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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第100号

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ISASメールマガジン   第100号       【 発行日− 06.08.08 】
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★こんにちは、山本です。

 俗に『梅雨明け10日』と言われていますが、そのとおりに毎日暑い日が続いています。なのに、今日2006年8月8日は、暦の上では『立秋』です。

 なんて書き出しで行こうと思ったら、台風がやって来ました。雨は急に強くなったり、殆ど降らなかったりと気まぐれな様相ですが、蒸し暑く湿度も高いので、部屋の中で除湿冷房中です。

 ISASでは、9月23日の「SOLAR-B」の打上げを前に、一般公開終了後から夏休みモードに突入しています。第2組立オペレーション(略して“ニクミ”)の関係者は、出張を前に短い夏休み中です。

 一般公開の後で、読者の方から感想メールを戴きました。その中に、自分のブログに様子を紹介している方がいました。そこに、私の居室について書かれているくだりがあって、
『……国家保安上の理由により場所は書けませんが、本館の噴水の下に秘密基地があって、出動(どこへ?)の際は水が流れている部分が2つに割れて、中から「ごごごぉっ」と。……』
モチロン冗談なのですが、以前メーカーの新人さんが引っ掛かったJOKEを思い出しました。彼が引っ掛かったのは、ISASが駒場から相模原に移 転してきたばかりの頃の話ですが、
『大地震が来たら、飛翔体環境試験棟全体が「ごごごぉっ」と地中に沈んで』
というもので、それから先の話は思い出せないのですが、何も無かった野っ原に突如出現した銀色の大きな建物は、何となく未来的というよりは、戦隊物のヒーローが住んでいそうな「胡散臭さ」が、あまりにもフィットして大受けでした。

 さて今週は、100号記念&夏休みバージョンでお送りします。的川広報委員長から【今朝】届いたばかりの『アツアツ』の原稿です。

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★01:宇宙教育とは旅路と見つけたり
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★01:宇宙教育とは旅路と見つけたり


 現在の私の職務は、JAXAの技術参与ということになっていますが、その肩書きだけでは何のことかお分かりにはならないでしょう。具体的な仕事としては、宇宙教育センターのセンター長、宇宙科学本部の対外協力室長にして広報委員長です。宇宙教育センターというのは、2005年5月に発足したJAXAのセンターで、JAXA広報とは異なり、子どもたちの教育に焦点を合わせた活動を展開しています。

 宇宙教育の眼目は「宇宙や宇宙活動の成果を素材として、いのちの大切さを基盤とし、日本の子どもたちが好奇心と冒険心と匠の心を豊かに備えた元気な子に成長するよう、手助けをする」ことにあります。宇宙科学研究本部は、研究と教育を仕事とする人たちの集まりですから、教育の雰囲気が満ちています。だから宇宙教育センターはその相模原キャンパスに作っていただきました。苦戦しながらも1年あまりを懸命に過ごして来ました。今日は、私自身の生活の一週間を覗いていただき、宇宙広報と宇宙教育の苦労の一端をご理解いただけたらと思います。

 7月29日に宇宙研の一般公開をやりました。実に1万9500人もの人々が殺到し、相模原の7ヘクタールの敷地は大変な賑わいを見せました。宇宙熱は素晴らしいものがあります。遠くは熊本からこの一般公開を見るためにいらっしゃった方も。このポテンシャルを全国の津々浦々で地道な日常の営みに活かす一層の努力が、宇宙教育センターには求められています。その原動力は、今回の一般公開を準備した宇宙研を中心とした若いJAXA職員のエネルギーです。

 8月3日に「きみがつくる宇宙ミッション(きみっしょん)」と称する高校生のトレーニング合宿の成果発表を聞き、今年も、参加した高校生へのインパクトがまことに大きかったことを確認しました(宇宙科学研究本部のホームページ参照)。この合宿では、Teaching Assistants(TA)としてボランティア参加した大学院生たちも、高校生に対する指導を必死で実践する間に、実に生き生きと成長して行きます。兄弟姉妹の少ない世代です。お兄さんやお姉さんのような先輩に微妙なヒントをもらいながら、グループに分かれてそれぞれの宇宙ミッションを企画していく姿は、まさに未来への予行演習ですね。しかもTAにとっても自分の弟や妹のような後輩のサポートをすることが、実に嬉しそうに見えます。

 もう一日予定を残している「きみっしょん」に後ろ髪を引かれながら、4日早朝発で札幌へ飛びました。札幌では子どもたちのためのイベント「こども未来博」に参加。宇宙飛行士の山崎直子さんとからんで1時間ほど宇宙の話をしました。彼女は幼稚園の頃から小学校の初めごろまで札幌の真駒内で育ったそうで、雪祭りのことをよく憶えているそうです。その頃に松本零士さんの「宇宙戦艦大和」や「銀河鉄道999」などに親しみ、宇宙への想いがつのったとのことです。

 山崎さんとの楽しいひと時を終えると、慌しく千歳空港へ。大好きな町札幌を眼下に恨めしく見つめながら、一泊もしないで羽田へ。羽田で60分あまり時間待ちをして、小松空港へ飛びました。そこから暮色漂う金沢市内へバスで移動。駅前のホテルに一泊。

 朝9時に迎えに来ていただいた金沢市の先生方2人とともに、能登の珠洲まで3時間のドライブ。ボーイスカウトの日本ジャンボリーです。そこで宇宙館の展示があり、皇太子が見えました。テレビでご覧になった方も多いでしょう。いや暑いの何のって、30数度の猛暑のもとで、真っ赤に日焼けしました。

 さすがにこの年になるとテントは苦しく、輪島までもどって一泊。深夜に見た輪島の闇の向こうには、東京で見る空とは全く異なる濃紺の美しい夜空が広がり、感動しました。半月を過ぎた辺りにもかかわらず、天の川も確認できたんですよ。

 翌朝ボーイスカウト日本連盟の幹部の方々とお会いし、スカウト活動と宇宙教育の緊密な連携についてお話しました。ボーイスカウトの方でも積極的な姿勢を見せておられるので、今後の展開が楽しみです。ライバルとして少年少女を取り合うのではなく、お互いに相乗的な前向きの効果を出そうと誓い合いました。

 昼ごろに金沢市役所の人が迎えに来てくれ、再び一路金沢にとって返しました。6月に金沢で開催したISTS(宇宙技術と科学の国際シンポジウム)の際にお世話になったお礼を言いに、金沢市庁を翌日訪ねるのです。ISTSの事務局長は、金沢から車で1時間ぐらいの山代温泉の宿をとってくれました。運のいいことに、その夜はちょうどこの地の名物である大田楽という祭りの夜に当たりました。野村万之丞さんが創作された舞が、美しい笛の音を浴びながらきらびやかに演じられ、さながら夢のような夜になりました。

 そして本日、金沢市庁で、助役の蓑さんと教育長の石原さんにお会いし、歓談しました。もっとも大部分は助役の闊達な独演でしたが……。楽しいひと時でした。そして小松空港から羽田に飛び、この原稿を打ち込んでいるのは、つくばに向かうバスの中です。今晩つくばの宿で、現在開催中のコズミックカレッジに講師として来てくださっている先生方と、今後の宇宙教育のあり方についてディスカッションします。

 明日は新幹線で広島県の福山へ。現場の先生方と宇宙と教育のつながりについて大いに語り合おうと考えています。明後日は自宅で寝られそうです。考えてみると、毎日泊まる場所が違うという旅になっています。旅芸人だって、同じ宿に2泊ぐらいはするんじゃないか……と思いながら、各地で走り出した宇宙教育の行方を、移動の飛行機・バス・車・列車の中でじっと見定めて、心を引き締めようとしています。「心よりも先に体を引き締めるのが先だよ」と一斉に言われそうですが……。

(的川泰宣、まとがわ・やすのり)

 きみっしょん については
新しいウィンドウが開きます http://www.isas.jaxa.jp/kimission/

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※