しい息吹〜星の終着駅は, 次の星の始発駅〜
 4:30年来の謎「超軟X線背景放射」の起源に迫る〜「すざく」で撮る百花繚乱の銀河系高温ガス〜
 5:X線で硬い宇宙の穴〜「すざく」で探るブラックホール〜
 6:磁場三億テスラの世界〜「すざく」で迫る極限物理〜
 7:「すざく」の秘密兵器, 広帯域全天モニタ(WAM)〜ガンマ線バーストをとらえる〜
 8:ガンマ線バースト残光をとらえる〜「すざく」チームの長い一日〜
 9:超新星1987A〜元素工場から宇宙空間へ〜
10:スターバースト銀河から放出されるX線プラズマ〜灼熱の風を噴く宇宙の暴れん坊〜
11:銀河団ガスの重元素分布〜宇宙の酸素タンク〜
12(最終回):すざくが観測したSN1006〜定家の超新星、1000歳の姿〜

 X線は、大気で吸収されてしまうまでに地上の望遠鏡では観測することができません。光や電波など大気を通過してくるような波長、あるいは赤外線のように大気中の分子で吸収されないような波長を選ぶ事ができる「光」とは違って、宇宙に出なければ物事がはじまりません。そのためX線天文学はそれぞれの国が工夫をこらして打ち上げるX線天文衛星と共に発展してきました。日本はその中で特徴をもった衛星を1979年、X線天文学の初期の時代から打ち上げてきており、大きな役割を果たしています。

 日本で5番目のX線天文衛星となる「すざく」も、世界に公開された軌道上天文台です。そのため、世界中の誰でもが観測を提案することができます。その提案は大学院生であっても、あるいは高名な研究者であっても同等に、厳密に審査されます。したがって、大学院生の提案が採択され、大学の教授の提案が落とされてしまうような事も起こります。ですから良いアイデアがあれば、「すざく」の優れた装置を使い、自分の選んだ天体を観測することができるのです。もちろん、提案の審査には、採択された場合にちゃんと解析ができ、論文にまでできるかどうかの審査もあります。こうした開かれた 研究のスタイルが「すざく」を魅力的な学問の場としているともいえるのです。

 「すざく」の来年度の観測提案の募集締め切りは12月1日です。高いエネルギー分解能を持ったX線撮像検出器、600キロ電子ボルトというガンマ線までのエネルギーをカバーする硬X線検出器というユニークな装置のおかげで、今年度の観測提案の競争率は、日本枠、アメリカ枠、そしてヨーロッパ枠とそれぞれの地域で3倍から6倍にものぼりました。今回も、世界中 から沢山の応募があることを期待しています。

(高橋忠幸、たかはし・ただゆき)

「すざく」のページ
新しいウィンドウが開きます http://www.astro.isas.jaxa.jp/suzaku/

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※